艦これ、復帰しました   作:something1945

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遅くなってしまいました。
クリスマスですが、クリスマス感のない話になってしまいました。
季節感のある話も、そのうち書いていきたいです。


艦娘、出撃します!

「各艦、整列!」

自分の声に、艦娘たちが一斉に並ぶ。

「各艦の戦果を期待する!」

と、ここまで形式的に、訓示通りにやったあと、

 

「…みんな、なるべく怪我しないでね」と心配を伝えてしまった。

 

 

 

こんにちは。

我が僻地タウイタウイ泊地ですが、ようやく6隻そろい、鎮守府近海に出撃に至りました。

 

先頭1番艦は、秘書官、電。

2番艦 菊月。

3番艦 白雪。

4番艦 長月。

5番艦 五十鈴。

6番艦 川内。

 

本当は軽巡のどちらかを先頭にした方が「水雷戦隊らしさ」が出るのだろうが、

ここはこだわりで自分の初期艦娘を先頭に据えさせていただきました。

 

「みんな、いってらっしゃーい!」

大声を張り上げて海にローラースケートのようにスーッと滑り出す彼らを見送る。

 

そもそも大声を上げる必要はない。

通達必要事項は「戦闘前」に通信することしかできないのだ、と大淀から教えられた。

 

つまり、ゲームと同じ。

 

艦隊の状況を知って、前進するか、撤退するか、指示を出す。

前進場合、会敵した敵の艦種が分かるのであれば、それに応じて編隊を指示。

 

見守ってるだけって、つらいもんだなあ。

 

「索敵開始します」

電から通信が入る。

 

「…索敵、失敗しました。敵の艦種は不明です。どうしましょうか?」

あ…。川内の初期の索敵機1だけじゃ、さすがに索敵成功しなかったかぁ…。

まだ開発、何も手を付けてないもんなあ。

 

やることは山積していることを痛感しながら、電に返答する。

 

「単縦陣で、ぶっとばしちゃえ!」

「了解しました!」

 

初戦だ。華々しくいこう。

 

艦娘たちがいるであろう海を見ながら、結果を待つ。

海を見ても、砲撃の火が見えたり、音が聞こえたりすることはない。

 

あんな小さな少女たちでも、あっという間に遠洋に出られるんだなあ…。

 

そんな感慨にふけっていると、「敵艦駆逐艦2艦、撃破しました!」と報告が。

「こちらの損害は?」

「白雪が…」

「白雪が!?」

「ち、中破、です」

 

中破か。ということは。

「大破ではないよね?進軍して沈んでしまうようなことはない、ってことで大丈夫だよね?」

不安げに問う自分の声に、

電が「はい、大丈夫です!」と元気よく答えた。

 

「…よし、進撃!」

「はいなのです!」

たしか、鎮守府近海は、1戦して、その後分岐が1つ。そしてボス艦隊か、ボスに準ずる艦隊に遭遇するか、だったはずだ。

 

初戦なのだから、負けても別に、また挑めばいいだけなのだけれど。

でも、できることなら、初戦でボスに勝利したい。カッコいいから。

 

「敵艦、発見しました!」

よし!今回は索敵が成功したようだ。

 

「単縦陣で、進撃!」

「よーい、てー!」

電の通信に割り込んで、川内の号令が割り込んだ。

その音量に耳をふさぐ…ことはない。

 

分かりやすく言うと、ガールズアンドパンツァーで使ってるアレです。

咽頭マイクってやつですね。

 

自室の妖精さん(自分には見えないけど)にお願いしたら持ってきてくれた。

ただ、電が「妖精さんが機嫌が悪いのです」と言っていたので、

早々にお礼が必要なのだろう。

つまり…家具コインというやつが。

 

それも遠征で手に入れられるようになるまで、もう少しだな…。

そもそも、まだ第二艦隊が解放されていない。

なんせ、1チーム、6人を組める分しか艦娘たちがいないのだから。遠征に行かせる余裕がないのだ。

 

しばらく海辺で電からの通信を待っていたが、応答がなかった。

仕方がないので自室に帰って少し休んだり、『母港』の資材を片付けたり。

 

艦娘たちが「全員」出撃しているので、ひとりっきりだ。

ひとりで、この、今は何もない、辺境の島に。

 

…なんだか考えが暗くなりそうなので、頭を振って無理やり思考を止める。

電たちが帰ってきたらお風呂に入れてあげられるように、浴室の掃除に励んだ。

 

 

 

結局、電たちからの通信はそれからも来ず、非常に心配な気持ちになっていたのだったが、

 

「ザザ…て…てい…提督!提督、応答願います」

夜になって、突然電からの通信が入ってきた。

 

 

片時も首から例の高性能スピーカーを外してはいなかったので、すぐに応答のスイッチを入れることができる。

「どうした、電。遅いじゃないか…。みんな、大丈夫なのか?」

「はい、あの、だい、大丈夫です。夜間砲撃の、許可を願います」

 

つまりそれは、昼間に敵を仕留めそこなったということ。

自分の知っている「艦これ」の世界では、昼間の攻撃で仕留めそこなった敵は、「夜戦」を選択することで、

超高威力(もしくはカスダメ)の攻撃を相手に与えることができる。

しかも、昼間に大破していても、夜間にさらに攻撃をくらっても、沈むことはない。安心して「夜戦」を選択することができた。

 

…しかし。

ここは、現実。

ゲームととても酷似した、それでも、今自分が生きている、現実。

 

電の頭をよしよしして、長月の髪を撫でて…川内にやーせーんーと騒がれる、そんな現実。

 

ここで「夜戦」を選択して、もし万が一、彼らが沈んでしまったら?

もう二度と、会えないとしたら?

 

「電…」

「はいなのです」

「敵は…あと何体だ?」

「ボスが1体、だいぶ弱っているようです。もう少しで、倒せます!」

電のその声は、自分には『どうか夜戦をさせてくれ』と聞こえた。

 

それで、大丈夫なんだろうか。

 

「電…必ず、帰ってくるよね?誰ひとり失わずに、帰ってくる、よね?」

電よりもずっと大人の自分の震える声に。

 

「大丈夫、なのです!」

はっきりと、電は答えてくれた。

 

だから、信じて任せてみようと、思った。

 

「よし。夜戦砲撃、開始!」

「了解しました!…命中させちゃいます!」

ちゅどーん!と、魚雷を発射したのであろう音が響いた。

 

「…やりました!電が、電が敵艦に命中させました!」

電の、勝利の声。周りから聞こえる、電を讃える歓声。

 

ああ、勝ったんだ。

 

遠く遠く、今は昏く何も見えない海の向こうでの戦いで。

 

「…ありがとう。帰りを待ってるね」

「はい!これより、艦隊、帰投します!」

 

自分はふーっと、ようやく、心から息を吐いたのだった。




次回、目のやりどころに目を困る提督編。
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