鬼滅の刃~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

25 / 36
主人公が戻ってくるまでの幕間劇
鬼滅22 another1 怨敵の不幸で飯が美味い産屋敷93代当主


 

 星柱による上弦虐殺から十年。鬼によって起きたと思われる事件は非常に減ってきている。恐らく新しい鬼が作られなくなっているのだろう。彼はそれだけの恐怖を鬼舞辻無惨に与えたということだ。その時の鬼舞辻の心境を察すると飯が美味い。最近呪いのせいか胃腸が弱ってきていて固形物を噛むだけで辛いけれど鬼舞辻の恐怖を想うだけで食事が進んで仕方ない。医者ですら今の状態でこうして食事を自力で取れていることが既に奇跡だと言うくらいだが、本当に食事だけは美味しい。子供たちにも呆れられてしまうくらいだけれど……自分の寿命くらいはわかっている。

 今は周りにいる波紋使いの隠達が特殊な陣を敷くことでほんの僅かだけ波紋を張り巡らせて常に呪いの進行を遅らせてくれているけれど、それでも徐々に呪いは進行している。むしろ徐々に進行するくらいの弱い弱い波紋だからこそ呪いの進行を遅らせながら波紋の影響下から出ても急速に呪いが強くなるようなこともないのだけれど。

 それと、波紋使いの隠達の手で波紋食材が少量だけど作られている。これにも身体を活性化させる効能があるようで、これのおかげで単純に動きにくくなった身体でもなんとか動いていられる。

 

 星柱の住んでいたあの屋敷の周辺には既に波紋が浸透している。まるで常に日が差す陽光山のような場所となり、波紋使いの育成の場になっている。たった数年でこんな場を作れるほどの波紋使いは現状では彼しかいない。その彼がこの時代を離れている以上はこの場所は徐々に衰退していくだろうけれど、波紋使いがそこで生活して波紋を追加していけばその流れも穏やかになるはずだ。

 問題は、全集中の呼吸を覚えた子供達は波紋の呼吸を覚えにくくなるけれど覚えられなくはなく、逆に波紋の呼吸を覚えてしまうと全集中の呼吸はほぼ覚えられなくなってしまうと言う不思議な状態のこと。

 波紋の呼吸はその特殊な呼吸法によって太陽の光と同じ振動を起こしているらしい。それが確立した後に全集中の呼吸を覚えると、心臓の拍動やそれぞれの呼吸によって起きる肺や気道の風鳴りのような音の振動で波紋が崩れてしまうのだと想定されていた。

 ならば星柱の彼がどのようにして波紋と全集中を同時に使っていたのかと言えば、全集中によって変わった呼吸を基礎としてそこから波紋を起こす呼吸を作り出すことができれば使えるだろうと。

 本人は初めから混ぜた形で使っていたらしいので確信はできていないようだし、波紋の呼吸を覚えてから全集中の呼吸を覚えると波紋の呼吸が崩れて無駄になるからやらない方がいいと言うだけでもしかしたらもう一度覚えることができるかもしれないからね。まあ二年程度では一度波紋の呼吸を覚えてから全集中の呼吸を覚えてもう一度波紋の呼吸を覚えなおすような時間が無かったから『一回目の波紋の習得に使った時間が無駄になるからやめた方が良い』くらいの認識だしね。

 

 それにしたってご飯が美味しい。鬼舞辻の窮状でご飯が美味しい!

 

「御館様……あの、質問があるのですが」

「なんだい? 洸途哉(ことや)

「数日前から食事が異様に美味しいのですがこれは一体……?」

「ああ、それか。私達には先見の明が備わっているだろう?」

「はい」

「鬼舞辻は今追い詰められているだろう?」

「そう聞いております」

「先見の明はある時不意に発現すると教えたね?」

「はい」

「そう言うことだよ」

 

 つまり、鬼舞辻無惨が不幸であることを直感で察知すると、嫌いな相手の不幸で食事が美味しい。私達の場合は先見の明と呼ばれる直感のおかげで鬼舞辻が不幸だと思っていたり不幸だと思っていなくとも実際に追い詰められていたりすると食事が美味しくなるんだろうね。

 他人の不幸で食事が美味しいと言う言葉を実感できる日が来るとは思わなかったよね。

 

「なるほど……つまり食事が美味しいうちは鬼舞辻は追い詰められていて動きが鈍いと考えて良い、と?」

「多分そうだね」

 

 恐らくだけれど、始まりの呼吸の剣士と呼ばれた彼の時代のご先祖様も食事がとても美味しかったんじゃないかな? なんとなくそんな気がする。聞いた話ではその頃に一度鬼殺隊の本拠地が襲撃を受けていたようだからただただ美味しかったわけではないだろうけれど。

 

 これもまた彼のおかげと言っていい。そして恐らくこの状態が続くのは、あと十年ほど。鬼舞辻が彼を痣者と仮定していた場合の、およその彼の寿命のあたりだろう。そのくらいまでは今のような鬼の被害が極端に減った状態が続き、しかしその後は激増するだろう。鬼舞辻はあれで頭自体は悪くないから面倒なんだ。逃げに徹して自分が安全だと思えるようになるまでいつまででも逃げ続けるからね。

 

 ああそれにしてもご飯が美味しい!死ぬまでにこんなにおいしいご飯が食べられるとは思わなかったよ!

 ただ、この美味しいご飯ももうすぐ食べ納めと思うと少し悲しい。洸途哉に先見の明が現れたということは、つまりそう言うことだから。

 

次回作

  • 魔王城でおやすみ
  • 鋼の錬金術師
  • なんか適当に止まってるの
  • なんか適当にハマってるの
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。