鬼滅の刃~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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鬼滅18.5

 

 鬼舞辻無惨は震えていた。常の尊大な態度は鳴りを潜め、鳴女の血鬼術である無限城の中でガタガタと震え続けていた。

 

 鬼舞辻無惨は産屋敷の親戚である。故に、鬼舞辻無惨にも産屋敷一族のそれと同じ直感が備わっていた。しかし無惨の無惨たる所以として、直感などと言う何の保証もないものを無惨は信じてこなかった。そのため無惨の直感は今まで何の働きもせず、眠り続けていた。

 だが今、眠り続けていたはずの無惨の直感は冴え渡っていた。あらゆる行動が直感によって事前に知らされ、全てがその通りになる。それは無惨が黒死牟を黒刀の鬼狩りに差し向け、黒死牟がその鬼狩りの顔を見た時から起きていたことだった。

 

 何もしていなければ黒死牟は遊ばれ、死んでいた。

 他の上弦たちを送り込めば、上弦全てが壊滅した。

 しかしそれでもあの場で黒刀の鬼狩りを殺さねば、次に死すのは自分であると確信させられていた。

 

 無惨が直感によって見せられた上弦の死に様は、黒死牟の視界を通して見た死に様と全く変わらないものだった。黒刀の鬼狩りが使う技も、全て無惨には事前に理解できていた。

 そしてその技がいずれ自身の命に届き、太陽に当たってもいないのに死ぬのだと直感によって理解させられていた。

 

 死から逃れるために上弦を全て使い潰してでも殺そうとして、しかし失敗し、今は無限城に引き籠っている。鳴女には鬼であろうと人間であろうと絶対に無限城に入れるなと命じていたが、このままでは間違いなく飢える。自身も、鳴女も。

 鳴女が飢えて死ねば、自身を隠す無限城を保つ術が無くなる。しかし不用意に人間を攫おうとして、そこに偶然黒刀の鬼狩りが居合わせて侵入してきたらそれこそ絶望だ。

 自身が外に出ない以上鬼は増やせない。しかし鬼の視界で黒刀の鬼狩りを視認している間にその場から離れた所から人間を攫うと言う方法でなければ安心して入口を開けない。

 

 鬼舞辻無惨は詰んでいた。実力で言えば縁壱の方が恐らく上だろう。あの化物ならば上弦を全て相手にしたところで苦戦することなどなかったはずだ。童磨の首を落とそうとした一度目をしくじることなどなかっただろう。

 だが、こと逃亡阻害という点においては間違いなく縁壱を超える。黒死牟の広域攻撃に、日の呼吸の如き連携、更には届くはずのない場所への攻撃を行う技。とても逃げ切ることなど出来はしない。

 

 殺されることは既に必定。あれほどの力を持つものがなぜ自分を執拗に狙うのかを全く理解できないまま、無惨は震え続けた。

 

 無惨は無駄なことをすることを愚かだと認識している。自身を殺すことができるほどの実力も無いのに自身を殺すためと嘯いて刀を振るう鬼殺隊も、鬼になれば死なずに済むと言うのに鬼になろうとしない者も、全く理解ができない。そして自身の行動が全て正しいことだと心の底から認識しているがゆえに、そう言った存在の全てを異常者だと認識していた。

 しかし、今ここに自身の命に十分届く存在がおり、その存在が自身の命を狙っていると知ってしまった。

 戦闘能力の高い上弦たちは全て斃され、残っているのは十把一絡げの雑魚鬼と何度も倒されている下弦の鬼ばかり。使い方など精々囮と安全確認のための駒程度にしか使い道のないそれが、黒刀の鬼狩りをどうにかできると考えるほど無惨の頭は無惨ではなかった。いや無惨だが。

 具体的にどう無惨かといえば、自身もできないことを他人には要求しているくせにそのための方法も自身の状態も何も伝えず更には伝えておけばワンチャン逃げることはできたかもしれない情報を一切伝えずにただ一方的に『黒い刀の鬼狩りを殺せ』とだけ命じるクズさ。まさに無惨であった。

 その上それで失敗すると『やはり使えない、期待などしていなかったが所詮は使い捨ての屑鬼か、私の血を分けてやったにもかかわらずこの程度の事すらできないとは恥さらしめ』というようなことを当然のように口にする。やはり頭無惨。どこまで行っても頭無惨。

 

 そして今日も鬼舞辻無惨は震え続ける。無駄に時間を浪費しながら。

 

次回作

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  • 鋼の錬金術師
  • なんか適当に止まってるの
  • なんか適当にハマってるの
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