デレのジョな冒険 スマイリングシンデレラ   作:並び替え

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島村卯月は、オーディションへと向かう途中でガラスの靴を見つける。
その靴を履くと……



第1章 オーディション編
第1話 島村卯月 ガラスの靴を拾う


――――深夜、都内某所

 

 

事務所の一室に1人の男と1人の女がいた。

男は両手首を後ろに縛られ、その顎は女が指で持ち上げている。

2人の顔は近い。女を後ろから押せばきっと唇は重なり、歯がぶつかるかもしれない。

 

でもそこは2人だけの世界だ。

他には誰もいない。

 

女の声がする、男はかすかに震えた。

 

「私がいながら……どうして……」

 

女は涙を流す、

 

「あんなのを……っ!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 朝、目覚めの時間。

 

今日も目覚まし時計の音は私を夢から遠ざける。

良い夢だったのになぁ……。

ステージに立って、歌って、踊って。

 

楽しい時が……

 

時が………………

 

と……………………

 

ちらと、時計を見る。

 

 

……9:55……

 

 

「ふぇぁぁあああああ!!??」

「今日はオーディションに行く日だったぁぁ!」

 

えっと、オーディションが11時からで、移動に40分かかるとして…

いまから準備すれば、間に合うよね……?

そう思ったときにはすでに、くしでぼさぼさの髪を整えていた。

 

いきなり慌ただしくなったけど……

「島村卯月、頑張りますっ!」

 

 

 

 

 

――――2019年3月28日 08:46 渋谷駅

 

「2時間も早く着いちゃった……」

卯月は、携帯の時計、駅の時計、太陽の位置に正しい時刻を教えられた。

寝ぼけて針でも動かしたのか、卯月を起こした目覚まし時計は2時間も遅れていた。

 

「いっそのこと映画でも見ようかな…」

散歩の途中に映画館を見つけ、そうつぶやいた。

今はトイストーリーが人気のようだ。

上映時刻もちょうど良い。

チケットを買おうとした瞬間――何かが足にぶつかる。

 

「……?」

透明のガラスでつくられた何かが落ちていた。

太陽の光が反射し、それは宝石のような輝きをしている。

卯月は、おもわずそれをひろって見た。

 

「ガラスの……靴?」

 

それはハイヒールのような形の、シンデレラみたいな靴……

片方、右靴しかなかったが彼女はそれに目が釘付けになった。

 

卯月はさっきまで履いていた靴を脱いだ。

足のつま先がガラスに近づいていく。

 

ガラスに、足が触れた。

とってもつめたい。

 

「!」

 

「あれ……? 私なにやって……」

ふと我にかえった。

瞬間、ガラスの靴は卯月の足を吸い込むように、履かれた。

 

「くつ……脱がないと、」

彼女はガラスの靴を脱がそうとするが、

靴は足にきれいにはまっており、脱げない。

 

「そんな……履けたのに…………」

靴を引っ張るが、取れない。

 

ゴトッ

 

ガラスの靴が地面に突然落ちた。

卯月は靴を外すことに成功したのだ。

「わたしの靴……どこだったかな……?」

あたりを見回す、そして――

 

「あっ! あった!」

2歩、歩いた先に自分の脱いだ靴があった。

卯月は拾うために立ち上がると、

 

グラッ!  ど て っ !

 

バランスを崩して倒れた。

「いてて……」

なぜ倒れたのだろう、

その理由はすぐにわかった。

 

「!!」

 

「足が……」

 

ガラスの靴を履いていた右足は

足首から先が、

 

「きゃああああぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

無くなっていた。

その断面からは骨が突き出ており、血が噴き出しでいる。

 

 

突然の大声に周囲の視線が集まる。

しかし彼女は視線より自分の足の変化に驚いて、また立ち上がろうとする。

そして、

 

「ふぎゅっ!」

 

倒れる。

慌てて匍匐前進するも、意外とうまく進めない。

そしてようやっと1歩進んだところで、自分の無くなった足を見ると、

 

「えっ……?」

 

足があった。

骨も見えないし、血も出ていない。

そもそも傷すらない。

 

卯月は、ぼぅと立ち上がり自分の靴を履いた。

 

 

「あれ?」

「ガラスの靴は……どこ?」

 

「えっと、もしかして……気のせい?」

 

誰もその問いに答える人はいない。

そして卯月は誰にも聞いていない。

 

 

 

結局、映画は見ないことにした。

 

 

 

少しの間、卯月は渋谷駅のまわりを散策する。

 

 

 

――『渋谷』。

 

新宿、池袋と並ぶ三大副都心の一つであり、

最先端の流行やファッションで彩られる、若者の街である。

渋谷駅前の忠犬ハチ公像は渋谷のシンボルであり、

待ち合わせにとてもよく利用されている。

移り変わる流行の中で、50年以上もそこに座る忠犬に、

街行く人々は安心感と敬意を表している。

 

卯月は今、そんな忠犬の前にいる。

 

「忠犬、ハチ公……」

像の土台の部分に、手を触れる。

「………………」

 

(今日のオーディション、合格しますように!)

 

 

そして、

 

「よし、喫茶店で時間をつぶそうかな!」

 

 

そして卯月は、近くの喫茶店に入る。

一人の女が尾けていることを知らずに。

 

その女は少しだけ焦っていた。

「どうしよう……」

「あの靴、あの子に持たせるのは、まずいかもしれない。」

「絶対に……取り返さないと……!」

その女は卯月が入った喫茶店へと入った。

 

 

――――09:08 渋谷凛 喫茶店『リンディットショコラ』入店

 




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