川神はそんな貴方をほっとけない!   作:天間@緑茶

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第11話

 マルギッテに辛勝し、その敗北者を今日一日動けない程度に拘束する。誰か人に見つけられても困るので、マルギッテの部屋に置き自身はクリスの元へと向かう。

 

 約束の時間には間に合う様に決着を着ける事ができたが、トンファーの直撃が体に響く。内蔵に損傷は感じない。しかし痛みが残って気分が萎える。

 

 最寄りの駅に向かいクリスと合流を図る。色々遊園地のチケットなど何か忘れ物はないかと確認する。

 

「しまった?」

 

 服装の確認を終え、財布に入れたチケットを確認すると現金が残り少ないのを知る。

 

 補充の為銀行に行かねばならなくなり、クリスに少し遅れる旨を伝える。マルギッテとの交戦を考えすぎ、クリスとの事を厳かしていた。デートの準備よりも戦闘の仕込みに手間暇をかけた。武器を倉庫から黙って持ち出すのは何よりも大変であったし、演習場での訓練に差し支えが無いよう武器を隠すのも神経を使った。これがなければ勝利など不可能であっただろう。

 

 銀行の手前に若い不良どもが居て、マナーの悪さに少し不快になるも素通りし銀行に入る。子供とは言え社会人。当然給料も出るし、実戦に出た報酬も上乗せされるので、ラインの懐具合は同年代に比べると桁が違う。

 

「150マルクもあれば足りるか?」

 

 お嬢様をエスコートするなら予算は多めに越したことはない。大きくない財布なので入れるのを手間取るが、これ以上大きくてもポケットからはみ出すしな?、と銀行を出ながらお金をしまう。

 

 財布を穴のポケットにしまうため片手に持ち視界から外すと誰かの手が重なる。

 

「おい!」

 

 怒鳴るのも束の間、重なった手のは財布を盗み出し盗人は逃げ出す。

 

「やられた?、あの野郎?」

 

 見返した先には先程の不良の中に居た人物。その時はラインを品定めする視線は感じなかった。盗みを生業にしていたラインならその視線を感じ取れない筈がない。

 なら何故盗まれたかと言うと男は突発的に盗みに走ったのだ。入口で子供が大金持って出てきたら鴨にしか見えない。不安要素など外見からでは想像できない。油断は誘えるが、舐められる子供な外見がこの時ばかりは裏目に出た。

 

「街やがれ?」

 

 大通りを抜け人を避けながら追跡する。

 

 段々と人の量が少なくなって来る。当たり前だ、逃走者が人の居ないところに誘導しているのだ。人前で子供に殴りかかれば事件になり、勇敢な市民に取り押さえられる。人が少なければ自分を止める者は誰もいない、そう考える盗人だがラインもそう考えていた。

 

「おれから盗んだ事、後悔させてやる!」

 

 プライドが刺激され、軍の、戦場での残虐さを知ってしまった。ラインの粛清の基準は一般とは大きくかけ離れ容赦がない。法律的に言えば過剰防衛だ。軍人の自分が人前で行えば罪に問われてしまう。

 

 路地に裏に入り、行き止まりで漸く盗人が止まる。

 

「へへ、追い詰められちまったな?」

 

 追い詰められた割に嬉しそうな盗人。ラインはなぐりて?、と顳かみをヒクつかせる。

 

「ごめんなさ?い、許して?」

 

 ダメだ、もう我慢できない、ラインは明からさまに拳を振り上げ殴りつける。

 

 挙動で殴るのが丸分かり。盗人はカウタンターでラインの顔を殴りつける。

 

「ぐはっ!」

 

 ラインはカウンターが伸びる前に速さで押し切る。

 

「な、なんで、ぐっ!?」

 

 尻餅をつく盗人に追い討ちを欠ける。相手の反骨心が折れるまで殴り続ける。

 

「ぎ、ごごごめんさい」

 

 腕や顔が腫れ上がる程痛めつけられた盗人は鼻と目がグズグズで鼻水と涙で汚い。幾ら腹を立てたラインでこれを殴るほどの加虐心は持ち合わせていない。

 

「財布!」

 

「は、はい!」

 

 握力の無い手で必死にズボンとポケットの圧力の中から財布を取り出そうとする。

 

「いいよ、そんな汚い手で触られたら嫌だし、自分で取るよ」

 

 鼻血で血塗れの手で触られたら財布にまで付着してしまう。

 

「す、すびまぜぇん」

 

 本気で申し訳なさそうにしていて、ラインまで自分が酷い事をしていたのでは?と勘違いする。事実その通りやりすぎなのだが。

 

「いいからケツ向けろ、ケツ」

 

 あ、はい、と頬が赤い盗人。赤らめている、血と腫れで。

 

「良かったな、おれが良い人で、警察には言わないから反省するんだぞ?」

 

「……」

 

「良かったね?」

 

「はい!」

 

 警察に居た方が安くすんだとラインに出会った事を後悔する。

 

 戻るので路地の隙間を近道する。その途中見知った顔を目にした。

 

「あれ? あれアルミン大尉じゃね?」

 

 近寄ると矢張りアルミン大尉だ。誰か見知らぬ男と一緒にいる。この辺は治安が悪い。治安維持の慈善活動かと憶測するが、ヒーロー活動する様な人でも無いと思う。取り敢えず出会ったのだ、挨拶だけでもしておく。

 

「お?い! 大尉?!!」

 

 顔をこちらに向ける。どうやら驚いているようだ。

 

「っち! ラインか!」

 

 知られたくない関係なのか苛立ちと焦りが見られる。

 

 迷わずラインに向け銃を乱射する。

 

「ど、?」

 

 慌てて壁に背に隠れる。

 

「行き成り何するんですか!」

 

 アルミンはその言葉に安心し済まないほんの冗談だと謝罪を口にする。

 

 ゆっくりと近づき連れの男性にも会釈をする。

 

「勘弁してくださいよ、俺だからいいものを……」

 

「何時難時でも油断はするなそう教えたろ?」

 

 軍人として戦士としての心得。

 

「マルギッテと言い体位と言い……洒落になんね?」

 

 それにしても何でこのような場所に、と疑問に持つがそれはアルミン悟られる。

 

「あれ?」

 

 連れの男性の顔を確認するとどこかで見覚えがある。

 

「この人どこかで……」

 

「あ、ああ。 それは俺が見せたんじゃないか? ほら前に彼女と出かけた写真見せただろ?」

 

「そうだっけ?」

 

 その様な記憶有る様な無い様な、所詮他人の思い出。ラインにとっては曖昧な物だ。

 

「なっんか名前知ってる気がするんだけどな?、ていうか、アルミン大尉はここで何を?」

 

「あ、それはだな……」

 

 お茶を濁すアルミン大尉にラインは最初声をかけた時を思い出す。

 

「まさか……密会?」

 

 その言葉に二人の目から感情が消える。ラインはこの顔付きから確信する。

 

「大尉……まさか……ホモだった何て……」

 

 そうここら一体は治安が悪い。性的にだ。隠れたやり場、密会場、ゲイバー。何人もの不良が被害に出た危険地帯でもある。

 

「あ、ああそうなんだ……」

 

 ラインと目を合わせず、嫌な空気が流れる。

 

「この事はみんなに秘密にしてあげます」

 

「そうしてくれ……」

 

 疲れきった表情で早くどっか行けと言う。

 

「じゃあ、おれ用が有るんで?」

 

 面白いネタを手に入れたと早速アルミン大尉の友人に連絡を入れる。

 

 路地を抜け駅に戻る。犯罪者を懲らしめたと言えば、クリスも剥くれはしない。ラインはクリスにも教えてやろうと歓喜する。

 

「まさか、本当に放置する積もりか?」

 

 ラインが去った後、連れの男が口にする。

 

「いや、あの坊主は休日は遅くまで帰らない。 その間に仕込めば関係ない」

 

「俺の顔も伝わっているのだな」

 

「幸いうろ覚えだったが、何かの拍子に気づかれては元も子もない。 ついてないな?」

 

「しくじるなよ……」

 

「当たり前だ」

 

 お互い運が悪かった。本当に運のない。

 

 

 

 駅に着くと暇そうにするクリスがいる。後1、2年成長すればナンパされているだろうが、今のクリスなら逆に安心できる。

 

「遅いぞ!」

 

 待ち合わせに二十分遅れたが、トラブル続きで手間取ってしまったのだ。そう怒らないで貰いたい。

 

「わるい、でも泥棒をやっつけたら時間くってさ」

 

「何? 怪我はないのか?」

 

「当たり前じゃん、おれ一応クリスお嬢様の護衛だぞ?」

 

 何を当然の事を聞き返すのかと返事する。

 

「ラインにじゃない、被害者のことだ」

 

 ラインが一般人相手に怪我をしないのは前提だろ、と悲しい信頼が寄せられる。

 

「被害者はおれだけど」

 

「それは……犯人も随分馬鹿だな」

 

 お気の毒、以前のクリスなら言わない意見に関心する。

 

「ま、そう言う輩は一旦痛い目みないとな?」

 

「私が入ればこんなに待たずにすんだのだが……」

 

 退治できないのを残念がる。

 

「クリスが戦ったらおれが怒られる……」

 

「大丈夫だ! きっと父様もマルさんも褒めてくれる」

 

 裏で危険な目に合わせるなと常々言われている。それは知らぬが華なのだろう。

 

「そろそろ行くか?」

 

「そうだな」

 

 何時もの様に遊びに出かける。片方の気持ちは変わらぬ侭、もう片方の気持ちだけがいつもと違う。

 

 テーマパークに行くのだ、何故察する事が出来ないと心中で考える。何度も遊んだことは有るが、今回の様な遠出は必ずマルギッテも同伴だ。二人だけで遊ぶことはあっても遠出はしたことがない。これだけの条件が揃えば何か違和感があっても可笑しくはないのだが。

 

「いっくぞ??」

 

 完全に何時もの延長線だ。

 

 

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