疑心暗鬼な親友と、たぶん呉牛喘月な私 作:美羽様可愛いヤッター!
手直しは、まぁ、ボチボチやります…。
「敵将、波才討ち取ったのー!」
前線へ追い付いた時には私達の兵が敵を圧倒し、沙和ちゃんが敵将を討ち取っていた。それに近場からも怒号の声とか聞こえてくるから他の軍も城内へと入ってきたらしい。
「あ!陳紀ちゃん、陳紀ちゃん!沙和が敵将倒したのー!」
私達に気付いた沙和ちゃんが喜色満面の顔と声で近付いてくる。なんか懐いた子犬みたいで可愛いなぁ~なんて思ったけれど、真っ赤になった服と頬に付いた赤い何かで完全に台無しだった。
「ちょちょ、待ちぃや!血だらけのまんま飛び込んで来んなや!」
抱き付かれた真桜なんて沙和ちゃんの顔をグイグイ押して、引き剥がそうとしている。沙和ちゃんの頬とかグニッとなって面白可愛い顔になっている。
「貴様らか!我らの軍をここまで痛め付けおったのは!」
轟ッ!とクソデカい声量で怒りの声を上げるのは無精髭を生やした筋骨粒々でガッチリとした体型の(恐らく)武将。得物であろう丈八蛇矛を手にコチラへと向かってくる。
「アンタ、誰や?」
「我が名は孫夏!南陽黄巾軍が大将よ!」
名乗りすらも煩い孫夏を見ながら私は七乃に聞いた。
「…南陽黄巾軍って何?」
「南陽の辺りで暴れてた連中ですね。ただ、何度も孫堅に蹴散らされて崩壊したって聞いてたんですけど生き残ってたみたいですねぇ」
「ほぇ~」
よぐわがんにゃいけどね
「ふん!」
蛇矛の石突きで地面を突くと、ビリビリッと地面が振るえたような気がした。おー、気合いがスゴい。夏候惇さんや文醜ちゃんと手合わせしたときみたいな感覚がする。
「貴様らは生かして帰さん!たとえワシがここで死ぬとしても貴様らは道連れよ!」
七乃を後ろに下がらせて私と真桜、沙和ちゃんが孫夏の前に立つ。私と沙和ちゃんは早さと手数、真桜は槍での削り。対する孫夏は明らかに槍の長さと本人の地力による力を主体にした戦闘だろう。
先制で矢を射掛けるが腕に刺さったハズの矢は、浅くしか刺さらなかったのか地面にポトポト落ちた。
「…勝てるんかコレ?」
「…さ、さぁ?」
「…手の数では勝ってるの~」
想定以上の相手に私達は浮き足立つ。正直、こんなのと戦うことになるなら遠征を紀霊に任せれば良かった。
「…行くでー!」
「負けないのー!」
「3人に勝てるわけ無いだろ!」
「馬鹿者!お前ワシは勝つぞお前!」
☆
「食らうのー!」
飛び出す沙和ちゃんは右へ左へと動きながら孫夏へ肉薄する。その後ろでは真桜が槍の回転出力を上昇させているのか回転音と唸りが大きくなっていく。
「甘いわー!」
沙和ちゃんの連撃を軽々受け止めたと思うと蛇矛を凪払うように振る。沙和ちゃんは防ぎつつ衝撃を抑えるために跳んではいるようだけど、かなり後方まで吹き飛ばされている。
「…真桜、まだ終わりませんか?」
「…もうちょい。あと少しや」
「なら私が抑えます。沙和ちゃんが来たら手伝ってくれるよう伝えてください」
始めに射った矢より多くの気を込め、胴目掛けて4本放つ。当たるかどうかは置いておいて、弓を剣に切り替える。沙和ちゃんより弱いだろうけど真桜の準備が出きるまでなら耐え凌げるハズだ。
「次鋒、陳紀行きます!」
「うおおおお!」
あれ?なんかさっきとは違って突っ込んできてますけど?
あ、右腕と左太腿を撃ち抜いている。筋肉を収縮させて止血しているようだけど、滲んだ血と庇うような動きは隠しきれていない!
なるほど矢を警戒して距離を詰めに来たのか。
「双剣乱舞ぅ!(ただの連撃)」
「ギャアー!」
必殺、いや、ただブンブン振り回すだけみたいなモノですけど何合か打ち合い、大振りの一撃を避けて孫夏の胸を鎧ごと切り裂いた。その事実に驚いているのか胸から噴き出す血を見て固まっている。
「なんと…。我が鎧を切り裂くとは。超人強度460万のこの鎧を」
なんだ超人強度。しかも460万とか随分と高い?数字だな。
フーッと息を1つ吐いた孫夏は蛇矛を構え直し、油断無く私を見据える。その間に吹き飛ばされた沙和ちゃんは合流し、真桜は準備を整えきったようだ。
真桜の槍からは火花が散り、回転による唸りは伝説上で語られる龍の咆哮かと思わせるほど凶暴な音を発てている。
「お待たせや。準備完了やで!出力の制限装置取っ払ったから半暴走状態やけど威力は未知数や!まさにウチの螺旋は天を突く螺旋やで!」
下がっときぃ!と真桜が吼えながら槍を構えて孫夏へと突撃する。槍に加速装置でも取り付けられているのか、1歩跳んだ真桜は宙を殺人的な速度で孫夏向けてかっ飛んでいく。
「うおらぁぁぁぁ!」
「ぬぅん!」
超回転する槍と蛇矛がぶつかる。ドーンとぶつかり衝撃波が走った。一瞬だけ拮抗していたけれど真桜の未知数という言葉に嘘は無く、孫夏が少しずつ後ろへと押され始める。
防御に移行した孫夏の足は踏ん張る体制のまま地面にめり込む。地面を抉りつつも歯を食い縛り、槍を握る手に力を込めて真桜の突進に抵抗を続ける。しかし、そんな抵抗を嘲笑うかのように真桜が更に出力を上げたのか後方へ押し込んでいく。
背中から緑の光を撒き散らしながら。
「ぐうう!?」
「諦めぇや!」
孫夏は必死の形相と咆哮をあげて耐え凌ぐ。戦況は限りなく真桜が有利で進んでいる様に見えるが、何か真桜の声にも焦燥を感じた。
「ッ!?アカン、負荷掛け過ぎたか!」
そんな真桜の声と一緒に緑の光は弱まり、槍からは煙が発ち始めて回転音も小さくなってきている。それを孫夏も感じ取ったのかニヤリと笑みを浮かべる。
「ほう、そうか。あと幾ら耐えれば良い?どれくらい耐えればお主の限界が来る?教えくれんか女子よ」
「ッ!やっかましいわ!」
かなり出力が落ちたのか既に孫夏は余裕の笑みで真桜の槍を受け止めている。恐らく、そろそろはね飛ばして真桜を斬ろうとしているんだろう。
「なかなか楽しかったぞ、女子よ!」
拮抗が崩れ、孫夏は蛇矛で真桜の胸を刺し貫こうとする。自分に迫る蛇矛を見た真桜は目を瞑り、手を顔の前に突き出す。
「させないのー!」
「援軍だ!」
「ン何だコイツら!?」
完全に忘れられている私と沙和ちゃんがソコへと飛び出す。熱い戦いの余韻に浸る孫夏は蛇矛を防ぐ沙和ちゃんと双剣を振り回しながら突っ込む私に呆気にとられている。
「おとなしくするのー!」
「抵抗しても無駄だぞ!」
「ゲッホゲッホ!(致命傷)」
既に体力の限界、肉体の限界が来ていたのか孫夏は最初の頃に比べかなり弱っていた。二流、三流の私達の攻撃も捌ききれず鎧の傷が増えてきている。
「お前ら2人なんかに負けるわけ無いだろ!お前オゥ!」
気合いを入れるかの様に吼える孫夏。気合いとか根性で粘り強く戦うことは出きるかもしれない。
ただ気合いだけでは何ともならない事態があるのもまた事実。
「螺旋槍!」
「何ィ!?」
「さっきみたいな大出力は使えへんし、ガタが来とるからキツいけど!無理させればまだ動かせんねん!」
真桜が槍を無理矢理動かして帰って来た。軸はぶれ、ひび割れている槍を振るい続ける。そして、
「「ッ!?」」
真桜の槍は爆散、孫夏の蛇矛は刃が砕け柄が折れた。
「今や!」
その声に答えて私が孫夏の胸を✕の字に斬り、沙和ちゃんが首へと剣を走らせる。胴から大量出血しながらも丸太のように太い腕で首を守り、沙和ちゃんの腕を掴んで風車のようにグルグル回して投げ飛ばす。
「主と槍の女子が脅威になる!お主ら2人はワシと共に死ねい!」
ハナから私と真桜狙いかよ!
剣で斬るか?一撃で仕留められなかったらアイツと心中確定だ。なら、弓にするか?組み立てて撃つ前にアイツが辿り着くのが先に決まってる。
「どうすりゃ良い!?」
「答えは簡単ですねぇ~」
間延びした声が聞こえ、正面にいた孫夏が血を吹き出して倒れる。その体を槍のような矢が3本貫いていた。
「こんなところで立ち止まってる暇なんてありませんよ~?さっさと制圧して美羽様の元に帰るんですから~」
さっきまでの激闘なんて無かったように言ってくる七乃の後ろには城外に置いていたハズの弩が3台設置されていた。
「あと、この人は邪魔ですから。よいしょっと。…あら?斬れないですね。も~、無駄に頑丈ですね!」
心身ともに尽き果て、倒れ伏す孫夏へと歩み寄った七乃は容赦なく首へ剣を突き立てた。軍師ゆえの非力さと孫夏の鍛えられた体が災いし、剣は肉を少し切り裂く程度にしか刺さらなかった。
「えい、えい」
グッグッと体重を掛けて剣を刺していく七乃。ゆっくりと入り込んでいく剣と、それに合わせて口から首から噴き出す血を見て戦いで熱く滾っていた血が一瞬で冷えた。
「…七乃、私がやるよ」
「ダメですよ。陳紀さん達はソコで見ていてください」
フゥ、と額の汗とか返り血を拭った七乃が孫夏の首を切り離す。
「貴女達がどう思ってるかは知りませんけど、私にとって熱い戦いだとか誇りある戦いだとか、どうだって良いんですよ」
剣の血を布で適当に拭き取りながら静かに七乃は話す。剣撃や怒号が聞こえているのに、その声はハッキリと聞こえた。
「結局はただの殺しあい。違いますか?」
冷めた眼で切り取った首を眺めた七乃は袋に放り込み、鐙に結びつける。そのまま設置していた弩の撤収指示を出し始めた。
「さ、邪魔者も片付きましたし先へ進みましょう」
何事もなかったように、いつもの笑顔を貼り付けて馬を歩かせる七乃の後ろ姿を真桜と沙和ちゃんは顔に恐怖を浮かべて見つめていた。
本日のMVPだった武将
武将名:孫夏
破壊力:A(呂布並み)
スピード:C(モ武将)
射程距離:C(槍のみ)
持続力(スタミナ):B(三羽烏くらい)
精密動作性:C(モ武将)
成長性:E(超早熟型)