鬼滅の刃~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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鬼滅31

 

 名前覚えるのに十年かかったわ。一応妻って事になってる娘さん達(達、だ)の名前を覚えるのも並行してやってたから仕方無し。

 ちなみにこの十年で「波紋豚」と「波紋牛」「波紋鶏」がブランドとして確立した。別の場所では「波紋麦」と「波紋米」ができてるらしいが……多分誰かが作ってるんだろ。

 俺の身体の方は、加齢だけでなく成長の方もほぼ止まっている。それは娘さん達の方も同じで、見た目は出会った頃のあれと変わらない。中身は大人と言っていいと思うがな。

 

 そういうわけなので久方振りに外出する事にした。まずは一応雇われてる事になっている産屋敷の本家から。流石にもう日輪刀は持てないので刀は置いていくが、代わりに波紋で異常成長した藤の木から作った木刀を隠して持っていく。これで外からはまるで見えない筈だが、便利だよな、暗器術。

 で、強盗やら何やらは来ないとは思うが一応式神を使った分身を家に残し、娘さん達を連れて出発。武器を持たずとも月魄災禍。空間を斬って移動できるのはとても楽。

 そして産屋敷の庭先に出てみれば、俺がそこに出てくるのが分かっていたかのように茶会の準備がされていた。

 

「やあ。そろそろだと思っていたよ」

「相変わらず直感が凄いな」

 

 二人を降ろして用意されていた座布団に座る。降ろした二人も俺の斜め後ろに置かれていた座布団に座ると、のんびりとした茶会のようなものが始まった。

 ……こっちを見ているのが一人。この時代に暗殺稼業を主体とする忍がまだ居るのか。忍の殆どは姿を変えて市井に溶け込み暮らしているそうだが……珍しい。

 

「彼は宇髄天元。鬼殺隊では音柱だったんだよ」

「左様で。あの体格じゃ目立つだろうによく忍なんぞやってこれたもんだ」

「腕がいいからね」

 

 渡された茶碗には茶が入っている。生憎と茶道なんて物にはとんと触れてこなかったので、まあとりあえず味わう事にする。

 ……美味いな。点て慣れてる訳じゃなさそうだが、付け焼き刃というわけでもなさそうだ。ここ一年か二年で始めた趣味のようなものだろうか。

 

「輝利哉に代替わりしたのがその頃でね」

「波紋茶でも作ろうか? 点ててくれ」

「構わないよ。ただ、慣れは欲しいね」

「了解。あの頃に比べりゃ時間はあるからな」

 

 後ろの二人に茶碗を渡す。量からして多分三人分だろ。知らんけど。

 あと、多分あの茶碗高価い。別に欲しくはないけど相当の値がつくだろう。気軽に触っていい類のものではない気がするが、使わないものに価値はない、とか言いそうな気もする。個人的には存在する事そのものに価値があるものってのがあるとは思うが、そういうのは結構な特殊例だからな。抑止力とかそんな風に使われることが多い。

 ある意味じゃ俺もその一つか? 存在している事に意味がある、ってのは。

 

「そうだね。君がこうして来てくれるのは久し振りだけれど、できればもう少し遊びに来てくれるとちょびっと安心できるかな」

「気が向いたらな」

「勿論。……挨拶していくかい? 会うのは初めてだろう?」

「面倒だ」

「ふふふ……君は私が死んだらずっと引きこもりそうな気がするよ」

「可能性は高そうだ。だからか?」

「うん。君はきっとなんでもやってのけるだろうから」

 

 そこまでなんでもできるわけじゃないんだけどな、俺も。できることと言えば結局は殺すことばかりだし。次代に引き継ぎさせようとしてるのかもしれないが、ちゃんと引き継ぎになるかどうかは状況次第なんだよな。

 

「ふふ……本家が星柱様を切り捨てても、私達はずっと一緒におりますよ」

「命を救われ、代々の悲願を叶えて頂きました。私達が生きている間は、星柱様に生活面での苦労はさせませぬ」

「切り捨てることがあったとしても五代やそこらじゃなく、百代くらい先になりそうな気もするけどね。勘だけれど」

「高く買ってもらっているようでありがたいことこの上ないね」

 

 ……こいつら、そういう系統の話になると目が死ぬんだよな。なんと言うか、憑かれているような状態だ。先見の明ってのが神から与えられる予言みたいなものだったなら、それがあまりに頭に深く根付きすぎてある種の洗脳状態にあるのかもしれん。

 

「……そうそう、私が死んだら遺産は半分を輝利哉に渡って、残りの半分を四人の娘達に渡すつもりなんだ」

「……なんとなく言いたいことはわかった。親からの最後の贈り物にめくじら立てたりしねえから自由にすりゃいいだろ」

「ふふふ……どうせなら孫の顔を見てから逝きたいかな」

「強すぎる波紋で成長すら止まってるから、俺から離れないなら二百年くらいは無理だと思うぞ。意図的に弱めても今までのが残ってるしな」

「星柱様が望むのでしたら、何人でも」

「星柱様が望まぬのでしたら、如何様にも」

「……。お前ほんと娘に何言ったんだ?」

「感謝と憧憬と焦がれが凄い事になっていたから背中を押しただけだよ。そこからどうなるのかはその子達次第と思ってね」

「こうなる予想は」

「勿論してたよ」

 

 ……やれやれ、貴族ってのは腹の中を誰にも見せないようにするのが得意だこと。基本的に善意なのが救いと思っておこうか。

 

次回作

  • 魔王城でおやすみ
  • 鋼の錬金術師
  • なんか適当に止まってるの
  • なんか適当にハマってるの
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