新しい刀ができてから一月ほど鬼狩りを続けていたら、突然目の前に襖が現れて初見の鬼がそこから出てきた。
黒い髪に和装、そして目が六つあり、真ん中の目には上弦の壱である証の文字が刻まれていた。
「……烏。離れとけ」
「ワカッタァー!」
「応援は呼ばんでいい。戦い方が見える範囲で飛んで、俺が死んだら即座に情報を持ち帰れ」
烏を放し、その烏を狙った男の刀を斬り落とす。しかしその刀はどうやら男によって作られたものであるらしく、すぐに再生してしまう。
「…見事」
「そいつはどうも。あー……上弦の壱、でいいのかね?」
「…そうなる。…名は、黒死牟」
「これはこれはご丁寧に。名乗ってもらって悪いんだが、俺は名前の持ち合わせが無くてな。まあ適当に継國でも縁壱でも巌勝でも好きに呼べ」
「――――――貴様、何を知っている?」
「知らんよ。なーんも知らん。ただこういう時に出す名前はその時に浮かんだものを適当に上げてるだけだから、もしかしたらどっかで聞いたのか、あるいは今適当に作った可能性もあるな?」
首に向けて振るわれる刀を同じように打ち払う。三日月のような細かい刃が飛び散るが、斬撃と同じ方向にしか存在しないのであればそこまで恐れるような物ではない。
月の呼吸・壱ノ型 闇月・宵の宮
風水・
小さな月の形の刃と渦巻く風の刃がお互いに削りあい、本命の刀同士が打ち合わされる。この一手で水の呼吸と風の呼吸の型を同時に使っているということは恐らく察されただろう。相手の使う技からして、まず間違いなく相手も呼吸の剣士であり、柱になっていても何らおかしい所のないほどの実力者だ。
……まあ、あくまでも鬼になってからどれだけ時間が過ぎているかもわからない今の事なので、元の実力がどんなものかは知らないが。
月の呼吸・伍ノ型 月魄災禍
雷風・
刀を振らずに斬撃を放つ、そういう技があるのか。便利だな。
俺の場合は殺気と威圧とを組み合わせて想像力で相手を攻撃したように思いこませて相手の身体に傷を付けさせる、くらいしか想像できない。だが恐らくあれは少し違う。
俺達が刀を振った際に出る幻影、あれそのものに攻撃能力を持たせるのは呼吸を十分以上に極めていればできなくはない。しかし刀を振らずに幻影のみを出してそれに攻撃させるとなると今までやってきたのとはまた別の技術が必要になるな。
炎雷・
月の呼吸・陸ノ型 常夜弧月・無間
広範囲に広がる五撃を数多くの月を纏う斬撃がすり抜けるように斬り捨てていく。しかし五つの壁のように放たれたこちらの攻撃全てを突破できずに減衰して消えていく。
月の呼吸・玖ノ型 降り月・連面
炎岩・
上から降り注ぐ斬撃を、炎の虎の振り回す爪で迎撃しながら身を守る。ついさっき見た刀を振らずに斬撃を放つ方法でやってみたが、案外行けるものだ。
月の呼吸・拾ノ型 穿面斬・籮月
水岩・瓦輪滝壺
輪状の手裏剣のような巨大斬撃を上からの打撃で砕き落とす。ついさっき学んだばかりのこの技だがかなり使い勝手がいい。故に次だ。
岩炎雷・気炎成雷・蛇紋
下から上への斬撃を、一つの刃から二つ同時に放つ。更に幻影は形が無いまま二つの重打撃を与えんと飛来し、下方から首を毟り取らんとする斬撃を追いかけるように上弦の壱の首へと向かう。
月の呼吸・拾陸ノ型 月虹・片割れ月
しかしその幻影は躱され、斬撃も上からの攻撃で相殺される。
「……素晴らしい」
「そう? そいつはどうも」
「五つの呼吸を使いこなし、それどころか組み合わせて全く新しい型を振るう。二つどころか三つ、四つと重ねられるとなれば、それこそその技の数は無数と言えよう」
「流暢に話すようになったな。さっきまで寝てたのか?」
「そのようなものだ。私の命に届きえぬ存在ばかりでは、集中する必要もない」
「そうかい。……いや、なるほど。おまえさんなんかまともじゃない感じに見えてるな? さっきから不意打ちしかけようとする度に対応する準備ができてるようだし?」
「ほう……わかるか」
「まあ一応。それが勘なのか気配なのかそれともただ察してるだけなのかはまだわからんが、それでも一つわかることがある」
「あんた、何がそんな怖いんだ?」
言葉より早く斬撃が放たれる。放たれた斬撃を斬り落とす。
「怖いんだろう? 何が怖い?」
より鋭い斬撃が放たれる。放たれた斬撃を斬り落とす。
「死ぬことが怖いか? 老いることが怖かったか? 負けることが怖かったか?」
更に鋭く、数も増えた斬撃が放たれる。放たれた斬撃を斬り落とす。
「違うのか? なら―――よくもまあそんな醜い姿になってまで、生き恥を晒していられるものだ。……侍の姿か? それが」
月の呼吸・拾肆ノ型 兇変・天満繊月
日・灼骨炎陽
無数の斬撃が放たれる。一太刀にして斬り落とす。
刀が赫く染まる。上弦の壱の警戒心が一気に跳ね上がったのを感じ取る。
なるほど、恐れていたのはこの呼吸か、あるいはこの刀か……もしかしたら、この呼吸と刀を使って上弦の壱を追い詰めた者がかつて居たのかもしれない。だからこそ恐れているのか?
新たに襖が現れて、そこからいくつもの姿が現れる。
「やあやあ黒死牟殿、これはいったいどういう状況かな?」
血を被ったような白髪の男。その瞳には上弦の弐と刻まれているのがわかる。奇妙な、見ているだけで嫌悪感を催す虹の瞳。伽藍洞に鍍金をしたような、奇妙な感覚に襲われる。
「五月蠅いぞ、童磨。この状況ならば考えずともわかるだろう」
桃色の髪に多数の入れ墨の鬼。瞳の文字からして上弦の参。見た限りだが凄まじい体術の使い手。
「ヒョヒョヒョ……生き残った上弦がこうして集められ、そこに鬼殺隊がいるのであれば……殺すしかないのでは?」
……うん、何とも表現しづらい奇妙な壺に入った鬼。目の位置に口、口の位置と額に眼……気色の悪い見た目をしている。
上弦の鬼が四体。なんとも厄介なことになった。
俺は刀を握り直す。まずは、数を減らすところから始めようか。
次回作
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魔王城でおやすみ
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鋼の錬金術師
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なんか適当に止まってるの
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なんか適当にハマってるの