疑心暗鬼な親友と、たぶん呉牛喘月な私   作:美羽様可愛いヤッター!

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孫堅ママって一人称オレなんですね…。

結構無理矢理ですけど、それでも良ければ


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声を掛けてきた謎の女性は孫堅文台と名乗った。

孫堅と言えば『江東の虎』と呼ばれ、どっかの警備隊長だかに任命されていたハズだ。朝廷にいる朱儁が最近出てきた黄巾賊とかいうのを討伐するのに声を掛けたとかで話題になっている武に優れた人だとか。

 

「で、その話題の人が何をしにここへ?」

 

「あぁ、朱儁に呼ばれて顔を出す途中に噂を聞いてね」

 

「噂?」

 

人目のつかない場所で選ばれた七乃と袁術様の執務室へと通された孫堅へ茶と菓子を出しながら、私は重要性の高い書簡を棚へと仕舞う作業を、紀霊は誰が来ても通さないよう扉の前で見張りをしている。

突然の事態だったので机上の片付けもされておらず、軍備拡張だのの書簡が出しっぱなしのままだった。

 

「強盗、殺人は当たり前。裏路地は死体が転がる死の街があるってね。そりゃどんな街だよって興味が湧いたのさ」

 

「…なるほど」

 

「なんじゃその噂は…」

 

七乃は苦い顔を、袁術様は聞いたことがない噂に首を傾げていた。今でこそ七乃の大粛清で改善へと向かっているけれど、私と七乃が来た当時は噂通りの魔境だった。

 

「それがどうだ。いざ街へ来たら道行く人は笑顔だし、裏路地も見てみたが猫くらいしか歩いてない。広場にはデケェ絞首台みたいなのがある。何がどうなってんだって話よ」

 

「袁術様も七乃も頑張りましたからね。あの絞首台は噂の元になってる連中への牽制ですよ。何かやったら吊るすぞってね」

 

「待て、待つのじゃ!妾はそんな噂を聞いたことが無いぞよ!」

 

私が絞首台の説明をしていると、話に付いていけていない袁術様が声を挙げた。

 

「…秘密にしていた訳ではありません。伝える必要性が無いと判断して伝えていなかっただけです」

 

「ハッ、知らぬが仏ってヤツかい?世間では無知は罪らしいぜ?」

 

苦い顔をしたまま七乃は袁術様へ説明をする。それを聞いた孫堅は呆れたように鼻で嗤った。

 

「…ならば最近、審配や郭図、高覧に雷薄を見ぬのは」

 

「…私に陳紀さん、紀霊さんで彼らの証拠を掴み吊るしたからです」

 

「…そう、か。妾はもう休む故、話はお主達で進めて良い。それと七乃、妾は暫くお主の顔を見とうない」

 

そう告げた袁術様はフラフラと部屋を出て行った。いつもより小さく見えた背中を見送る七乃は珍しく涙を流していた。袁術様を救うまでは泣く暇なんて無い!なんて決意を固めていたけれど、袁術様本人から言われたらソレも揺らぐか。

 

「ありゃ、袁術殿行っちまったな」

 

「…あなたが、あなたが美羽様に余計なことを言わなければ!こんなことにならなかったんだ!」

 

他人事のように言った孫堅の言葉に七乃が激怒しバン!と執務机を叩く。視線だけで相手を殺せるなら孫堅は既に何回も殺されているだろう。それ程までに七乃の眼には怒りと憎しみが籠められていた。

 

「七乃!落ち着けって!」

 

「そうそう。冷静になって貰わないとオチオチ話も出来やしねぇ」

 

「孫堅殿は少し黙っていてください!」

 

冷静さを失い暴れる七乃を羽交い締めにしていると、そこへワザとなのかそれとも天然なのか自ら火に油を注いでいく孫堅。それを聞いて更に暴れる七乃。

普段は理性的な癖して少し冷静さを欠くと七乃はこんな感じに激情にかられる。

 

「…陳紀さん、もう大丈夫です。落ち着きましたから」

 

「本当に?この場で頭良いの七乃しかいないんだし頼むよ」

 

「ええ、分かってますよ」

 

少し暴れて落ち着いたのか怒りは残っているけれど理性的な眼に戻っていた。しかし孫堅を見る眼は変わらず怒りと憎しみに燃えている。

 

「で、何でしたっけ?美羽様に余計なことを伝えた孫堅さんは都に呼ばれてるんですよね?早く行けば良いじゃないですか」

 

これ以上、話しているのも嫌になったのか七乃は、早く出ていけ。と伝えるが孫堅は冷めた茶を飲み菓子を頬張っている。

 

「ハハハ、嫌われたもんだなぁ!んで、重要な話というか本題はこっからなんだが」

 

笑っていた孫堅は笑みを消すと、空気が張り詰めた。それでも眼は出会った時から変わらず爛々と得物を狙う虎のように輝いている。

 

「この戦、いや乱か。それが終結した際にオレらを食客でも何でも構わねぇから軍に入れて貰えねぇか?」

 

「…はぁ?」

 

「今回は呼び出されたから行くが、娘達は寿春に残してるし朱儁の犬になるのはゴメンだ。だからって今の領地もアッチコッチで黄巾が出てるから村も何もボロボロ、それにウチの軍師とオレの勘がこの後もデカい戦が起きると読んでる」

 

孫堅が言うとそれまで黙って聞いていた七乃がピクリと眉を動かした。え?今ので何か分かったの?私には只の愚痴にしか聞こえてないんだけど…。

 

「だったら近くて確りとした軍に加わるのが一番だろ?そっちは強い配下に優秀な軍師と土地が増える、オレらは軍に属するから呼び出されず家族でいれるし援助も貰える。互いの利になると思うぜ?」

 

現状、武官も文官も減った私達にとってはとても嬉しい提案な気がする。七乃だって戦場では策を練って軍を指揮して剣を振ってと八面六臂の働きをしてるのだから、その負担を減らせるし、人手不足で埃を被っている土地の開墾も着手出来るようになるハズだ。

 

「少し協議しますから今は保留で」

 

「ま、そりゃそうだわな。どうせ当分は治まらんだろうし、ゆっくり考えてまた後で答えてくれりゃ良い。ただ、オレ達は恩義には恩義をもって報いる。絶対にだ」

 

それだけさ。そう言って茶と菓子を食べきると、御馳走さんと言って執務室から出て行った。後に残されたのは目を瞑り顎に手を当て考える『軍師』の七乃と、七乃の返答を待ちながら茶を啜る私、喉乾いた~と言って入ってきた紀霊の『護衛担当』2人だった。

 

―――

 

「どう思います?」

 

「どうって、さっきの?」

 

「はい」

 

七乃が少しも動かず考えはじめてから半刻が経つ頃、漸く目を開けたと思えば私と紀霊に意見を求めてきた。

 

「え、どうって…。陳紀さんはどうっすか?」

 

「え…どうって言われても…ねぇ?」

 

いつの間にか自室から持ってきた『阿蘇阿蘇』を読んでいた紀霊は戸惑いながら私へ振ってくる。私だって七乃に薦められた兵法書を読んでたから全く考えてなかった。

 

「人がいないのは事実だし、受け入れても良いんじゃないの?…あれ?ダメ?」

 

「あっぶね、同じこと言うとこだった」

 

思ったことを答えたら七乃は笑顔で額に青筋を立てていた。てか紀霊のヤツ、同じこと考えてたなら私が睨まれる前に同調しろよ。

 

「前々から思ってたんですけど、陳紀さんと紀霊さんってちゃんと考えて発言してます?その首に乗ってる頭は飾りじゃないですよね?」

 

ひでぇ言われようだ

 

「受け入れるのはアリですけど、無償で受け入れるのは流石に無しですねぇ。…保険で家族か配下を陳紀さんと紀霊さんの補佐にでも付ける条件付きとか良いかもしれませんねぇ。その辺は後日、…美羽様を加えて考えましょう」

 

「そうっすね。まずは袁術様と七乃様の仲直りが先っすわ」

 

「重い空気の執務室とか行きたくないから早く仲直りして」

 

「…善処はしますよ」

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