山を下りたら鉄を選んで、刀ができるまで育手の所で待っていて欲しいと言われた。その場所は鎹烏が覚えているから刀ができたらそこに鍛冶師が届けると。
だが、俺の所はその育手が鬼に殺されてしまっているので戻れない。そう伝えると、とりあえず近場の鬼殺隊の協力者である藤の家を紹介された。ちなみに師匠を殺した鬼をどうしたのかと聞かれたが殺しておいたと正直に答えた。まあ最終的に弟子は師を越えていくものだから仕方ない。
そういう訳で藤の家に厄介になっているんだが、何もしないままただ厄介になるのは気が引けるので鍛錬ついでに力仕事なんかの雑用をしている。刀ができるまでは暇だし、流石に正式に刀も隊服も渡されていない奴に任務が言い渡されることはないだろうからな。
要するに、やることはこれまでとそう変わらない。飯を食って働いて眠って、そしてそれらをしながら鍛錬もする。時間が空いたら刀を振って、型を今の自分の身体に合うように変えていく。
それに加えて今は俺の呼吸に合った型を作っていくこともしている。それぞれの呼吸には割と似たような結果に終わる型も多いし、最初のうちはそう難しいものでもない。実際斬り下し、斬り上げ、袈裟、刺突の四つは簡単にできた。そこに居合と突進技を加え、周囲一帯を斬る型と連撃の型を作り、攻撃ではなく防御や反撃、身を隠す技を作り……いつの間にか型の数が妙に多くなってしまったがまあ問題ないだろう。それに自分の呼吸の型を作ったとはいえこれまで通り基礎の五つの呼吸の型も使っていくつもりだしな。手札は一瞬で選べるという前提の元なら多い方が良い。
それから今回覚えた派生の呼吸の型も一応身につけようと思うが、どうもこれは俺の呼吸には組み込みにくいらしい。単品で使うなら問題なく使えそうだが、わざわざ単品で使う意味が無い。派生の呼吸は……あれだ、川の本流からさらに離れた支流の支流みたいな感じだ。よくわからないが感覚的には多分あってる。
使えないわけじゃないから一応できるようにはしておくが……って感じ。実際使うかは神のみぞ知る。
ただ、あくまでも実際に見た型しかわからないから普通に使えないのもあるだろう。呼吸の仕方から多分あいつが使ってたこの技はこの呼吸、って感じでの体系付けになるし、型の順番どころか呼吸の名前すらもわからない。まあ型の番号やら名前やらで困ったことは未だかつて一度も無いからどうだっていいけども。
そしてここで問題発生。俺が作った……と言うか、俺に合わせた呼吸を『星の呼吸』と呼ぶことにしているんだが、それに合った技の名前を考えるのが面倒臭い。正直雷の呼吸の型の名前とかを考えた奴って絶対頭いい上に教養がある。俺は頭の方は知らんが教養は殆ど無い。何しろ四歳か五歳かそのくらいな物で。頭の中によくわからない知識があると言ってもそれはあくまでも外付けの辞書みたいな物だと思っているのでなんと言うか辞書でも読んでいる気分だ。
まあそんな眉唾な知識でもそこそこ星っぽい感じの名前を引っ張ってこれたのでそれぞれの型にそれっぽい名前を付けていこうか。名前がついたとたんにどの技がどの名前か忘れるとかになったら困るが、今までは人の名前は覚えられずとも型の名前や場所の名前は覚えられたから多分大丈夫だろうとも思っている。
……と言うか、戦闘中に態々技の名前を叫んだりはしないだろうし、俺に分かるように名前を付ければそれでいいような気もする。そしてその場合どれほど安直だろうと突っ込みを入れるような物は現れないだろうし、いいか。
そう決めると後は早い。そもそも星の呼吸というのも俺の呼吸に適当に名前を付けただけだし、星の呼吸という割に他の呼吸の型も普通に使えるし、だったらもう態々星に纏わる物でなくともいい気がしてきた。居合なら居合でいいし一呼吸で千回斬る技なら千斬とかそんな名前でいいだろもう。面倒だし。
よし決定、後はその場で思いついたら適当な名前を付けるかあるいは態々型として落とし込むようなこともしない単なる技としておくか。
なんか、もう星の呼吸は型のない呼吸とかそんな適当なことを言っておけばいい気がしてきた。型は存在しないがその代わりにただの一振りがそれぞれ他の呼吸における型と同じような威力を持つとか、そんな感じの事を適当に言っておけばいいだろ多分。基礎的な剣技でも呼吸を修めた状態でやれば相当な威力になることは確認済みだし、基礎ってのはどこまで行っても役に立つから基礎って言うんだしな。応用するにも基礎が必要。基礎の全く存在しない建物は脆く崩れ落ちるは定めだが、基礎さえしっかりしていれば建物が崩れ落ちるまでの時間をかなり長くできることは間違いない。剣術における基礎の基礎は体力と健康、基礎は刀の振りに流されないようにする体幹や重心移動って所かね? それ以外にも色々ありそうだけど、とりあえず剣を振ることができる身体を持っているってのは最低条件としているから基礎の基礎にすら入っていない。
……剣を振るってのは面倒臭いもんだ。こんなものが必要なじゃなくなる日が来ればいいんだが、まあ難しいだろうな。人間が生物である限り……一部は生物じゃなくなってもそうかもしれないが、複数の存在があれば何らかの形で衝突は起こるもんだ。致し方ない。
次回作
-
魔王城でおやすみ
-
鋼の錬金術師
-
なんか適当に止まってるの
-
なんか適当にハマってるの