疑心暗鬼な親友と、たぶん呉牛喘月な私   作:美羽様可愛いヤッター!

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真恋姫はプレイしましたが革命は未プレイなので、孫堅ママの言葉遣いとか分からない…。


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「陳紀さん、紀霊さん誘って食事に行きませんか?」

 

 兵の調練と書簡処理が終わって部屋で休息を取っていたら七乃が袁術様と一緒に部屋を訪ねてきた。寝台でダラッと寝そべっていたので慌てていると昼食の誘いに来たらしい。なんでも、最近出来たと噂の飯屋だとか。

 

「私も一緒で良いんです?」

 

「うむ!七乃の友なら歓迎じゃ!それに陳紀が護衛なら安心出来るからのう!」

 

「そう言うことです。ほらほら、チャッチャと準備してくださーい。正門集合ですからね~」

 

 そう言って袁術様と七乃は出ていった。袁術様と食事って事はアレだよな、暗殺者みたいなのが来ることを想定して守れるようにした方が良いよな?なら弓持ってくか?いや、食事処に弓なんて持ってったら邪魔だよなぁ…。

 

「陳紀さーん!準備できましたか?そろそろ行かないと袁術様と張勲様に怒られますよー!」

 

「はいよー」

 

 持ち物を考えていると、ドンドンドンと部屋の扉を叩く音と紀霊の催促が聞こえてきた。小回りと仕舞い易さを優先して短剣を持っていこう。それなら邪魔にはならないし。用意も出来たから扉を開けると、得物である十字槍を担いだ紀霊が待っていた。

 

「あれ?弓持ってかないんですか?私も護衛しますけど過信されたら困りますよ?」

 

「いや、短剣は持ってるから大丈夫かなって。ご飯食べるときに邪魔でしょ?」

 

「逃げられた時を考えたら陳紀さんは弓あった方が良いですって。私の槍じゃ屋根の上とか無理ですし」

 

 …確かに一理ある。短剣だけだと対処しきれない事態が起きたら確かにお仕舞いだ。なら、邪魔になっても良いから弓を持っていくべきか。

 

「うん、なんかその通りな気がしてきたし弓も持ってくわ」

 

「その方が良いですよ」

 

 部屋へと戻り弓と矢筒を手に取る。鉄製の矢をブッ放す用に作られた特注の鉄弓は木製の物より当たり前だけど重い。それに素で引くにはクッソ硬いから気功に頼る必要があるけれど、その代わりに威力と飛距離は半端じゃない。

 

「うっし!行こうか。正門で集合らしいから急ごう」

 

「かしこま!」

 

 ビシッ!と敬礼した紀霊と一緒に正門へと急ぐ。最近は七乃の眼にビビりながら過ごしてきたけど、こうやって昼食に誘ってくれるなら少しは警戒が和らいだんじゃないだろうか?

 

「むー!遅いのじゃ!」

 

「遅いですよ~。これは陳紀さんの奢りですかね?」

 

「ファッ!?…余り高くなければ良いですけど」

 

 将軍ではあるけれど武器の都合上、戦闘があると出費が激しくなる。繰り返し使ってはいるけれど段々、矢に歪みが出て精度が悪くなっていくので替えが必要になってくるのだ。

 

「その追加分を昨日出したから懐が少し、ね…」

 

「あー、足りなかったら私も出しますよ?」

 

 持つべきものは一番槍で突っ込む戦友か。それに何だかんだ足りなかったら七乃も出してくれるに決まってる。昔から奢り奢りと集ってくる癖に自分の分はチャッカリ払ってたりするし、余裕ある時なんか半分出してくれた時もあったくらいだ。

 

「ここじゃな!」

 

「ここですね~」

 

「…ところで紀霊、コイツを見てどう思う?」

 

「スゴく、大衆食堂です…」

 

 え、本当にここであってるの?新しく出来たからか随分と小綺麗な店だけど、民も普通に利用してる食堂じゃんか。これなら余裕で足りるだろうけど、ここで袁術様飯食うの?

 

「何にしても人多いっすね」

 

「飯時だしね、仕方無いね。袁術様に七乃、外の席でも良い?中だとかなり込み合ってて席取るのもキツそうだけど」

 

「外ですか…。まぁ、良いと思いますよ。美羽様もそれで良いですか?」

 

「時には外で食うと言うのも面白そうじゃ!良いぞよ」

 

 人混みを避けて店外にある席を確保する。通りにも面して見渡すのも容易だから紀霊に護衛を頼んでおこう。変なのがいればアイツは見逃さないだろうし。

 

「んじゃ紀霊、護衛よろしく。美羽様と七乃は何食います?何でも良いならいつもの感じで行きますけど?」

 

「いつもの感じとな?」

 

「美羽様、陳紀さんはこういう時頼りになりますから任せておくと良いんですよ~。午後もありますし余り重くないと良いですねぇ」

 

「はいはい、余り重くないのね」

 

 ほんじゃ、注文しに行きますか。

 

 ―――

 

「張勲様って陳紀さんと仲良いんすね」

 

「七乃で良いですよ?まぁ、小さい頃からの付き合いですからねぇ」

 

 陳紀さんが注文しに行ってる間は私が護衛を。と事前に決めてたから周囲に警戒しつつ、ちょっと気になっていたことを聞いてみた。反袁術派を処刑し続ける冷酷な人と兵や民に人当たりの良い温厚な人。正反対な性格してるのに、2人が共に行動している姿がよく見られてるからか『陳紀さんが弱みを握られている』とかいう根も葉もない噂が飛び交っていたりする。

 

「七乃、紀霊と陳紀は信じて良いのじゃな?」

 

「紀霊さんは大丈夫ですよ。裏の繋がりがないのは確認済みですし、友人関係にも不穏分子ありませんでしたから」

 

 どうやら私も監視されていたらしい。陳紀さんに人付き合いは気を付けろって何度も注意されてた意味が漸く分かった気がする。あの時の注意は今生きていられるか、吊るされているかの運命を左右するモノだったんだ…。

 

「…陳紀さんはまだ難しいですね。私としては友達ですし信じたいんですけどね」

 

 七乃様は机に頬杖を付きながらチラリと列に並んでいる陳紀さんの背中を見つめていた。その眼には珍しく悲哀とかの感情が宿っていた。

 

「七乃ー!焼売と餃子で良い?」

 

「それで良いですよ~!」

 

 声を張って聞いてきた陳紀さんに、これまた珍しく声を張る七乃様。そんな姿を初めて見たのか袁術様も眼を丸くしている。

 

「あの人自身は良いと思うんですけど、関わりを持っている人達が問題なんですよ。血判書を押し付けられたり助命嘆願を依頼されたりしてるみたいですから」

 

 その視線の先では唐辛子まみれの『何か』を頼んでいる陳紀さんがいた。…何だアレ

 

「ほい、おまちどおさまっと。これ七乃と袁術様のです。これはもちろん私のね」

 

「またソレですか?いい加減やめないと体壊しますよ~?」

 

「大丈夫大丈夫。こんぐらいなら余裕余裕。…あ、レンゲ無いや」

 

 もう一度列の中へと戻っていく陳紀さんの背中をジッと見つめる七乃様。信頼、疑心…。色々な感情が見え隠れしている。

 

「だから紀霊さん。陳紀さんをお願いしますね?」

 

 こっちを向いた時にはいつもの笑顔に戻っていた。何も読み取れない笑顔に。

 

 ―――

 

「あー、暑い」

 

「あんだけ唐辛子食ったら暑くなるに決まってますって」

 

 いや、ビタビタってスゴいや。1口運ぶ度に凶器と化した辛さが口の中を何度も焼き払い、飲み込めば喉を焦がし、今も腹の中で燃え盛っている。でもそこを乗り越えた先にある深い味わいが手を止めることを許さない。

 

「これが食欲増進ってヤツか」

 

「違うと思いますよ~」

 

「う、美味いのかの?…陳紀よ、妾も1口」

 

「美羽様は食べちゃ駄目ですよ~。あれは人が食べる物じゃありませんからね~」

 

 アァンヒドゥイ

 

「隣、空いてるかい?」

 

 突然掛けられた声の方を向くと、何がとは言わないがデカい人がいた。紀霊みたいな褐色の肌に桃色の長い髪、やたら布面積の少ない扇情的な赤い服、そしてソレを押し上げる巨大な山脈。…半分私にくれないかな?

 そんな艶やかな見た目よりも際立つのは獰猛で鋭い目付き。あれは虎の様な肉を食う獣と同じ眼をしている。

 そして何より、強い。お盆を持っているだけなのに戦場いるような気配がビシビシ伝わってくる。

 

「ええ、私の隣で良ければ」

 

 出来るだけ袁術様と七乃から遠い席に座らせ、壁となるように私が真横に座る。対面に紀霊が陣取ることで私にもしもがあっても対処してくれるだろう。

 

「そんな警戒すんな。ここじゃ何もしねぇよ。さて、と袁公路殿と配下の方々とお見受けする」

 

 突然の言葉に紀霊は呆然、私は唐辛子を飲み込む途中で止まってしまった。瞬間、とんでもない痛みが鼻を喉を刺激して咳き込んでしまった。喉の刺激を排そうと咳をすればソレが更に喉を刺激する無限地獄へと叩き落とされた。

 

「私が意見できる立場で無いのは重々承知しているが、可能ならばどこか人目のつかぬところでお話しできないでしょうか?」

 

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