目が覚めて、軽く移動して、丸一日休んだ。それから仕事をして、流石に刀に無理をさせすぎた気がしないでもないので刀鍛冶の里にお邪魔して上弦四体狩ってきたから手入れよろしくと預け、御館の待つ本拠地に移動した。
「やあ。呼び出してしまってすまないね」
「いいよ別に。暇だったし」
「暇を作らせてしまっただろう?」
「いいって」
出された茶を啜りつつ、御館の顔を眺める。今はまだ何も表面に現れてはいないが、内側から少しずつ冒されているのだろう。視線がやや外れることがあるし、逆に視線が外れるべき所で外れないこともある。
「……一旦、柱を外れたい」
「いいや、柱のままでいいよ。認める」
「最低でも二十年だぞ。長けりゃもっとだ」
「構わないよ。君はそれだけの事をしてみせた」
話が早い。この察しの良さが恐ろしいと言われることもあるそうだが、俺としてはただひたすらにありがたい。
最低二十年。それだけの間俺が一切表に出なければ、鬼の首魁も恐らく警戒を緩めて表に出てくるだろう。ただでさえ人間を定期的に食わなければならないのだから、どう頑張っても人間社会から離れられないのが鬼という存在だ。人間に寄生した寄生虫のようだな。ただしその寄生虫は人間を食い潰して滅ぼすことも厭わないと言う頭のおかしい寄生虫だが。
そんな頭のおかしい寄生虫だが、驚くべきことに相当の慎重派だ。慎重という言葉を通り越してもはや臆病とすら言えるほどに。
だからこそ、俺が生きている間は表に出ることは無いだろう。人間を食うには例の空間を扱う血鬼術で適当なところから拐ってくればいいし、俺と出会う可能性をほんの僅かにでも減らすためにそこから出ようとしないはず。それは当然鬼の総数の減少にも繋がるだろう。
最低でも二十年と言うのは、俺を痣者だと思っていれば20年少々で死ぬだろうと予測して出てくる可能性を考えてのこと。実際には俺は痣者では無いし、痣を見せてもいないがそう考える可能性もなくは無い。だからこその二十年。
そして二十年ほどでもしも鬼の被害が増え始めたら、鬼の頭領が活動を再開したと言うことになる。そしたら追っかけて殺せばいいし、もしかするとそれ以外になんらかの形でうまいこと解決する方法ができる可能性もある。あくまで可能性だし、あまり期待しないが。
何しろ相手は閉鎖空間を作ってそこに引きこもっているのだ。それをなんとかしなければならないとなると、空間に対して作用する技術が必要になってくるわけだ。そんな技術は今の俺には無い。
〜一夏干渉中〜 〜情報開示・呪術基礎〜
……無いこともないが手間がかかりすぎる。空間の中に入るために中にいる何者かに繋がるものを手に入れなければならないし、空間そのものを破るにしても出入り口が一度でも繋がったことがある場所を見つけなければ―――
「……」←直感的に取っておいた鬼舞辻無惨の血がめっちゃ濃い鬼の血液を持っている男。
「……」←その鬼が逃げようとした時にその空間が開いた場所を覚えている男。
「……どうかしたかい?」
「……いや、もしかしたらお前が生きている間に何とかなる可能性が見えた気がしたが気のせいだった」
あいつの名前を憶えていれば直接そいつのいる場所に繋げることもできるだろうし、術者の名前が分かれば空間を操っている術を乗っ取ることもできるんだろうが、どっちもわからないし憶えられないから無理だわ。
だがまあ多分鬼には例外なく鬼の首魁の血が混じっているのであれば、それを使って鬼を寄せるあるいは避ける術も使えそうな気がする。暇があったらやってみるのもいいかもな。見立てと感応による呪術は結構初歩だし、多分今の俺でも使えるだろ。難しい手順は踏まないようにするつもりだし。
……呪術だのなんだのってのは最近じゃ少しずつ信じられなくなってきているらしい。そうなると多くの精霊のような存在や、信仰を得ていたからこそ存在できた神格はどんどん零落していく事だろう。その中にはきっと鬼殺隊が狩っているような鬼ではない、生まれながらの純粋な鬼なんかもきっといる。悲しい事ではあるがこれもまた人の世の習いって奴なんだろうな。十にも届かないようなガキが何言ってんだと言う話でもあるが。
「……才能がある奴がいたら、俺の所に寄こしていいぞ」
「おや、育手の真似事かな?」
「実にその通り。真似事さ。俺にできることは限られてるし、本当に必要なことだけは教えられないだろうが……小手先の技くらいは教えてやれる」
「ふふ……そうだね、覚えておくよ」
俺は立ち上がり、その場を去る。知らなかったはずの事を知った今、できることを考え直すべきだろう。今の俺でどこまでできるのか、今の俺がどんなことまでならできるのか……苦労するよりは楽しもう。その方が得る物は多いはずだ。
多分なんですが、無惨って兄上が縁壱に殺されかけた事知らないんじゃないかと思うんですよね。
なんでかと言うとあの笛。無惨の性格的に兄上があの笛持ってたら絶対壊して捨てさせるはずですし、それをさせていない以上は多分知らないなと。
つまり、縁壱ですら痣者の寿命である25までで死んでると思っててもおかしくはないと考えます。
まさか痣の無い奴が上弦皆殺しにしたとは思うめえ。
次回作
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魔王城でおやすみ
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鋼の錬金術師
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なんか適当に止まってるの
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なんか適当にハマってるの