鬼滅30
鬼殺隊が無くなってから、俺はちょっとおかしなことになっている。
今まで以上に勘が働くようになったし、身体も頑丈になった。これについては多分現役の頃のように何日か徹夜して鬼を殺して何日か休む、なんていう無茶な行動をしなくなって健康的な生活に戻したからだろうし、それはいい。問題だと思っているのは勘の方だ。
まるで御館の一族のように直感が働くようになった。今日の夕飯はどんなものだとか、じゃんけんで相手が出そうとしている手が何かと言ったかなりどうでもいい物から、ちょっとした命にかかわるものまで様々な物がなんとなくわかるようになった。多分呪術と波紋の応用で周りの状況を読み取ることで何となくその先を想像しているんだろうが、これがまあ便利なこと。
それと、今の御館から言われた通りのんびりとしているんだが、何故か御館の娘さんの二人が俺にかいがいしく尽くしてくれている。良家のお嬢様だろうに使用人のようなことをする事を厭わないってのはなんでなんだろうな?
まあ俺は尽くされたら無理のない範囲で返す方なのでそれなりの仕事もしている。波紋を使った動植物の生産だが、これがなかなか上手くいっている。食べることで波紋を体内に取り入れる形になるので、ある程度の長寿化が見込める。ついでに言うと俺の傍で生活している奴も同じような効果があるだろう。できるだけ無駄な影響を与えないようにはしているが、それでも全体に散らす使い方をしている以上はどうしても範囲内に居る相手には影響を与えてしまう。
波紋で動物を操ることもできるので、猪なんかの家畜化には困らない。家畜になった猪に畑を耕してもらい、作った井戸から波紋で水を直接持ち上げて畑に撒き、種を混ぜて波紋で一気に育てる。養分は地中の微生物を波紋で活性化させて枯葉や灰などを土に混ぜて補っている。それでも即座に何とかなるわけではないので、月に一度くらいの頻度で収穫している。
……今更だが、外見の年齢だけなら俺と御館の娘さんはお似合いってことになるのか。俺が一応十、娘さん方が九つ。だから御館も俺に渡そうとしてるのかね? 知らんが。
ぼんやりと縁側で太陽に当たりながら庭を眺めていると、お嬢さん方が後ろに控えるようにそこにいる。常に行っている波紋の効果でこの家にいる間は冷え性やら肩こりやらとは無縁なのでそこまで気にはしていないが、座布団くらいは使った方が良いんじゃね?
そう思うと、突然どこかから座布団が現れる。これも最近起きるようになった変化だ。これに関しては何がどうなっているのかわからないが、恐らく前に鉋が出てきたのと同じような感じだろう。そもそも俺はあの鉋がどこからどうやって出てきたのかもあの後どこに消えたのかもわかっていないしな。
ともかく使える物は使う。俺は自分がぼんやりするのに苦痛を感じない方だし、波紋の呼吸をしていると二三日くらい食事をしていなくても問題なく活動できるようになるからひたすらぼんやりできるんだよな。寝るのも好きだぞ。今までは夜に寝てると鬼が出てきて安心できないからあまり長く寝ることは無かったけども。
あと変わったことといえば、名前を貰った。なくても構わないと思ってたんだが、雇うにあたってあった方が便利だと言うことで俺が鬼殺隊に入った当初の御館の名前を貰って「
ただ、名前についてはまだ覚えられていない。俺の名前も、妻という事になった御館の娘さん方の名前も。元々の名前は忘れたし、一応調べた結果として恐らくこれだと思われる物が出てきてはいるが……今まで呼ばれていた「星柱」の方が慣れているし、基本的にはそれで呼ばれそうな気もする。
ちなみに新しく名前をつけられるにあたって戸籍も作られた。何故か年齢だけは正確に俺の生まれた歳になっていて、40年ほど時間を超えていることなんて想定されていないので完全に俺が幼女趣味のように見えてしまう。実年齢は大して変わらないのにな。
そう言えば、鬼だった医者。一緒に居た生意気な小僧共々既に鬼ではなくなったらしい。鬼から人間になり、解散した鬼殺隊の医療機関だったところで働いているらしい。確か頚を斬れるほどの力がなかったせいで隊士になり損なったが波紋を覚えて鬼を殺したり傷の治療をしていた奴がそこに居たとか聞いたな。今度会いに行ってみるのも悪くない。俺からするとなかなか会う機会のない俺より長く生きたことが確実な相手と、波紋を恐らく最も実践的に扱う者。一番強力な波紋使いは御館の近くで常に波紋を使って身体を支えていた筈だから、恐らく全集中と波紋を使い分けていたんだろうな。
……自分の名前だけでも覚えてからにしようか。名乗りも上げられないってのは、情けないしな。
次回作
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魔王城でおやすみ
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鋼の錬金術師
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なんか適当に止まってるの
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なんか適当にハマってるの