ロックマンエグゼ~もしもワイリーが原作前に改心したら~(お試し版) 作:カイナ
「…………え?」
少年──光熱斗は呆けた声を出して固まっていた。
彼は学校が終わった頃に急に天気予報になかった大雨に降られ、傘もないし止むのも待ってられないと大急ぎで家まで帰ったもののびしょ濡れになってしまい、風邪を引くからシャワーでも浴びて身体を温めた方がいいという己のネットナビ──ロックマンからの忠告に流石に従って、家に帰って早々「ただいまーママ、凄い雨降って濡れたからちょっとシャワー浴びるねー!」と母親に呼び掛けるのもそこそこに返答も聞かず自室に飛び込んで、まずはいつものようにPETを自分のパソコンに接続してロックマンを自分のパソコンにプラグイン。
そのままタンスを開けて適当に着替えを取ると部屋を飛び出してお風呂に向かう。脱衣所で「さむさむ」と言いながら服を脱いで洗濯機に放り込む。ガラス戸が少し曇っており、「ママ、雨降ってるのを見てお風呂入れてくれたのかな」とか思いながら彼は浴室に繋がるガラス戸を開けた。
そこで今に至る。
「…………え?」
少女がいた。金色の髪を長く伸ばした、自分より少々年上の少女。ここは風呂場のため当然裸になっており、今はシャワーを浴びているため色白な肌を惜しげもなく晒し、その瑞々しい肌をシャワーから流れる水滴が流れていく。
彼女は碧眼をぱちくりとさせながら熱斗を見ていた。
「……ひ、光君……?」
「シ……シエルさん……?」
少女が呟き、少年──熱斗も呟くように彼女──シエルの名を呼ぶ。と、そこでシエルは我に返ったようにはっとした表情になり、同時に彼女の顔がカーッと赤くなっていく。
「きゃああああぁぁぁぁぁっ!!!」
シエルは絹を裂くような悲鳴を上げながら咄嗟にというように左腕でなだらかな胸を隠し、股に右手をやるとすぐにお湯で満たされた浴槽に飛び込んで身を隠す。その悲鳴を聞いてやっと熱斗も我に返った。
「シ、シエルさん、なんでここに!? ってかごめんなさ──」
熱斗が謝罪の言葉を出そうとするも、シエルはそれよりも早く右手を自由にするとその手で近くにあった洗面器を拾い上げ、涙目で熱斗を睨みつけながら思い切り振りかぶった。
「出てってー!!!」
「ご、ごめんなさーい!!」
熱斗目掛けて洗面器を投げつけた後、とにかく近くに落ちてるものを手当たり次第に投げまくるシエルに、熱斗は謝罪の言葉を出しながらお風呂場を出て行くしか出来なかった。
「ぜぇ、ぜぇ……」
まるで這うようにお風呂場を出て行ってドアを閉めた熱斗は「一体どうなってんだ」とぼやきながら閉めたドアに背を預ける。
「あら熱斗、どうしたのそんな格好で?」
「ママ! それにゼロも! シエルさんがいるんだけどどうなってんの!?」
「……あら? 今日からシエルちゃんが一週間くらい家に泊まるって言ってなかったっけ?」
熱斗の叫ぶような質問に熱斗のママが首を傾げながら頬に手を当てる。熱斗も「え?」と声を漏らした。
「……光熱斗、もしかしてお前、シエルの入浴を覗いたのか?」
「違う! あ、いやある意味じゃ違わないかもだけど、事故だ! 不可抗力だ!」
ゼロのジト目に熱斗は慌てて首を横に振って否定する。
こうなった事には熱斗だけではなくシエルの方にまで視点を向けなければならないだろう。
シエルが科学省からメトロラインに乗って秋原町までやってきた頃にまで時間を巻き戻す。
「うわー、雨が降ってる……」
「天気予報では雨の予報はなかったはずなんだが……通り雨か?」
駅から出てきたシエルは外が大雨なのに気づいてぼやき、ゼロもそう呟く。
「才葉シティだとウェザーくんのおかげで天気予報が外れるなんてなかったものね。油断した……」
「どうする? 止むまで待つか?」
「いつ止むか分からないもの……光君の家もそんなに駅から遠いってわけじゃないし、走ろう」
「了解」
シエルの言葉にゼロは頷いて彼女の荷物を自分の身体で守るように抱え直すと、二人は一気に駅を飛び出して光家に向けて全力疾走。光家まで辿り着くとすぐにインターホンを鳴らした。
「あら、いらっしゃいシエルちゃん。ゼロくん、待ってたわ」
「ご、ご無沙汰してます。光さん」
「あらあら濡れちゃって。お風呂を沸かしてるから入って、ゼロくんも身体を拭くくらいはした方がいいでしょ?」
「「ありがとうございます」」
うふふと笑う女性──熱斗の母であり祐一朗の妻、光はる香の言葉にシエルとゼロはお礼を言い、シエルはとりあえず熱斗の部屋に向かって荷物を置いたりなんなりしてからお風呂場に向かい、ゼロも身体中がずぶ濡れになったため用意されたタオルで身体を拭き始める。そこにはる香が声をかけてきた。
「ねえ、ゼロくん。ちょっとお買い物に付き合ってもらいたいんだけど……」
「買い物ですか?」
「ええ。ちょっと買い忘れたものがあったんだけど、この雨の中一人で買い物に行くのも億劫だったから……傘さえ持ってくれればいいから、お願いできる?」
「分かりました」
はる香はうっかり買い忘れを買いに行くのに傘を持ってもらうためにゼロに同行をお願い。ゼロもそれを静かに了承すると、どうせすぐに戻ってくるし大丈夫だろうと特にシエルには何も言わずに二人揃って家を出て行った。
そして二人が出て行ったタイミングで熱斗が戻って来て、今に至るわけである。
「なんだそのタイミングの悪さ……ふぇっくし!」
「あらあら熱斗、風邪ひいちゃうわよ」
這う這うでお風呂場を飛び出したため実は裸の熱斗がうなだれつつくしゃみを漏らすとはる香が熱斗を心配。「ちょっとどきなさい」と熱斗をドアの前からどかせると「シエルちゃん、ちょっと入るわねー」と一声かけて脱衣場に入り、そこに置いていた熱斗の着替えを持って出てくる。
そして熱斗も着替え終えてからゼロを見た。
「で、一週間シエルさんとゼロが家にいるってこと?」
「ああ。しばらく世話になる」
「ま、事情は知らないけど。メイルちゃん達も喜ぶし、ロックマンもアイリス達に会えるなら……」
熱斗は急にシエルとゼロが泊まるようになった事情をよく知らないのかそう答えた後、ハッとした顔になる。
「ゼ、ゼロ! お前と一緒に来たのってシエルさんだけか!?」
「いや。俺とシエルとアイリス、あと──」
熱斗の血相を変えた確認にゼロが答えようとした、その時だった。
[うわああああぁぁぁぁぁっ!!!]
「ロックマン!!」
部屋からロックマンの悲鳴が聞こえてきた熱斗は血相を変えたまま走り出す。ゼロはそれを無言で見送った後、キッチンにいるはる香の「ゼロくん、ちょっと手伝ってくれるー?」という呼び声に「はい」と答えてそっちの方に歩いていった。
場所は変わってネットナビ達の世界と言える電脳世界。その熱斗のHPという場所で、青い身体をした人型ナビ──ロックマンは苦しそうな表情で目の前の敵を見据えていた。
「ほらほらどうしたのよロックマン。この程度で終わる程、あなたは柔じゃないでしょう?」
まるで嘲笑うような言葉と共に飛んでくる二つの水球をジャンプして回避。しかし着地した先の地面は凍っており、ロックマンは氷で滑ってバランスを崩してしまった。
「ノッてきた!」
「くっ!?」
そこにまるで氷の上を滑るように敵が接近、すれ違いざまに切り裂くような蹴りを見舞って攻撃してくるのをロックマンはどうにか腕をクロスして防ぐものの、足元が凍っていては踏ん張りが効かずに蹴り倒されるのは避けられない。
「いい波ね、昂るわ!」
先ほど蹴りを叩き込んできた敵が叫ぶと共に、氷の足場から波が発生。その波に乗るように敵は倒れて動けないロックマン目掛けて襲い掛かった。
──バトルチップ、バリア! スロットイン!
そこに聞こえてくる声。同時にロックマンの前に不可視の
──ロックマン! 大丈夫か!?
「熱斗君! ありがとう!」
電脳空間に投影されたウインドウに映る、彼の
紫色のロングヘアを揺らし、その身に纏うのは胸から上を大胆に露出して胸から下も身体のラインが出るような、大胆なハイレグの水着に胸元には白色のフリルをあしらったもの。両腕もフリルをあしらった白色の袖でまるで袋のように包み、両足は義足なのだろうか、しかしそれによってこの凍った床を自由自在に動き回る様は不思議な形状のスケート靴のようだった。
──やっぱり、お前もいたのか!
「あら、忘れたの?
──知った事か! ロックマン、プラグアウトだ!
「ダメだ、熱斗君! あれを見て!」
その敵──ラムダリリスの挑発的な笑みでの言葉を熱斗は一蹴。ロックマンにラムダリリスの相手をやめてプラグアウトを指示するが、ロックマンはそれを拒否してラムダリリスの後ろを指差した。
その指差す先には巨大な水球が出来ている。いや、それだけではない。
──アイリス!?
水球の中にはシエルのネットナビ、アイリスがまるで水の中に囚われているように閉じ込められていた。
口をパクパクさせているが水の先まで声が届かないのか何も聞こえず、水の壁を叩く右手の甲に刻まれた赤い文様が光を放っている。
──くそ、ラムダリリス、お前!?
「そうよ、彼女は人質。光熱斗、シエルやゼロを呼びに行こうとしても無駄よ。そんな素振りを見せた瞬間──アイリスを
熱斗の怒号に対してクスクスと冷笑するラムダリリスが腕を振るうと、アイリスが閉じ込められている水球の周りを数匹のペンギンが遊泳する。
ただのペンギンの侮るなかれ、そんじょそこらのウイルスなら一蹴可能な、ラムダリリス特製の攻性プログラムだ。戦闘用のカスタマイズが一切されていないアイリスが襲われればひとたまりもない。
ロックマンがぎゅっと拳を握りしめてラムダリリスを睨んだ。
「どうしてこんな事をするんだ!?」
「どうして……? ふふ、貴方達が私をおかしくした。たったそれだけの事……アイリスを助けたければ、私に勝つ事ね……ロックマン、光熱斗」
ラムダリリスは冷笑しながら構えを取り、ロックマンも彼女と同時に身構える。
「熱斗君! こうなったらやるしかない!」
──ああ。いくぞ! バトルオペレーション、セット!!
「イン!!」
なんか思いついたので、熱斗とシエルのラッキースケベなんていうギャグから始まりました。(笑)
そして前々からちょいちょい出ていた本作の特別ゲスト(登場作品的な意味で)の正体も明らかに。
そう、その正体はFGOから出演、謎のアルターエゴ・Λこと通称ラムダリリス様です!
実は本作を書いたきっかけは「ロックマンエグゼのロックマンがラムダリリスにオールドレインされそうになっていて逃げまわったり蹴り攻撃を真剣白刃取り的に受け止めている」という電波を受信した事と
これを書くとしてオペレーターとかその辺どうしようかなと考えていた時に「そういえば俺“Dr.ワイリーに孫娘としてシエルが生まれたのをきっかけに原作開始前に改心したら”っていうネタ思いついてたじゃん」って思い出して
この二つを無理矢理に組み合わせて本作の設定をでっちあげました。
つまりぶっちゃけ、今回の話の一番最後のロックマンVSラムダリリス辺りのくだりを書きたいがために本作書いたと言っても過言ではありません。(笑)
そして次回がこの話の最終話で最終決戦。頑張って書いていきたいと思います。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。