疑心暗鬼な親友と、たぶん呉牛喘月な私 作:美羽様可愛いヤッター!
「皆の者、出陣じゃー!」
『ハッ!』
城壁から見送ってくれる七乃に手を振り、集合地点を目指し進軍を開始する。
連合軍は洛陽へ向かうなかで汜水関、虎牢関の2つを通る道を進むらしい。勿論守りを固められているだろうから戦闘は確定で、七乃と冥琳としてはどちらかを私達で落としたいらしい。
『要所を落とせば戦果として上々』
だそうだ。後は七乃が裏で手を回しているので袁術軍は連合軍の兵糧管理を担当することになっているとか。
『主戦力になるだろう軍は目星を付けているが、他にもいれば随時報告をして欲しい』
冥琳曰く、戦力になる軍は優遇するが集りや有象無象には出し渋るらしい。物資は有限だから有効的に使おうって話なんだとか。どこの軍になるかは分からないけど御愁傷様としか言えないな。
「おー、こう見ると壮大ですね。それに金と赤でメッチャ豪華、メッチャ
後方を見た紀霊の言葉に釣られて私も後ろを振り返る。
おおー、確かにコレは豪華だ。兵数が多くなったのもあるけれど、色合いがとても良い。赤地に金の刺繍が入った絨毯みたいだ。
「紀霊よ。水を貰えぬかの」
「ちょい待ってくださいね」
季節的に涼しくなってきているとは言えど、初遠征の美羽様には堪えるだろう。出来るだけ負担を掛けないように良さげな馬車を買ってはいるけど長時間揺すられたら疲労も溜まるわ。
「ちょい冥琳とこ行ってくるから美羽様の事、任せた」
「うーす。ついでに雪蓮さんかシャオちゃん見たら美羽様の話し相手になって貰うよう伝えて貰って良いっすか?多分、進軍中は暇だと思いますし」
「りょーかい」
冥琳は襲撃されても良いように地形の把握をしたいからって事で先頭辺りにいたハズ。護衛役で炎蓮さんか誰かいるだろうから雪蓮さんとシャオちゃんの居場所を尋ねれば良っか。つーことでテケテケ走りますかね。
「陳紀、何かあったのかしら?」
中陣から紀霊の肩経由でピョンと外側へと跳んだら辺りを警戒していた蓮華さんと思春がいた。私が飛び出してきたのを何か見つけたと思ったのか、より警戒を強めて辺りを見回している。
「あ、いえ。美羽様が疲れてるようなんで行軍速度を緩められないか冥琳に相談しに行こうと思ってたんです」
「…なるほど。確かに少し急ぎ足かもしれないわね。説得するにも冥琳は少し堅いところがあるから私も行くわ」
貴女も堅いじゃん。なんて言葉が喉まで出掛けたけれど飲み込む。蓮華さんは警戒の役目を思春に任せると、馬の後ろに私を乗せ先頭の方へと走り始めた。
「…最近ね、夢を見たの」
「夢、ですか?」
「えぇ。夢の中では母様が亡くなっていて、姉様を当主にしていたわ。変わらず貴女達と一緒にいたけど、姉様も冥琳も南陽を奪い取る機会を狙っていたの」
「夢だから仕方無いですけど、炎蓮さんが死ぬところとか思い浮かばないんですけど…」
「ふふ、そうよね」
そのまま蓮華さんが見た夢の話を聞いていたけれど、軍の縮小は現実通りに起きたけど、私と紀霊は七乃に信用して貰えず斬首されていたらしい。
小さくなって空いたところに孫家の人を置き、蓮華さんにシャオちゃんは隔離され、人質のような扱いになっていたんだとか。
「あー、確かに有り得る話ですね。紀霊は兎も角、私は生死の境をウロウロしてましたからね。それにシャオちゃんと蓮華さんの隔離する案は出てましたし。別の可能性を見たんですかね?」
「だとしたら最悪な可能性を見たわね…」
「私も死にたくないですからね、現実にならなくて良かったですよ」
2人で苦笑しながら先頭へ辿り着くと、地形の確認をしては地図を見る冥琳と、その護衛をしている祭さん。に絡み酒をしている炎蓮さんがいた。
「ええい!大殿、離しなされ!」
「んだぁ?オレの酒が飲めねぇってのかぁ?」
…あれは無視だな。
「お疲れさん冥琳。悪いんだけどさ、行軍速度少し緩めて貰えないかい?美羽様が結構疲れてるみたいなんだわ」
「…私はどこか焦っていたのかもしれないな。承知した。行軍速度もだが、予定よりも大分早いから休息を増やそうと思う」
「お、案外すんなり。ついでに雪蓮さんかシャオちゃん何処にいるか知ってる?」
「雪蓮なら先程、偵察に出ると飛び出して行ったな。小蓮様は少し後ろにいたハズだが…」
「飛び出して行ったのか…。ならシャオちゃんを探してみるか。ありがとう冥琳。集合地点まではまだまだ遠いんだ、アレみたいになれとは言わないけど力抜いていこう」
さすがに炎蓮さんみたいになられたら行軍どころの話じゃなくなるから勘弁して欲しい。でも、力入り過ぎてても無駄に疲れるだけだ。お目付け役の七乃もいないんだし、緩くやっても良いと思う。
「…意外だったわ。冥琳がすんなり聞き入れるなんて」
シャオちゃんを探して兵に聞いたりしていると、側にある林の中を熊猫に乗ったシャオちゃんが白い虎を引き連れて駆け回っている姿が見えた。
「孫家ってのはヤンチャなのしかいねぇのか?」
「…なんか、ごめんなさい」
☆
「馬とは違って触り心地良いのよ?美羽も乗ってみない?」
「むう…。モフモフしてそうじゃの」
シャオちゃんを連れて美羽様の元へと戻ったら、キャーキャー楽しそうに遊び始めた。楽しそうな美羽様の顔は喜色に彩られ、さっきまで浮かんでいた疲労は感じられなくなった。
「やっぱりはしゃいでる美羽様が1番っすね」
「七乃が『守りたい、この笑顔』って言ってた意味、はっきり分かるわ」
炎蓮さんと祭さんの絡みと違って見ている私達も楽しくなると言うか、心が洗われると言うか。絡み酒やダル絡みみたいな面倒臭さ無しの純粋さだけっていうのは素晴らしいよ。
「ご報告!前方に展開する軍を確認!」
「は?」
「ご報告!展開する軍は青地に曹の文字!陳留の曹操孟徳殿の軍です!」
続けざまに伝令が来たけど曹操殿の軍?何企んでるのか分かんないけど、来たからには出迎えるべきかな?
「蓮華さん!シャオちゃんを乗せて冥琳に周囲の警戒を強化するよう頼んでください。紀霊、美羽様を乗せて上げて。そんで守り通せ」
「任せて下さいよ。美羽様には指一本触れさせませんから!」
護衛の確認、ヨシ!(現場武将)
ではイクゾー!デッデッデデデ、ジャーン!(銅鑼)
さぁ、蓮華さんの馬と紀霊の馬と私が一斉に飛び出した!
先頭を行くのは蓮華さん、すぐ後ろを追い掛けるように紀霊、少し出遅れたか私。
蓮華さん妹の攻撃で少し態勢が崩れたか?ソコを狙って紀霊が抜け出した!その後方を私がピッタリ捉えている!
さぁ最終直線、先に仕掛けたのは私!足を溜めていたのはここで仕掛けるためだった!早い早い!一気に追い抜き一馬身、二馬身グングン差を広げていく!
私ー!余裕を持っての勝利です!
「来たわね」
「やっぱり沙和達の言った通りなの~」「やなぁ」
「なっ!?本当に来るなんて…」
天高く両手を掲げて到着した私を待っていたのは、沙和ちゃんと真桜と猫耳の知らない人を引き連れた曹操殿だった。
「曹操殿、お久しぶりです。黄巾以来ですね。真桜と沙和ちゃんチーッス。そんでそこの猫耳さんはどなた?」
「チーッスなの」「うーい」
「…アンタねぇ!「良いのよ桂花」華琳様!?」
「久しぶりね陳紀。この娘は荀彧と言うのよ。それで貴女の後ろから来るのが紀霊かしら?」
荀彧さんね。確か七乃が荀家というのは名家でどうたらこうたら言っていたな。まぁ、私や紀霊とは違ってお嬢様ってことは分かった。
曹操殿に声を掛けられてガチガチに緊張して固まっている紀霊の腹と頭をブン殴って再起動させる。
「グッはひぃ!わ、わわわ私が紀霊でしゅ!」
「カッチカチやん」「カミカミなのー」
「あら?派手な見た目の割に可愛いところあるじゃない」
「うひぃ!?」
何時もと違う紀霊の姿が刺さったのか、曹操殿が全身を舐め回すように見ると紀霊は悲鳴を上げて私の後ろへと隠れた。お前より背が低い私を盾にするのか…。
いっちょ守ってやるか!しょうがねぇなぁ(悟空)
「お主らは何をしておるのじゃ」
紀霊を守るため威嚇の態勢に入ろうとしたら、今まで見守っていた美羽様が呆れを含んだ声を上げた。
「あら、戯れていただけよ。貴女が袁術かしら?初めましてね、私が曹操よ」
紀霊をチラリと舌舐めずりしながら見た曹操殿が美羽様の方へと向き直る。もう曹操殿が苦手になったらしい紀霊は視線から逃れるために私や沙和ちゃん、真桜を盾にして身を縮こませている。
「さて、私達が来たのは真桜の願いと孫堅を取り入れたっていう話の真偽を確認しに来たってところかしら。後は道中暇だから一緒に行きましょう?」
「良いだろう。後半が本音に美羽様の
「なぬ!?陳紀、勝手な事言うでない!」
「…華琳様何故このような連中を気に入ったのですか」
荀彧さんがポツリと呟いた言葉は喧しい私達の声に掻き消され、誰の耳にも届かなかった。