疑心暗鬼な親友と、たぶん呉牛喘月な私   作:美羽様可愛いヤッター!

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反董卓の始まり


反董卓連合
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「はぁ、どうしたものですかねぇ」

 

黄巾征伐が終わり、残党狩りも漸く終息の目処がたったと言うのに都から内密で書簡が届いた。

書簡の相手は張譲。十常侍の1人で謀略渦巻く朝廷内でも有数のやり手と噂されているヤツだ。

 

「よう、七乃。頼まれてた資料持ってきたぜ。…どうした?んな渋い顔してよ」

 

「…あぁ、炎蓮さんですか。朝廷からの面倒事が増えましてね」

 

「またぁ?名ばかりの勲章に黄巾の残党狩り、襲われた村への施しやらされてて今度は何やらされるんだ?え?」

 

連日駆け回っている疲労が滲んだ顔に不機嫌を浮かばせた炎蓮さんは尋ねてくる。こういうときは私が説明するより、直接見て貰った方が早いだろう。私が書簡を差し出すと引ったくるように受け取り、ザッと眼を走らせると彼女風に言えば渋い顔をした。

 

「なぁ」

 

「はい?」

 

「董卓ってのが洛陽にいるんじゃなかったか?」

 

黄巾征伐が始まった頃に西涼から呼び出され、都の防衛と周辺の賊討伐を行っていたのが董卓だった。西涼での評判はかなり善く、洛陽入りしてからは治安も良くなったと噂になっていた。

 

「えぇ、善政を行い民から人気のある董卓さんがいますねぇ」

 

「んじゃあ何だ?その善き指導者が実は悪人だったってか?余りにも出来すぎだろ。んなのは物語の中だけにしとけ」

 

ポイっと投げ返される書簡を畳んで執務机の上に放り投げると、まるで狙ったかのように書簡は開き、中に書かれている文が見えていた。要約すれば───

 

『董卓により都は荒れ、民は絶望を抱えている。此を読みし諸侯は陛下を洛陽を守るべく逆賊董卓を討つべし』

 

と言うことらしい。

 

「まったく、美羽様との安寧を邪魔するのが好きな人達ですねぇ」

 

「オレらにも休息をくれってんだよ。指示だけ出してテメェらは都に引き込もっているだけ。何かあったら助けよ諸侯?ふざけんじゃねぇよ」

 

やってらんねぇ、と毒付きながらいつの間にやら椅子に座っている炎蓮さん。彼女の意見は最もだけど私としては真偽はともかく他の点で困っていた。

 

「ただですね。この前まで洛陽に潜入させてた密偵さんから連絡が途絶えてるんですよねぇ。それまでは定期報告もちゃんと来ていたんですが」

 

「…書簡の話はともかく、洛陽で何か起きてるのは確実って言いてぇのか?」

 

「そう言うことです。今は保留にしますけど、何かあったら動こうと思いますから用意だけはしておいてください。私も陳紀さんと紀霊さんを呼び戻しますから」

 

「はぁぁ、面倒くせぇ事になりそうだ」

 

「それはいつもの勘ですか?」

 

「あぁ、無駄にデケェ話になるぞコイツは。ま、戦になりゃ暴れられるからオレとしては歓迎なんだけどな。戦いなら任せとけ」

 

ニッと獰猛に笑う彼女を頼もしく思い、架け橋になってくれた紀霊さんと美羽様には感謝してもしたりない。合同の演習を行ったり軍師間での情報共有を経て間違いなく黄巾の時よりも戦力は充実している。

 

「陳紀と紀霊ねぇ。あの2人は今何処にいるつったっけ?」

 

「曹操さんがいる陳留ですよ。紀霊さんの昔馴染みに凄腕の技師がいるので新しく武器を作って貰うそうですよ」

 

「あぁ、あん時に買ったヤツか。どんなのになるかは知らねぇけどスゲェ物にはなると思うぜ。見てるだけで圧を感じるような物ばっかだったからな」

 

「それは頼もしいですね。なら戦になっても何とかなるかもしれませんねぇ。董卓軍には不確定要素の『飛将軍』呂布がいますから」

 

 

帰還命令の早馬が来たのは真桜の所を訪ねて3週間たった頃だった。渡した素材で弓の製作は済んでいたが、細かな調整が残っているとの事なので真桜に預けて私と紀霊は帰路に着いた。

 

「にしても陳紀さん良かったんすか?弓預けて来て」

 

「だって、調整残ってるて言ってたし私が持って帰っても調整できんよ?」

 

「いや、そうじゃなくて。真桜の事だから素材とか徹底的に探りいれて自分の技術を高めようとしますよ?要は曹操さんとこの軍が強くなるよって話」

 

「あー、それね。迷ったんだけど使うなら完璧な状態で使いたいじゃん。調整怠って死にましたとか笑えないしさ」

 

出来上がった弓の試射をしてみたけど、技師と素材が一級品だからか精度も威力も桁外れの物に仕上がっていた。弓としての性能を生かすために剣の仕込みは無くしたけれど見た目より遥かに軽く、取り回ししやすいので近い敵も難なく弓だけで対処できそうだった。

それに素材の頑強さはそのままなので、並の武器相手なら弓を盾にするだけで問題なく防御できる。

 

「あんだけスゴいんだからさ、真桜の言う調整が済んだ状態で使ってみたいんだよ。それにさ、あの眼に馴れてないから持ってるの怖くなった」

 

「あー、確かにギョロギョロ動きますもんね」

 

魔眼とか言う綺麗な宝玉だと思っていた素材はホントに眼だった。一番見えるところって事で真桜が弓の先に取り付けた途端、怪しく輝きを放つ石ころがギョロリと動き瞬きまでしたのだ。

 

「人生で1番デカい声出しましたね。真桜もビビって固まってましたし。陳紀さんは腰抜かしてましたけど」

 

「うっさい」

 

あの眼に見られるのが怖くて手元に置いておきたくなかったのもあるけれど、何故かあの眼に見られていると自分の奥底まで見透かされてる様な気がするし何かを撃ち抜きたくて仕方無くなる。

自分に隠されている狂暴性が無理やり引き出される気がしておかしくなりそうだった。

 

「にしても、帰ってこいって何かあったんすかね?」

 

「大量の賊が出たとか? …流石にそれは無いか。隅々まで探し出しては鏖殺してるもんね」

 

「また遠征だったりして」

 

「えぇ…。なら次は紀霊行ってね」

 

のんびりアホみたいな会話をしながら私と紀霊は南陽へと馬を進めていく。

 

 

「お疲れ様です。サッサと広間に来てくださいね~」

 

到着した矢先に広間へと呼び出された。え、休み無し?なんてボソボソ2人で呟きながら広間へ行くと袁術様と七乃は当然として、シャオちゃん含む孫家の人が全員揃っていた。

 

「あー、休んでる暇無いっすねコレ」

 

「…また賊かな?」

 

「今日の議題は先日届いた密書と檄文に関してですねぇ~。知らない人もいると思いますので読みますから聞いててくださいねぇ」

 

書簡を開いて七乃が読み始める。色々書いてあるようだけど洛陽荒れてるよー、董卓が悪いんだよー、読んだ人助けてーって話だ。ホントに悪いなら話が早いんだけど実際は逆だったらどうする?討伐した結果、洛陽が荒れるとか天下の笑い者だぞ。

 

「続けて檄文でーす」

 

内容は似たり寄ったりで皆で協力して董卓を倒すぞ!って話らしい。問題は参加しなかったらお前も逆賊な?という点と発信元である袁紹さんにしては妙に煽り立てるのが上手いのだ。

 

「ついでに言うと帝の印が捺されてますので、参加しないのはかなり危険ですねぇ。不参加を理由に董卓と繋がっているなんて言われたら私達も国賊です。これら2つの書簡から言えるのは、董卓さんは恐らく嵌められましたねぇ」

 

「で、軍師様は嵌められた可愛そうなヤツを囲んで叩くのかい?」

 

気に食わないと言った顔の炎蓮さんが七乃に食って掛かる。何だかんだで心根はイイ人なんだよなぁ。

 

「叩きますよ?逆賊董卓の次は逆賊袁術とか嫌に決まってるじゃないですか。響きも悪いですし美羽様を逆賊呼ばわりとか本格的に朝廷叩き潰しますよ?」

 

「良いねぇ。朝廷の軍に便乗してくる各地の軍、ソイツを相手に大戦か!血が滾るじゃねぇか」

 

撤回、コイツらヤベェヤツじゃねぇか。

袁術様を逆賊にしないんじゃなくて言葉の響きが悪いからしないってのがブッ飛んでる。響き良かったら官軍相手に戦っても良いのかよ…。

 

「とまぁ、冗談はこの辺りにして。気に入らない人もいるとは思いますけど、官軍側で参戦しますよ。ついでに炎蓮さん達のお披露目もしたいので留守は私が守りますね~」

 

「む?なれば妾の側仕えはどうするのじゃ?」

 

「陳紀さんと紀霊さんに任せますから大丈夫ですよ美羽様~。軍師は冥琳さんに要望含めてお願いしましたし、炎蓮さんの暴走は蓮華さんが頑張って止めてくれるらしいです」

 

…その話ちゃんと本人にした?蓮華さん青い顔してるんだけど?

 

「あと今回は孫家の皆さんが主体なので陳紀さんはくれぐれも、くれぐれも目立つことはしないようにしてください」

 

あ、2回言った。

 

「それじゃ冥琳さん、抱負でもなんでも良いので一言どうぞ」

 

「…なに?」

 

ねぇ、伝えてないよね?いつもの凛とした顔がポカンとしてるんだけど?七乃ニヤニヤしてるし楽しんでるよね?

 

「…これ程の大軍を動かすのは初の事だ。至らぬ点も多々あると思うが皆、よろしく頼む」

 

おー、流石は軍師。間はあったけど何とか言葉が出てきた。七乃は面白くなさそうに半眼になって口をへの字に曲げているけど。

 

「それでは召集の知らせが来るまで解散でーす。あ、すぐに出れるよう準備はしておいてくださいね」

 

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