ロックマンエグゼ~もしもワイリーが原作前に改心したら~(お試し版) 作:カイナ
ピピピピピと電子音が小さな部屋に響く。ベッド脇に置かれている、青色を基調に腕や腹や頭の上と左右からが線を引くように白色になっている赤い
「むぅ……」
ベッドの中で誰かがもぞもぞと動く。ピンク色の掛布団の中から小さな手が伸び、目覚まし時計の上部を叩いてアラームを止めると、そのまま目覚まし時計を掴んで布団の中に引きずり込んだ。
「10時……」
女の子の声がベッドの中から漏れ、再び布団がもぞもぞと動いて、目覚まし時計が布団の中から伸ばした手によって元の場所に戻される。
「ふわぁ……」
チチチ、と鳥のさえずりを聞きながら、一人の少女が起き上がって欠伸を漏らす。ピンク色のシンプルながら可愛らしいパジャマを着た彼女は青色の瞳を宿す目を細めて擦りながらベットから降りてパジャマを脱ぎ下着を身に着けると、淡い黒色の長袖のシャツに袖を通して黒色のストッキングを履くとその色が好きなのかこれまたピンク色のノースリーブの上着に同色のミニスカートを着こなす。
そして部屋の隅に置いていた姿見に自分を映すと、ヘアゴムでさっと長く伸ばした金髪をポニーテールに結ってくるくると回転、格好におかしいところがないかを確認、満足いったのか「よし」と頷いた。
するとそれを待っていたかのように、彼女の部屋のドアがノックされる。
「起きているか?」
「あ、うん。どうぞ」
聞こえてくるのはどこか電子音声が混じったようにも聞こえる男性の声。その声に対して少女は返答、どうぞと入室の許可を出すと部屋のドアが開かれ、金色の髪を長く伸ばした男性が入ってくる。しかし彼の耳部分はヘッドホンか何かを思わせる白い円状の機械部品で覆われていた。
しかし彼女はそんな、普通の人間としてはおかしな状態を見慣れたように、ニコリと穏やかな笑みを彼に向ける。
「おはよう、ゼロ」
「ああ。おはよう……シエル」
金髪の男性──ゼロに声をかけると、彼も少女──シエルに朝の挨拶を返すのだった。
それからシエルはゼロを伴って食堂に向かう。そこには椅子に座って目の前のテーブルにコーヒーを置き、新聞を読みながらコーヒーを飲むという朝のお父さんみたいな姿を見せている男性の姿と流し台で洗い物をしている朝のお母さんみたいな姿を見せている女性の姿があった。
「おはよう。パパ、ママ」
「ああ、おはよう」
「おはよ、シエル。早くご飯食べちゃいなさい」
男性と女性──シエルの父と母に朝の挨拶、父親が新聞を読みながら、母親が洗い物をしながらも二人ともこちらに顔を向けて挨拶を返すとシエルは母親に促されると「はーい」と答えて席につき、テーブルの上に準備されている朝食を食べ始めた。
「ご苦労だったな。仕事の納期が重なったとはいえ、二日も徹夜させたのはすまなかった」
「ううん、私だって研究所の一員なんだから。こういう時は頑張らないと」
「だがお前はまだ14歳だ。健康な生活を営むのが当たり前だろう……まあ、ここまで仕事が重なって終わればしばらくは落ちつくだろうし、お前もゆっくり休みなさい」
父親がキラリと右目につけているモノクルを光らせながらそう答える。
「でもお爺ちゃんの研究のお手伝いもしたいし……」
何日も仕事詰めで無理させたから休みなさいという父親に対してシエルは休みと言われてるにも関わらず働こうとしており、父親は頭を抱え、母親も後ろで苦笑を漏らす。
[Dr.リーガル]
するとどこからか声が聞こえ、父親──リーガルは、テーブルに置いていた携帯端末──PETに目を向けるとそれを手に取った。
「どうした、レーザーマン」
[今日の予定である、シーサイドエリアの新型水質保全システムの導入についての会議への出発予定時刻が近づいていますのでご報告を]
「む。もうそんな時間だったか」
PETの中にいる、真っ黒なボディに青いラインが走るというシンプルかつミステリアスさを感じさせるデザインで両肩に同色のレーザー砲を装備したネットナビ──レーザーマンが報告。それを聞いたリーガルはコーヒーを飲んで席を立った。
「じゃあ行ってくるよ、ハニー」
「行ってらっしゃい、ダーリン」
リーガルとその妻はそう挨拶すると軽くキスをし、リーガルはキッチンを出て行く。結婚してもう長いのに未だにラブラブ夫婦だよ、恥ずかしいから
「ああそうだ、シエル。ご飯を食べてからでいいからちょっと来てくれってお義爺ちゃんが言っていたわ」
「うん、分かった」
母親から言われ、頷いたシエルは朝食を食べ終えるとキッチンを後にし、玄関から家を出て裏手に回り、そこにある建物に入る。そこにはこのような看板が掲げられていた。
──ワイリーロボット研究所
「シエルお嬢様、おはようございます!」
「昨日はお疲れ様でした!」
「用事で早めに帰っちゃってすみません!」
「皆さん、おはようございます。私のことは気にしないで作業を続けてください」
所内で仕事中の作業員たちもシエルを見ると作業の手を止めて挨拶を始めるが、シエルが苦笑して注意すると作業に戻る。
「あ、おはようございます。シエル先輩」
「おはようございます」
作業道具を入れてるのだろう工具箱を運んでいる、皆と同じ作業服姿に「自分のトレードマークです」と主張して、作業服以外の服装は余程突飛だったり仕事の邪魔にならない限りは自由な感じでやってるから許している水色と紺色の縞々帽子を被って赤紫色のグラサンをかけた青年が挨拶してきたのでシエルも挨拶。
「お爺ちゃんに呼ばれたんだけど……」
「所長なら奥の部屋にいると思います」
「うん、ありがとう。
「いえ」
上文とシエルに呼ばれた青年はシエルにお礼を言われるとぺこりと一礼して去っていき、シエルは上文青年に教えられた部屋に入っていった。
「お爺ちゃん、来たよ」
「おお、シエル。ちょっと待ってくれ」
入った部屋には様々な機材を所狭しと並べられており、その中心では禿げ上がった頭に残った髪も白髪になり、昔は黒髭をたくわえていたという髭も色素が抜けて真っ白になっている老人の男性がパソコンを見ながらキーボードを叩いて機械の操作を行っている。
シエルの呼びかけにお爺ちゃんと呼ばれた老人はそう答えて機械の操作を続ける。やがてプシュウと空気の抜ける音が聞こえて近くにあった大きな箱のドアが開くと、その中からゼロが姿を現した。
「定期データ収集完了。バックアップデータの保存もヨシ、と」
「ありがとうございます。Dr.ワイリー」
「お礼を言いたいのは儂の方だ。お前は儂の夢の結晶、その始まりの大きな第一歩だからな」
ゼロがお礼を言うと老人――ワイリーもお礼を返し、微笑を向ける。
「レプリロイド・ゼロ」
レプリロイド。ある異世界では「高度なAIを搭載したロボットの総称」と呼ばれるもの。
ワイリーはその名を「ネットナビを頭脳として利用する事で、より自然な動作や感情表現を可能にした新たなロボット」として使っている。むしろその概念は例えるなら「ネットナビにロボットという形で現実に身体を与えている」という方が近かった。
「さて、シエル。お前は今日は何か予定はあったかな?」
「今日は予定もないし、お爺ちゃんのレプリロイドの研究を手伝おうかなって」
「ははは。お爺ちゃん思いの孫娘が出来て儂は嬉しいよ……だがそれよりも頼みたいことがある」
ワイリーはそう言うとテーブルの上から何かのデータを入れている様子のUSBを取り出した。
「これを科学省にいる祐一朗君に渡してもらいたい」
「……わざわざ私に頼むの?」
ワイリーの頼みにシエルがきょとんとした顔を見せる。別に面倒とかではないがデータくらいならネットナビがネットワークを通じて簡単に運べるし、そっちの方が確実に速い。そもそも才葉シティから科学省となるとメトロラインを使っても結構時間がかかる距離だ。
「あー、いや、これは重要なデータだからな。もしウイルスに襲われたりして奪われるとまずい……もちろんいつものようにゼロを護衛につけるから、頼まれてくれんか? 今から科学省に行くとなると帰りが遅くなるかもしれんから、その日は祐一朗君の家に泊めてもらえるよう話は通してある」
「ん~。うん、分かった」
妙に引っかかるがまあいいやと置いてシエルは祖父のお願いを了解。そのデータが入ったUSBを受け取ると自分用のピンク色にペイントされたPETを取り出してUSBを接続した。
「アイリス、念のためにデータの
[う、うん……]
PETの中にいるのはリーガルのナビ、レーザーマンと比べると人間にとても近い、淡い茶色の髪を長く伸ばして蝶の形をした髪飾りをつけ、緑色の瞳をした美少女型ナビ。
気のせいか笑いを堪えているように頬をひくつかせているが、彼女はそれを隠すようにシエルに背を向けてUSBから転送されるデータの保存をスタート。
妙な行動に不思議そうに目を細めるシエルだがそこまで気にする事でもないかと判断するとゼロを見た。
「じゃあゼロ、さっさと行っちゃおうか」
「ああ」
シエルは遅くなる前に科学省に向かおうと、ゼロを連れて「行ってきまーす」とワイリーに挨拶して研究室を出て行って研究所も出て行く。
「ふ、くくく……ハーッハッハッハッハッハ!」
シエルが出て行ったのを監視カメラで確認した後、我慢できなくなったかのようにワイリーの大笑いが研究室に響くのだった。
そして家に戻ったシエルは少なくとも一泊は祖父の友人の息子さんだという光祐一朗の家に泊まる事になるため着替えを用意したり、あっちの方で暇になった時のためにノートパソコンなどの趣味に使う道具を準備、旅行用のキャリーバッグに着替えなどの小物を、大きなショルダーバッグに趣味道具を詰めていく。
[ねえ……ねえってば]
するとシエルの部屋のパソコンから彼女を呼ぶ声が聞こえ始める。
[秋原町に行くんでしょう、シエル?]
「……科学省だよ?」
[その後、秋原町に、あいつがいる場所に行くんでしょう?]
「……そうだよ」
パソコンからの声に誤魔化そうとするも誤魔化しきれずに肯定。その途端[私も連れていきなさい!]というけたたましいコールがパソコンから始まった。
「でも光君達に迷惑が……」
[そのくらい当たり前でしょう? 彼らが私をおかしくしたんだから……まあ、あなたがそこまで嫌だって言うんなら構わないけれど……]
シエルの言葉にパソコンからそんな諦めたような声が出てくる。
[そんな事があったら私、退屈のあまりにこのパソコンから繋がるインターネットを海に沈めるか私のスケートリンクにしてしまいそう]
「もー分かったわよ……アイリス、私が見れないとこでも手綱握っておいてね?」
[う、うん、分かった……]
パソコン内からの要求に根負けしたシエルは項垂れながら同行を許可し、自身のネットナビであるアイリスにもそれの手綱を握る事をお願いしながら、パソコンに専用の紫色にペイントしたPETを接続する。
パソコンからPETへの転送準備が完了し、さっきまでシエルに自分も連れていけと要求してきたネットナビ──紫色の髪を長く伸ばし、何故かペンギンを思わせるパーカーを着用している少女型だ──は不敵な笑みを見せた。
[ふふ、ふふふふふ……ロックマン、今度こそあいつをオールドレインしてみせるわ……]
「はいはい。それはさせないからね……」
[あはは……]
不敵な笑みを浮かべてぺろりと舌なめずりをする少女型ネットナビに思わず呆れ顔で返すシエルと苦笑を漏らすアイリス。一応後でセキュリティチェックしとかなきゃと思いながら、シエルは彼女がパソコンからPETに転送されていくのを確認。転送終了を確認するとPETを着替えなどの必須の荷物を入れるキャリーバッグに放り込んで他の荷物も確認。
「準備は出来たか? 行くぞ」
「はーい」
それを見計らったように、ノートパソコンや携帯用開発環境などの仕事&趣味道具(当然全てシエルのものだ)を入れたショルダーバッグを軽々と担いだゼロが声をかけ、シエルは旅行用バッグをころころと引いて彼に駆け寄る。
そしてシエルは家に残っていた母親に「行ってきます」と声をかけ、まずは科学省行きのメトロラインの駅に行くためにリニアバス乗り場へと向かうのだった。
というわけで本作の真の主人公、シエルちゃん登場です!(なお思いついているネタの量的に考えて次回で最終回です)
なおプロローグの後書きで言った通り、自分はロックマンシリーズはエグゼしか知りません!(つまりロクゼロについては知識ゼロ。強いて言うならコロコロで連載されてた漫画くらい)
一応頑張って調べてはいますけど流石にロックマンゼロシリーズ全部やれは難しいのでお許しいただければ……。
そして「ネットナビを頭脳として利用することで、より人間に近い感情表現や自然な動作が可能になったロボット」という設定でのレプリロイドとしてロックマンゼロも登場。なおプロローグの以下略。
トランスミッションのゼロとどっちを使うか最後まで迷いましたが、主人公としてシエルを採用する以上その相棒枠となるのもやっぱりロックマンゼロの方がいいと判断し、ロックマンゼロを採用しました。まあレプリロイドとは言ってますが、現実世界での彼の印象はアーマー外したような感じ&耳に機械つけてる辺りは仮面ライダーゼロワンのヒューマギアがモデルになってそうですけど……。
さらにロックマンエグゼ6のヒロインと言ってもいい彼女、アイリスもシエルのネットナビとして登場したりちょっとした特別ゲストも用意しながら、次回(予定としては)このお試し版の最終話(ネタが思いついてるのここまでともいう)に引かせていただきます。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。