疑心暗鬼な親友と、たぶん呉牛喘月な私 作:美羽様可愛いヤッター!
袁家の跡継ぎ争いで美羽様派になった人達ってことで出しております。
「はい処刑、処刑、処刑~♪」
家捜しの成果を報告に来たら、楽しげに赤い✕印をポコジャカ量産している親友を見せられている。汗と体の震えが止まらないぜ…。一昨日は意外と仲の良かった同族の陳震が、昨日は私に兵法を教えてくれている郭図と審配が街の中央で見せしめに吊るされた。郭図に至っては妻子も捕らえられ、今もなお投獄されている。
「ん~、後は証拠不揃いですね~」
怒涛の✕印は終わったようだけど、七乃はさっさと不穏分子を消したいらしく不満気な顔をしている。横領、恐喝、強姦…今までに挙げられ消された連中は確かに罪人だった。投獄は分かるけど、処刑までする必要があったのかと言う疑問が日に日に大きくなっていく。
「陳紀さん、この人達なんですけどいけますかぁ?」
差し出された竹簡に眼を向ければ、少し前に庇護を求めてきた連中の名前が載っていた。どこに七乃の眼があるか分からないってのに人の家の前で騒がれていたのは流石に肝が冷えたし、死を覚悟してしまったよ。
ジッと私を見ている七乃は私の反応を確認している。その眼はここ数年で始めて見るほど冷たく何の感情も感じられず、何を考えているのか読み取れない。でも何が求められてるのかは付き合いから大体分かる。ここに書かれている連中を処刑できる証拠を探してこいと言っているんだ。
「…コイツとコイツ、あとコイツもかな」
見せかけで超ビビってるな? そうだよ(自問自答)
自分はもうすぐ捕まるだろうから託す。と無理矢理渡された反袁術派の血判書を差し出そう。そもそも自分は拒否してたのに『将軍の力をお貸しください!』としつこく迫って押し付けてきた連中が悪いのだ。
「流石ですねぇ~、何か動きあるのを掴んでました?」
「うん、まあね」
「凄いですね。参考までに何処から情報仕入れたんですか?」
「あー、秘密…かな」
これ以上、詰問されたら(ボロが)出、出ますよ…。
サッと席を立ってチャカチャカ部屋を出てきたけれど絶対怪しまれただろうなぁ~。とにかく血判書を取りに家へと向かう。
ここ最近、よく仕事を回してくれるから一応は信頼されてるんだと思いたいけれど、ああも街中で吊るされてる人を見てると私も何時かは仲間入りするんじゃないかと不安になってくる。
当面はとにかく信頼と功績を挙げて、役に立って切るには惜しいと思われるような存在になるのを目標にしていこう。そうすれば命の危機を感じないで安心して過ごせるハズなんだ。
「おお!将軍!この様なところでお会いできるとは!」
家まであと少しと言ったところで七乃の処刑したい一覧に載っていた陳蘭がいた。私や陳震と同じ陳一族だし助命嘆願してやろうと思っていたけれど、やけに偉そうでムカつくしコイツも反袁術派の一員で私を引き込もうと大分チョッカイを掛けてくる。
結論から言うと同族の情けよりも私怨の方が上回っているので、引っ捕らえられたら即切り捨てる事にした。それまでは精々、情報を引き出して七乃へのお供え物にさせてもらおう。
「こちらの手筈は整っておりますぞ。いつあの小娘供に思い知らせてやりますかな?」
はぁ~(クソデカ溜め息)、何故かは知らないけれど、コイツは七乃を出し抜けていると信じてやまない。何が刺さったのか反袁術派のアチコチとコネがあるコイツは纏め役みたいな立ち位置なのかな?とにかく会合だ何だとよく私にも誘いを掛けてくるし、集まりの日程も教えてくれる。
「陳紀殿を重用するのは分かるが、武に関してはワシの方が優れておるのに気付かぬとは大将軍として情けない!そう思いませぬかな?」
あ、ふーん(憤怒)
後方指揮しかしないような貴方に一番槍で最前線にいる私が劣る、と。
何百もの兵を犠牲にして鍛えられた私の武を、捨て駒のように兵を死なせるお前がバカにするだと?
あったまきた、もう許さねぇからなぁ?陳一族とか関係無いわ。コイツが繋がってる反袁術派も道連れにしてやろう。街中で命乞いしながら愉快なカラス避けになるのを拝んでやる。
「陳蘭殿、七乃はアンタを吊るす材料を探してる。あんまり派手に動くと何処で見られてるか分からんぞ?」
例えば私とかな。
「はっはっは!心配無用!この陳蘭、小娘に恐れなど成しませんぞ!」
あっそ。どんな言い訳して処罰から逃れようとするのか楽しみにさせてもらおうか。可能ならお前の死を切っ掛けに私が生きるための糧になる情報が転がり込んでくることを願って。
「あいよ、これで吊るせるか?」
「…フムフム。これなら完璧ですね~」
さようなら、陳蘭殿。
―――
「んぎゃあああ!?」
翌日、ニコニコと七乃が兵を連れて陳蘭含めた反袁術派を芋づる式に引っ捕らえに行った。序でに空きが出きるところに信頼できるのを入れたらしいけど、今の声からして『紀霊』が昇格したらしい。
「やばたにえん…。陳紀さん、私が将軍になっちゃいました…。陳紀さんの副将だから仕事も少なくて楽できてたのにー!」
「おめっとさん。七乃には楽できないよう仕事回してって言っとくから」
「待ってくださいよぉ!私って全然読み書き出来ないんですよぉ…。副将やりながら少しずつ勉強してたんですから、突然将軍やれって言われても書簡整理から出来ないんですってば!」
面倒だから立ち去ろうとすると、私の視線が何時もより高くなっていた。腰には紀霊の腕が回され、私より背が高いのを良いことに抱き抱えるように捕まえられていた。
「陳紀さん、お願いだから私の書簡処理手伝ってくださいー!新人の育成だと思ってお願いしますよー!」
「分かったから早く下ろせ!私が小さいように見えるだろ!」
「マ?やったぜ」
ポスッと地面に下ろされた私の前で紀霊が小躍りして喜んでいた。金髪、褐色肌、よく分からないけどド派手な化粧と初見のヤツは近寄りがたい見た目をしている。訳を聞けば田舎から出てくる時に仲の良かった友達から『阿蘇阿蘇』とか言う雑誌で流行りだと教えてもらったらしい。
「睨んで凄んでも陳紀さんは小柄で可愛いだけですよ?」
「お前がデカいんだよ」
え~!とか言ってる目の前のコイツは少し前に6尺より少し足りないくらいとか言っていた。私なんて5尺にあと2寸足りないのに…。背が低いとか言われてる七乃だって5尺3寸とか言っていたっけ。現状、軍の中で私より背が低いのは主君である袁術様だけってのが悲しい。
「ひとまず陳紀さん、明日から手伝ってくださいね!頼みますよー!」
そう言って紀霊は廊下を走って行った。私も読み書き得意じゃないのに人の仕事も面倒見ないと行けないのか…。紀霊は兵からも人気だし、珍しく七乃も重宝してるから手元に置いておこうと思ったんだろう。
「兵に人気があって重宝してる…。まさか、な」
『一緒に頑張りましょうねぇ、陳紀さん』
あの言葉を信じてるのは私だけとか言わないよな?