鬼滅の刃~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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鬼滅11

 

 三日ほど任務をこなして二日ぐだぐだして、また三日任務をしたら二日ぐだぐだして、と言う生活を続けることおよそ一月。鬼殺隊の当主の家が次の任務の場所への通り道のすぐ近くにあるそうなので寄っていくことにした。ちなみにこなした任務の数は合計で大体50ほど。多い時と少ない時の差があったせいで平均的な数字はあまり多くはない。この周辺の鬼は殆ど狩り尽くしてしまったようで、鬼自体が減ってきているとすら言われているからな。

 結果、柱にならないかと誘われてしまった。じっと俺を見つめてきていたので俺もじっと見つめ返すと、なんとなく考えていることが分かった気がする。

 

 絶対に俺を逃がせない。絶対に俺を手放したくない。けれど敵対するくらいなら手放すのも仕方ない。けれど可能な限り鬼殺隊のために働いてほしい。大体そんな感じだ。

 それと同時に、鬼の頭に対しての憎悪と殺意、絶対に殺さなければいけないという使命感とそれが果たされていないと言う事実に対しての焦燥、自分の力でそれを成すことができないと言う悲哀と自身の身体が強くないことに対しての憤り、自分以外の存在に対して鬼を殺すことを任せてしまうことへの罪悪感……そして自分の内心がどのくらいまで読まれたのかと言う理解と、その理解すらも俺に何となく読み取られていると言う理解。

 それと同時に俺の事も読み取られている。俺より六つか七つか上でしかない、とても大人とは言えないはずの少年が、俺に観察されていることを理解してそれでもなお俺の性格をなんとなく理解して俺の事を観察し続けている。そしてその観察の結果を俺がなんとなく理解していることも理解しているらしい。

 お互いにお互いの事をなんとなくで理解し合った者同士ということで、俺は俺で足を崩させてもらうことにした。それに対して何も言うことは無いし、元々言う気は欠片も無いようだった。

 

「挨拶が遅れてすまないね。初めまして。私は産屋敷晃羅哉(あらや)。好きなように呼んでおくれ」

「すまんが誰かの名前を覚えるのは苦手でな。俺自身の名前すら覚えてないもんで。それこそ佐々笹木(ささささき)樹希咲(ききさき)でも(にのまえ)(はじめ)でも寿限無でも、好きに呼んでくれ」

「おや、結構いい所の出なのかな?」

「いいや? ただなんでか知ってるだけだ」

 

 お互いの言いたいことが分かっていると話が速い。冗談を一々冗談だと言う必要もなければ相手が冗談を冗談と受け取っていないことを心配する必要もない。それに声がいい。寝れる。

 

「眠りたいのなら布団を用意させるけど、できれば話を終わらせてからにしてくれると嬉しいかな」

「柱?」

「いいかな?」

「星な」

「いいとも」

「山と屋敷」

「用意してあるよ」

「上弦狩ってたらしい」

「……成程、わかった」

「いらない」

「残念。まあ嫌われたくないからよしておこう。布団と……夕餉は?」

「朝餉なら」

「うん、それじゃあゆっくりしていってね」

「何処?」

「あまぎ」

「こちらです。どうぞ」

 

 話が大分速くて助かる。俺はお館の嫁だと思われる女性に布団の敷かれている部屋にまで連れて行ってもらった。隊服を脱いで楽な服に着替え終わるまで文字通りの意味で刹那、俺は敷かれていた布団に潜り込んだ。ちゃんと着替えも用意してあるから問題ない。御館の(多分)嫁さんは何か慌てていたようだったが、とりあえずお休みと言っておいたのでまあ大丈夫だろう。知らんが。

 

 

 

 

 

「……そうか、ありがとう、あまぎ」

「いえ」

 

 少なくともあまぎのわかる範囲で彼は気分を害してはいなかったようだ。寝ると言ってすぐに布団が用意されていた事と、彼が布団に入ってから一切話しかけなかった事がよかったのだろうか。彼の考え方はわかりやすいがわかりにくい。求めるところがわかってしまえば簡単なのだけれど、それを理解するのが難しい。それに理解したとしても他の者からすれば『そんなこと』と言う扱いを受けてしまいそうなことだ。

 けれど、そういう対応をされれば彼はその対応をした者を斬り捨てるだろう。流石に物理で斬り捨てたりはしないだろうけれど、困っている時に手助けをしなかったり助けられる時に助けなかったりするだろう。そしてそういったことに一切の躊躇も後悔も抱くことはない。ある種、鬼舞辻無惨よりも情が無い。無惨と違うのは自身が敵だと認識した相手に限るということだけれど、無惨はもしかすると自分の意に沿わない鬼は使えないから敵だと思っているかもしれないね。

 

「あまぎ。彼の事は何があっても敵に回してはならないよ。例えそれで私が死んでしまうことになったとしても、だ」

「……そこまでするほどの者なのですか?」

「私はそう思っている。今の鬼殺隊の全戦力……柱を始めとする隊員の他に育手や隠の全てを動員したとしても、彼と言う個人の戦力を上回ることはあり得ないとすら思っている」

 

 あまぎは驚愕を目に浮かべ、けれど私を信じてくれた。産屋敷の直感ばかりでなく、しっかりと私の言葉だからこそ信じてくれたのだとわかる。

 

「きっと彼は鬼舞辻無惨を殺してみせるだろう。ただ、それはきっと私の代ではないね……けれど、孫の代になる前に鬼殺隊の本懐は遂げられる。そんな気がするんだ」

 

 晃羅哉は空を見上げながら、囁くように呟いた。

 

次回作

  • 魔王城でおやすみ
  • 鋼の錬金術師
  • なんか適当に止まってるの
  • なんか適当にハマってるの
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