疑心暗鬼な親友と、たぶん呉牛喘月な私 作:美羽様可愛いヤッター!
お久しぶりです。また投稿頑張っていきますのでよろしくお願いします。
あ、あと明けましておめでとうございます(激遅)
昼夜問わず現れては、迎撃されて蜘蛛の子を散らすように退散していく黄巾賊。初戦の勝利が本隊へ伝わると労いの言葉と共に縮こまっていた朱儁とかが前線へと躍り出るようになった。
「あ~あ、呼び出されちまったよクソ…。まぁ、今度は暴れられるんだから少しはマシか?」
朱儁が先頭を走るということは配下になっている孫堅も追随する必要がある訳で。生き生きと先鋒を走っていた彼女は軍義で見た時と同じように退屈そうな顔で欠伸をしていた。
「そんじゃ、また後でな」
ヒラヒラと手を振って去っていく彼女を見送った私達は本隊から礼と休息を取るように言われたので、曹操さんと袁紹さんの軍の人達と顔合わせをしていた。
「だー!くそ!夏候惇、もう一回だ!」
「ふん!何度やっても私の勝ちは変わらん!」
休息をもらって暫く経つけども、連戦連勝の様で私達にお呼びが掛からなくなっていた。今日も今日とて夏候惇さんと袁紹さんとこの文醜ちゃんが大剣をぶつけ合っている。
力同士のぶつかり合いでは夏候惇さんに分があるのか、ぶつかり合う度に文醜ちゃんが少しずつ後ろへと押されている。振り回しているのが互いに身の丈もある超重量の大剣だから小手先の技なんか無く、己の腕力に物を言わせて振り回しあっていた。
「食らえ!斬山斬!」
「ぬお!?」
下からのカチ上げを受け、宙へと浮いた文醜ちゃんだったけど体勢を整えて大剣を振りかぶると、落下に合わせ全力で振り下ろした。その一撃は流石の夏候惇さんも受け止めきれず吹き飛ばされ、立ち上がる所へ首元に文醜ちゃんが剣を突きつけていた。
「アタイの勝ちだ」
「ふん、3勝1敗。今日も私の勝ち越しだな」
「んだとぉ!…お、陳紀いるじゃん。なら、陳紀も混ぜて仕切り直しだ!」
「…へ?」
突然名指しされたかと思ったらグイッと腕を捕まれ、ズルズルと文醜ちゃんに引き摺られていく。なんとか抜け出そうと暴れましたがビクともせんです。
「新たな挑戦者の登場だぜ!」
「陳紀、お前は弓だけでなく大剣も扱えるのか!…面白い!」
「何も言ってないですよ!?」
「行けー!陳紀!」
無理矢理大剣を渡されると、それが合図になったのか夏候惇さんが猛烈な早さで突っ込んでくる。弓なら余裕を持って避けることが出来るけど渡された大剣がクソ重く、引き摺らないと運ぶことが出来ない程だ。
「どおりゃあああ!」
「あふん」
少し前の文醜ちゃん同様に下からのカチ上げで宙へと吹き飛ばされた私。でもこれは絶好の機会なのでは?
ここで文醜ちゃんは体勢を整えて夏候惇さんへ一撃を入れていたし、それに習って私も!
「無駄だ、2度目は食らわん!」
「陳紀~、猿真似は無謀だって」
「うおあああ!?」
落ちてくる私に合わせて夏候惇さんが既に大剣を上段に振り上げ待ち構えていた。直撃は避けられないし、刃潰しされてるとは言え、あの振り下ろしを食らったら真っ二つになるのは確定だろう。
「はぁぁぁ!」
だから剣にありったけの気を流し込み、腹を盾にして真っ二つだけは避ける!耐えてお願い!
「ぬん!」
「やったああああ!?」
結果として、剣は折れること無く夏候惇さんの振り下ろしを耐えきってくれた。ただし、私がそのまま剣ごと背中から地面へと埋まりましたが。
「む?どうした陳紀!」
「立てー!立つんだ陳紀ー!諦めたらソコで試合終了だぞ!」
「いや、あの…限界です」
埋まった穴から這い出した私を見つめる脳筋2人は、限界と言った私の言葉を理解できていないのか何を言ってるんだ?と首を傾げる。いや、限界だって言ってるのに何で剣を突き付けてくるんですかね?
「…少し軟弱すぎんか?」
「そんなんじゃ生きていけないぜ?もっと鍛えねぇとサクッと死んじまうぞ?」
「…基本的に後衛だから問題ないんですよ」
渡された剣を文醜ちゃんに返し、服に付いた土を払い落とす。背中も腰も何なら後頭部も地面に叩きつけられてメッチャ痛い。大分ハデにいったけど出血はしてないようだから、今だけは丈夫に育った体に感謝感謝。
「にしても、そろそろ飽きてきたよなぁ…。最後に出たのって何時だっけ?」
「2週間くらい前だったと思いますよ。連勝続きみたいですから手柄を稼いでおきたいんでしょう。そうしないと朝廷の軍としての面子も立たないでしょうしね」
剣を放り投げてくあ~っと大きな欠伸をしながら寝っ転がる文醜ちゃん。ボリボリと太股を掻いてる姿が美少女なのに只のオジサンにしか見えない。
「アタイらがボコボコにしたんだから締めもやらせてくれっての。舞台作るためにワザワザここまで来た訳じゃないってのにさ」
「それは同感だ。手柄を挙げに来たのであって渡しに来たわけではない。何時までもここに留まっていては華琳様の目的も達成できんしな…あ」
「んあ?」
言ってはいけないことだったのか、しまったという顔をする夏候惇さんはバッと文醜ちゃんを見るけれど、ボケッとしている文醜ちゃんを見て、気付かれていないとホッとした顔を浮かべる。私のことは気にしないんです?
「兎に角だ!ここで何時までも待機ならば私は単騎駆けでもしに行こうかなと思っている!」
「え~…。それ曹操さんに止められるっしょ?アタイだってやりたいけど姫と斗詩が許可出すわけねぇもん」
フンフン鼻息が荒い夏候惇さんに向かって何言ってんだと言う顔をしている文醜ちゃん。
「あら、文醜も陳紀もこんな所にいたのね。麗羽と張勲が探していたわよ。そろそろ乱の締めに掛かるらしいわ」
暇だった日々に終わりを告げる曹操さんの言葉。それを聞いた文醜ちゃんは飛び起き、夏候惇さんも顔に笑みを浮かべる。
「お!ようやくか!アタイは先に戻るぜ。陳紀、夏候惇また戦場でな!」
ヤッホーイ!と愛剣の斬山刀を担いで文醜ちゃんは陣地へと走っていく。暇を持て余していたとは言え戦と聞いて喜ぶのはどうなんですかね?
走り去る文醜ちゃんの背中と戦と聞いて生き生きとした顔をしている夏候惇さんを見て曹操さんは若干呆れ顔になっている。
「それじゃ私も戻りますね」
「陳紀、私達の軍から于禁と李典を貸すわ。張勲には伝えてあるから連れてって頂戴。孫堅ほどではないけど其処らのよりも頼りになるハズよ」
「于禁さんと李典さんですね?了解です。その2人はもう準備できてるんですか?」
「必要な荷物は纏めてると思うわ。着いてきなさい」
──
曹操さんに連れられて顔合わせをした于禁ちゃんと李典ちゃん。統率に優れているものの戦闘特化の人に比べて実力的にも経験的にも劣ってしまう于禁ちゃんと、今回の遠征であまり活躍の場が無い工兵隊を率いる李典ちゃん。
鬱憤が溜まっているせいで味方の苛烈さが増すだろう総攻撃に不安を感じていた曹操さんの頭に浮かんだのは、孫堅を使って戦っていた私達へ援護に向かわせることだったらしい。
「貴女達は助力を得られる、彼女達は経験を得られる。互いに良いことしかないと思うのだけれど?」
そう言って七乃を説得したんだそうだ。頷かせるのに苦労したわってボヤかれたのを曖昧に笑って誤魔化し、2人との自己紹介から始めた。
それで知ったのだが、紀霊のド派手な見た目は于禁ちゃんもとい沙和ちゃんが原因だった。素材は良いのに着飾りもしない紀霊を連れ回し、着せ替え人形の如く合う合わないを教え込み、化粧の仕方を叩き込んだらしい。
「紀霊ちゃん元気なの~?」
「阿蘇阿蘇読み耽っては遅刻したり話聞いてなかったりでよく怒られてますよ。あと天気が良いときは服脱いで肌焼いてますね」
「良かった。元気そうなの」
「後半もやけど、前半のはアカンヤツやろそれ」
ポワポワとした雰囲気で間延びする話し方をする沙和ちゃんですが、紀霊の友達だけあって仄かに香るヤベェ奴感がある。それに比べて見た目が露出的にヤバい割りに常識とかがしっかりしてる李典もとい真桜。そんな彼女も何故かガリガリと木製の何かを削ってはカチャカチャと手元の人形?に嵌め込んでいる。
「おっしゃ、からくり夏候惇の修復終わりや」
「…からくり夏候惇?」
「真桜ちゃんはからくり弄りが好きなの~」
「後は武具とか作るのも好きやで?先の戦闘でオモロイ武器使ってるの知っとるで陳紀はん?弓に剣仕込むとか何食ったらそんな考え湧いてくんねん」
ニィっと笑っている真桜の眼は私ではなく背負っている弓を見つめ続けている。触りたい、弄りたい、可能なら分解したい!そんな視線がバシバシ注がれている。眼は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。
「な、少ぉし弄ってもエエ?お礼に弦とか作るし調整するで?」
グイグイ顔を近づけてくる真桜。気恥ずかしさと圧に圧されて下がると下がった分、詰めてくる。私が壁に追いやられてるのにズイズイ近付いてきて口付けが出来そうな距離まで詰められる。と、そこで腕に違和感を感じる。具体的にはスゴく柔らかい何かがこれでもかと主張してきている。
…これはまさか私には無い大きく豊かな双丘か!?理解した途端にスッと熱かった気持ちが冷えきる。
「分かりましたよ。壊さなければ幾らでも見てください」
「ホンマか!おおきに!」
早速カチャカチャと弓を引いてみたり、分割して双剣にしてみたりと弄り倒されていく私の弓。隣にいる沙和ちゃんにも剣を持たせた感じとかを聞いてはフンフンと何かを考えている。
「まぁ、言わんでも分かっとると思うんやけど負担が大きいわ。そもそも弓に仕込むってのが難しいんやな。特に陳紀はんの弓は張力が半端無いから繋ぎ目に掛かる力が普通のに比べてデカ過ぎるわ」
「でしょうね。解決方法は弓と剣を別にした方が良い。でしょ?」
「ま、そう言うことやな。オモロイ物見れたしウチ特製の弦張っとくで?ボロボロの弦で射つよりずっとエエやろ?」
「例えば弓を作って欲しいって言ったら作ってくれます?素材とかはコッチから出すんで」
「エエよ。ウチの気を引けるような素材なら、ヤル気も湧くから良い物作ったるよ。無いなら無いでウチが素材選びからしたるけど?」
ならこの乱が終結したら依頼でもしよう。紀霊の槍も結構痛んでたハズですしこの気に買い替えてしまえば良い。
「だいぶ話し込んじゃいましたし、そろそろ行きましょうか。我々、袁術軍の陣地へと」