川神はそんな貴方をほっとけない!   作:天間@緑茶

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第4話

 評定平均A、それは試験から得られたラインの適正であった。筆記の試験ではなく適正試験なので平衡感覚、視力、感覚、気圧の変化、遠心力。様々な検査があり全てに問題がない。これには誰もが頭を抱えてしまった。適性がなければ資格なしと訓練すら受けられないものだが、これでは断ることもできない。実際を想定したシュミレータはGが掛かるが、適性検査の試験機はそれではなくゲームのようなものだ。マルギッテなどの武人を相手にしても生き残るラインにとって、1F間の入力すら当然の世界なのだ。操作は一時間もしないうちに慣れ、加えて反射神経と感を組み合わせれば撃墜などされるはずもない。機体に損傷すら見られない。

 

「おもしれ?」

 

 人を殺す機械だとしても浮かべる感想は単純だ。リアリティのあるゲームでしかない。

 

「洒落になんねーぞこれ」

 

 結果を見て驚きを隠せない空兵2人の反応に困るライン。

 

「五機相手に無傷で撃墜とかエース級だぞ」

 

「え?でもBOTだよ? 対人で二対一の方が強いから」

 

 飽く迄もゲームで例えるラインのすごさは、AIの強さの限界を考えても異常である。

 

「確かにBOTの限界はあるし、人間がやるコンビネーションに比べたら大したことないけど……」

 

「だよね!」

 

「だがゲームと違ってミサイルの誘導から逃げるなんて……」

 

「試しに誘導最高設定にしてみるか?」

 

 ふざけ半分で言う管理PCを動かしているマッチョ男にもう一人の若い空兵は難易度の酷さに大人気ないと思っていたが。

 

「まぁ、試しにやってみますか。いっちょ死んでこい坊主」

 

 その理不尽さは誰も一度体験するもので落なかった物は誰ひとりいない。

 

「いいよいいよ! BOTなら十体相手でも勝てるよ!」

 

「その余裕も今のうちだ! オラ、席付け!」

 

 ニヤニヤとにやけるマッチョ男になめんなよと意気込むラインは余裕の顔つきである。

 

「準備完了です」

 

「おっしゃ! 飛べ!」

 

 ドーム状のコックピットは楕円の形をしており、起動すると視界全体が空模様になる。呼吸を確保するマスクをしていなくヘルメットもつけていないので首回りは大変いい。下と真後ろ以外の全てを肉眼で視認することができる。重力は常に下方向なのに視界が回転するのは本機に乗る空兵からすれば違和感しかないが、ラインにとっては遣りやすいに尽きる。

 

「何だ? さっきよりちょっといい動きするだけじゃん!」

 

 一対一のドックファイト状態でありどちらが穴を取るかの勝負となる。余裕綽々で穴に回ろうとする。BOTも必死にロックから逃れようとする。最大速度は向こうの方が速いようで少しでも速度を落とせばロックから外れるぐらいの機体差がある。

 

「速っ! でも捉えた!」

 

 外れる前にミサイルを放つ。放たれたミサイルは前方の機体と同じ軌道をとり、着弾まで僅かの距離に接近する。

 しかし、BOTが下降した途端にありえないくらい速度が落ちる。ミサイルは標的と同じ軌道をっていたが、あまりの減速にそのまま通り過ぎてしまう。ラインの機体もまさか避けるとは思いもしなかったので、自身もBOTの上方から抜き去る。

 

「うそでしょ! スペック差ってそこまで無いはずなのに……」

 

 BOTのテクニックが着弾寸前まで引きつけて避けるものだとすると長距離ミサイルは通用しないに等しい。果たしてこの状態で何をするべきか考えるが、やはり近距離射撃で理想を言えばすれ違いざまを狙わねばならない。

 

「激ムズ! っと反撃は!」

 

 似たように対処すればいい、と自身も同じ事が可能であるが故に無傷で勝利をもたらしてきた。

 

 放たれたミサイルは4本、撃墜するには1本でも十分なので戦力過剰だ。しかし4本ともなるとギリギリで躱すことは叶わない。1秒もしない内に迫り来るミサイルを交わさなければならない。ラインは機体を傾け回転させながら迫るミサイルを回避する。

 

「よっしゃ!」

 

 完全に避け切ったと安心したラインは反撃のためBOTにロックを移そうとした。だがここでアラートが鳴る。

 

「むりむりむり?」

 

 避けたミサイルが弧を描いて旋回すると、標的を変えずそのまま突っ込んでくる。

 

「だっーーーー!」

 

 またも同じ方法で避けるが何度も向かってくる無限動力ミサイル。

 必死に避ける中、忘れかけてたBOT本機が再度ミサイルを放つ。

 

「っぁぁああ! くそ!」

 

 四方八方囲まれたライン機は撃墜を余儀なくっされる。

 ドン!どいう重低音と揺れながら赤く染まる画面にGAMEOVERを悟る。

 

「な! 絶対無理だろ?」

 

 からかい、茶化すマッチョな空兵に愚痴るしかできない。

 

「無理ゲーだよ、あんなの」

 

「だよなー、一回はよけれるけど二回目でボンッだもん俺は」

 

 と若い空兵は言う。

 

「今までで最高は2発撃破したマイル少佐ぐらいなもんさ」

 

「だれだよ! と言うか発って何だよ!」

 

「何って、そりゃミサイルだろ」

 

 誰もBOTを落としていない事実に興奮するライン。それはレコードを塗り替えるのだ趣味のラインにとって、一番になる不可能ではないと証明された事である。

 

「今日ずっとやってもいい?」

 

 前のめりで質問するラインに空兵たちは面倒くさそうな顔をする。

 

「ずっとてお前、後半日もやる気か!?」

 

「いらん玩具を与えちまったみたいだな?。 よしわかった! 管理機をいじらないなら使っていて構わんぞ」

 

 目を輝かせるライン。

 

「本当!? 絶対!? 嘘つかない!?」

 

「ああいいぞ。 さてそろそろ昼だ、飯食い行くぞ?」

 

「聞いてないみたいです」

 

 早速再挑戦するラインに空兵たちも呆れる。

 

「ガキか! いいから行くぞ」

 

「はい」

 

 独りシュミレータにこもり永遠と遊ぶ姿は家でゲームしかしない典型的な子供であった。

 

「………」

 

 無言になり集中し。

 

「だ?、むりだ?」

 

 独り言で気分転換する。

 二時間かけてもミサイル一本が限界であった。

 

「ミサイルが避ける……どこのGNビットだよ」

 

 責めて背部にマシンガンでもあれば打ち落とせるが、現代戦闘機にそんな物は求められていない。

 

 何時間もった頃。

 

「おーいまだヤってんのか???」

 

「今いいとこ?」

 

「そろそろ夕飯だ?戻ってこいよ?」

 

 返事は帰って来るので倒れてる訳ではないと確認した空兵は伝言だけ残すと自身の自由時間を満喫していく。

 

「よし……」

 

 更に一時間経つとマルギッテがやって来た。強制的にシュミレータのドアを開きラインを引きずり出す。

 

「夕食も食べて無いそうじゃないですか! ほら行きますよ」

 

「ぁあ??まだ殺れるのに??」

 

「いい加減にしなさい!」

 

 叱りつけるがてんで反省しない。

 

「いいじゃん、訓練だよ。く・ん・れ・ん!」

 

「あなたにっとてはゲームと同じです! それに私との訓練はこんなに長くやってい無いでないですか!」

 

「そうだけど……」

 

「いいから食堂に行きますよ」

 

 担がれながら渋々応じる。

 

「まだ倒してないのに……てか、あのマッチョと細いの誰だよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、居なくなったら連絡しろよまったく!」

 

 夜間、片付けに来たマッチョ男が愚痴をこぼしながらPCをシャットダウンすると。

 

「ん? 何で敵機が二体になってんだ?」

 

 設定が変更されている事に気づくとわなわなと席に着く。HDDに残るリプレイ動画の履歴を確認すると大量の履歴が残っている。一人でこれほど量があの時間で残るのは物理的にありえないが良く見ると動画時間が短いものがいくつもある。興味深いそれは無心にクリックを促せる。

 見ていくとマッチョの顔色が驚愕の色に染まる。

 

「嘘だろ……」

 

 一つ見終えるとほかの短いのも確認していく。そして最新の履歴に手を伸ばす。

 映像では2対1で片方撃墜した後、もう片方にロックを掛け放てば確実に撃墜できるところでニュートラル状態になったコックピットが残っていた。

 

「大変な事になるぞ……」

 

 上に報告せざる得ない成績に驚異を隠せないマッチョ空兵であった。

 

 

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