つかほんとに世界級アイテムの盾なかったら死んでたわ
お茶目したらギルドのほぼ全戦力出てくるとか、普通思わないじゃん?
警戒しすぎだっつの。
アイツと違って私は死ぬ気はない。
思う存分、この世を面白おかしく過ごさせてもらう
「で、話してもらいますよ。知ってること全て」
「それはこっちのセリフだ。そも、私自身も100年くらい氷漬けになってたから知ってることはほとんどないけどね」
明らかに不機嫌な骨の前に座り、念のためほとんど知らないことを告げる。これは本当だし、氷漬けになってから主にこの世の情報収集していたのはパチェだ。
私のそばにはパチェが控え、モモンガの側には1人の60レベルくらいのメイドが控えた。プレアデスの1人、だっけ。
パチェが慣れた手つきで自分の私とメイドの分の紅茶を入れる。途中アインズにも淹れようとしていたがアンデッドなので飲めないと断られていた。
うん、100年と少しぶりの食事はうまい。食事と言っていいのかわからないけど。
「ほーん、お前以外のギルメンは誰1人残っていない、と。……あのピンクスライムとか教師とは今一度、真面目に話してみようとか思っていたんだけど」
「ああ、ぶくぶく茶釜さんとやまいこさんですか?」
「そうそう、そんな名前」
「……覚えて、ないんですか?」
「流石に100年以上も経つと一度会ったヤツの名前と顔が一致しないんだよ。でもアイツだけは覚えてるぞ?やったら神話に興味持ってた……タブラとかいったっけ?」
「ええ。しかし、本当にアテナさんなんだな」
「なに、疑ってた訳?」
「そういう訳ではないが、今現状、誰が敵で誰が味方か、俺たちを知っている人間プレイヤーが仲間の姿をしないとも限らない」
「確かに。人間にはとことん嫌われてたからなお前達は。だからこそ私はお前達と関わり合いたくなかったんだが」
「……」
「気を悪くしたか?だがそれ相応のことをお前達はしていた。世間から見てお前達が悪だろうが、人間種が善だろうが、そんなものどうでもいい。……アイツは、私が超希少な種族をとってしまったから、せめてもの保険として、頼み込んで来たから私はこのギルドに所属した。それだけなことを忘れるな」
「ええ、わかっています。……何より、あの人からのお願いもあったので」
「ああ、面識が元々あったんだっけ?どうよ、アイツ中々の馬鹿だったろ?」
「ええ、馬鹿でしたね。それこそ今のあなた以上に」
「ま、だからこそ私も惹かれたのかもな。だが、まさかゲーム内で愛の告白をしてきたかと思えば、私の会社にまで凸ってきて告られるとは夢にも思わなかったわ」
「うわ、何?惚気?喧嘩売ってます?」
「イェス。クリスマスの聖なる贈り物を貰っていない私から、貰っているお前への惚気さ」
「あれ?アテナさんあの赤仮面持ってませんでしたっけ?」
「商人が珍しい仮面とかいうからな。特に見ずに買ったらクリスマスの呪いの仮面だっただけだ」
「へぇ」
「で、話逸れたがお前以外のギルメンはいない。なら他のギルドは?」
「現時点では確認できていません。ですが現地人と交戦した際にユグドラシルの魔法、アイテムがあることを確認しています。ですので他のギルド、プレイヤーは少なからず存在すると考えています」
「それに関しては同意見だ。じゃあ次。スレイン法国に喧嘩売ったんだって?」
「ええ」
「よくもまあ、未知のものに下調べもせずに喧嘩売れたね。今回は相手が弱すぎたからいいものの。君そんなに馬鹿だっけ?」
「時間がなかったかもので。あれば入念に調べましたよ」
「ま、そうだろうね。けどスレインなら遠慮なく潰してもらってもいいんだよ?アイツの仇の国だし」
「仇?」
「パチェから聞いてたろ?私と共に氷漬けにされていた人間。あれを洗脳して命令して、殺したのはスレイン法国だよ」
それを伝えるとこの場の全員から殺気を感じた。
こーーわっ。
「で、我を失った私はスレイン法国へ自ら赴き、そこを大半壊滅させた後、森へ帰り『流れ星の指輪』を使って氷漬けになりました。
と、いう訳。で、パチェがスレイン法国への恨みを抑え込んだのは、私とスレイン法国が『2度と私とその周辺へ手を出さない。私へ今後心身ともに尽くす。代わりに私からスレインへは手を出さない』って約束を取り付けたから。でしょ?」
「ええ。けど杞憂見たいね。貴女目を離したらすぐ行きそうだもの」
「だね。殺し尽くしても殺したりないかもね。けどめんどくさい。だからそれは
「……ユリ、デミウルゴスに伝えておいてくれ。捕らえたスレイン法国の人間には、死は生ぬるい地獄を見せて、殺せ、と」
「はっ!」
やけに張り切りながらユリというメイドは部屋の外へ出た。
「それで、アテナさんからの質問は以上ですか?」
「ああ。私はもう無いさ。それじゃ次はモモンガの番だ。全てに答える、とは言わないができる限り答えよう」
「じゃあまずは一つ目」
「じゃあ最後。私たちの元へ戻ってくる気はありますか?」
「無い。私はパチェと一緒にあの森で過ごし、死ぬまであの森に居たい。それだけだからね。お前たちの元で主として過ごすなんぞ死んでも嫌だね。私は上に立つべきじゃないし、立ちたくもない」
「……そう、ですか」
「まあそういうことだ。……パチェ、ちょっと席外してもらえる?これからモモンガ……じゃなくてアインズか。アインズにしかわからないし、伝えたく無いことがあるから」
「わかったわ。でも何かあったら、襲われそうになったらすぐ逃げなさいよ?」
「わかってる」
パチェを部屋の外に出てもらい、改めて
「アインズ、今から話すことは私とお前との中に仕舞っておけよ?わざわざタイマンで勝てないお前と2人きりになってるんだ。お前も私を信用しろ」
「あ、ああ。でも、どうしたんですか?」
「……はーーーーーぁ、つっかれたぁぁぁ。何でわざわざこんな面倒なことを」
猫かぶる、とでもいうのだろうか。まじで疲れた。
「……」
「何?」
「いや、アテナさんも苦労してるんだな、と」
「苦労?真似事の事か?」
「真似事?」
「取り敢えずクソくだらない事は今からはナシだ。ここからは『アテナ』じゃなく『始原の精霊』として話させてもらうよ『死の支配者』」
「どういう事です?」
「そのままの意味だ。いまからお前と話すのは『人間』じゃない。かつてのお前の仲間だった『アテナ』じゃない。単なる最上位精霊『始原の精霊』なだけだ」
「……」
「何困惑してるんだ?お前自身にも覚えがあるんじゃないのか?己の創ったキャラクターに精神が引っ張られている、昔の自分では考えられない行動、感情、全部は無くとも一つくらい心当たりあるだろ?」
そこまで言って初めてアインズは深く考え出した。
「で、私はだな。この体をくれた人間の想いを受け継ぎ、愛娘を、私たちの家を、全てを守り通すつもりだ。無論、お前達が森を無断で侵略しようものなら全員を殺す」
「は?」
「何だ?私にはできないとでも思ったか?残念ながら、もうこの心は、精神は完全に『始原の精霊』になってる。お前達の仲間だったアテナの精神はもう僅かだ。だから……お前達を手にかけるのは造作もないぞ?」
「そんなことさせるとでも?」
しばらく睨み合いが続き、途中で耐えられなくなって吹き出してしまった。
アインズは何が何やら、と言う雰囲気でポカーンとしていた。
「まさか。やる気もない。私としては手を出してくるな、って事だけだ。手を出してくるなら、それ相応の報いをお前達に受けさせる。それだけだ。手を出さないでおくなら、ほれ。これやるよ」
私はアイテムボックスから取り出した一つの指輪をアインズに向かって投げた。慌ててキャッチしたのち、めちゃくちゃ慌てながら喋り出した。
「は、はぁっ⁉︎『流れ星の指輪』⁉︎正気ですか⁉︎超超超レアアイテムですよ⁉︎」
「正気だよ。とは言っても、残り使用回数1回?2回?だけど。でもあるのとないのではかなり違うだろ?私からお前達への最大限できる譲歩だとでも思ってくれたらいい」
「でもこんな貴重なアイテム……」
「心配するな。あと2つ、フルで使用できるやつがある」
「……は?」
「ゲームの時に私が言ってなかったか?私は元々『流れ星の指輪』を4つ持ってたんだよ。内二つは結婚指輪用にね。結局その後にちゃんとした鉱石で創ったから要らなくなったが。でも、それだけでもお前にとっては破格だろ?」
まあ、それ以外にもお前へこれだけ譲歩するのは理由があるが。
「幸いにも、私と『アテナ』の考えはほとんど一緒さ。でなけりゃ、こんな破格の条件、提示しないさ」
「一緒、とは?」
「君らに喧嘩は売りたくない、出来る限り平穏にのんびり暮らしたい、ってだけさ。私にとっても、アテナの子であるパチェは必要な存在だし、私が『始原の精霊』なこともあって、森の中は居心地が良いからね。何か争い事を表立って起こす気もなければ、どこかの下につく気もない。パチェがやりたいことは、出来る限りサポートはするけれど、それだけだ。私は本を読んで、寝て、食べて、を繰り返せたら、それでいい」
「……わかりました。俺たちもあなたへ危害は加えない事を約束します。出来る事なら、アテナさんにもギルド運営を手伝っていただきたかったのですが……」
「絶対ヤだね。何で自ら面倒事に首を突っ込まなきゃならん」
「デスヨネ……」
「そんなに人が欲しいなら、最終日とやらにもっと引き留めればよかったものを。孤独をとっぱらいたいと言う考えの割には行動が伴ってないぞ?人間というのは、基本、理性で動く生物のはずだろ?」
「それは……確かにそうですが、でも、彼らにも生活が……」
「君らの言う
私は素直な疑問をぶつけてみることにした。
「君の身の上の話、という建前の愚痴を聞いていて思ったが、君は何でそれだけこのギルドに入れ込む?」
「そんなの、大事だからに決まってるじゃ無いですか」
「大事……ねぇ」
私からしたらタダの依存にしか見えないけど。
「ま、どーでもいいか。私個人としての話も終わり。例え私がどっちだっだとしても、『私達』の見解は変わらない。森で家族と共に静かに過ごす。それを邪魔するなら例え君たちが相手であろうとも容赦はしない」
「心配するな。私は君のことを仲間だと思っているし、仲間に手を出すほど落ちぶれてもいない」
「フフ……わたしにはこう聞こえるぞ?『仲間でなくなれば容赦なく殺す
』って」
「まさか。私にとって貴女は何があろうと仲間ですから」
「ふーん……。ま、君達が敵意を持って接するなら逃げればいいだけだし。けど君にとって私と言う存在を、蘇生できるかも怪しいのに殺すなんてリスキーな事はしない」
「あたりまえです。貴女は私にとって、本当に数少ない情報共有者なんです。私情抜きにしても殺すのは愚策です」
「だろうね。そう言うと思ってた。さてと……」
私は切り替えて、コレからのことを考えて思わず震えた。
「……パチェにしばかれにいくかぁ」
「唐突な現実の確認」
「知ってる?ぐーたらな母親ってしっかり者の子の尻に敷かれるもんだよ」
「……なんとなくわかる」
「おい待て変態鳥と一緒にするなよ?」
「なぜわかった」
後にしばかれるか早くしばかれるかなら後者を選ぶ。
何でずっと怯えてないといけない。怖いもんはさっさと終わらせるに限る。
「それじゃ、私はコレで失礼する。100年と少しぶりの他人との関わりは存外悪くなかったぞ。アインズ。コレから話すことがあるかはわからんが」
「アテナさんに話す気がなくても俺から誘いますから。いやなんなら毎日お誘いしますよ」
「え、何、告白?私の体目的?それならお断りだよ」
「何でそうなる⁉︎」
「大体毎日誘ってくる男はそんなのばっかだったからな。あ、今見せれば今後誘うのやめてくれたりする?」
「俺はそんな奴らと同じと⁉︎てかまでまじで脱ごうとするのやめい!」
「え?そんな魅力ない?ひどっ。ああそうか、そうだよね。こんな美人に囲まれた生活だと私の体なんて貧相だもんな。悲しっ。誰が貧相だ殺すぞ」
「脳内妄想してこっちに殺意向けんな!とばっちりが過ぎる!」
「ははは。女を敵に回すと怖いぞ〜。肝に銘じとけ〜」
アテナが部屋から出た後、アインズはポツリと呟いた。
「……んなもん、ぶくぶく茶釜さんとかやまいこさん見てたから嫌でもわかるっての」
ゴンッ!
「あだっ」
「で、どうやって出てきたのよ」
「その前に殴る必要あった?しかも硬度めっちゃある本で。つか何で出来てんのソレ」
「ええ。それとこの本の材料は私も知らない」
「知らんのかい。はぁ……パチェも横暴になったものだね」
「……」
「何でもありません。えーと、出た方法なんだけど、コレ」
私は指につけていた指輪をパチェに投げる。
「これ、『流れ星の指輪』?」
「もう使い切ったけどね」
「あ、そう。まさかコレで出てきたの?」
「使い切ったことに驚かないの?」
「貴女のものだからどうしようが勝手だもの」
驚きの表情がみれると思ったけど、残念だ。
「ふーん。100と数年前、私はコレを使って氷漬けになったのは覚えてる?」
「ええ」
「簡単な話さ。あの時私は、2度と出れないように、って思って残り回数1回の指輪を使った、つもりだった」
「でも間違って残り回数2回以上のものを使ったと?」
「正解」
「てことは氷の中にいたのに意識あったってこと?」
「正確に言うと意識を取り戻したのは数年前。パチェが話していた年から逆算して私が封印した年数を割り出した。でね、私の精神、結構な割合がもう『始原の精霊』になってるわけ。だから今更、外へ出ようとしたわけ」
「……あの人のことも、もうどうでもいいの?」
「まさか。アイツの事はずっとここにいるよ」
自分で作ったネックレスを見せながら言うとパチェは大きくため息をついた。
「貴女がいいならそれでいいわ。後スレイン法国についてだけど……」
「近いうちに私からお礼参りするさ。あの国の9割近くの人間を根絶やしにしてやったんだ。流石に2度目は嫌だろうからアイツら、何が何でも機嫌を取りに来るだろ。私はもう面倒な殺しをするつもりもないし。コレからはアイツの末裔を細々と守りながらずっとこの森でぐーたらするさ。
……私から質問なんだけど、森の賢王の一族増えてない?」
「まあ、そりゃ、ね。今は……3匹目かな?」
「そもそも100年ちょい経ってりゃ、そりゃ繁殖できてるか。子孫できならよかったよかった」
「あの子たち、『姫は我らが命にかけても守るでござる!』って言ってその為に力をつけたいからって私に修行もどきのこと頼んで来たからね」
「すごいねぇ、皆さんやる気旺盛で」