デレのジョな冒険 スマイリングシンデレラ   作:並び替え

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小日向美穂は、卯月たちを襲った罪悪感から、アイドルを辞めようと考える。
卯月はそれを止めようとするが――


第13話 レッスン室 その②

 

~346プロダクションのレッスン室の設定~

(あまり意味はないので読み飛ばしてもよい)

 

346プロダクション本部にはアイドルの様々なニーズに応じて7号館まであり、

レッスン室は2号館にあたる。

 

30を超える少人数用のレッスン室と、3つの大きなレッスン室がある。

 

CDラジオはもちろん、冷蔵庫も全室完備。

ちなみに冷蔵庫の中にはスポーツドリンクがある(たまに明らかに自作のものがあり、誰が作ったのかは不明)。

たまにケーキやマカロンもある。 

誰の物かは知らないがみんな勝手に食べる(ごく稀に下剤が入っているので非推奨)。

 

大浴場とサウナ室、シャワー室、食堂もある。

トイレもある。

 

ただしレッスン室を使用するには申し込みが必要。

(ライブの開催が近いアイドルは優先的に使える。小日向美穂もその一例)

必要に応じてトレーナーを呼ぶことも可能(料金制、3時間3000円)。

まぁ嫌でも週に何度かはトレーナーによる厳しいレッスンを受けるのだが……

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

―――― 2019年3月29日 06:35 卯月宅(ライブまであと2日)

 

朝。

卯月は静かに目が覚めた。

昨日は身も心も疲れ果てていたが、嘘のようにすっきりしていた。

 

「行ってきます」

卯月は、家を出た。

泊まりの荷物を持って。

 

―――― 07:32 346プロ レッスン室

 

「おはようございます!」

「おはよう。 卯月ちゃん、一緒に頑張ろう。」

「といっても、8時開始予定だから歌う曲の確認でもしてゆっくりしてて。」

そういって美穂はストレッチを始める。

 

「はい…………」

 

「…………」

 

「……………………」

 

「…………………………………………」

 

「あの、昨日のこと……」

「!」

 

「本当なんですか…………?」

「…………」

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 

「……………………」

「……………………」

 

 

 

「…………………………………………」

「…………………………………………」

 

 

 

「やっぱりなんでもな」

「本当だよ。まだ卯月ちゃんたち以外には言ってないけどね。」

「私はライブの後で真実を話すつもり。 誰も信じてはくれないと思うけど。」

「やめて」

「それでアイドルを」

「やめて! 美穂ちゃん!!」

 

「やめないで……」

 

「だめだよ。 私は夢を奪ったから……」

「じゃあ……、じゃあ! あなたはこれからも数え切れないほどの夢を奪うんですね……。」

「え?」

 

 

 

レッスン室の外に、2人の少女がいた。

「卯月……」

「しまむー……」

 

 

 

―――― 08:03

 

「よし、それじゃあ今日もレッスン開始だ!気合い入れて行くぞ!!」

『はい!!!』

 

 

♪(お願い!シンデレラ)

 

 

「ん? おい小日向、表情が落ち込んでいるぞ!」

「は、はい!」

 

トレーナーは美穂に近づき、卯月達に聞こえないようにささやく。

「何があったかは知らんがあまり暗い顔をすると後輩が不安がるぞ。」

「はい……。 すみません……」

 

―――― 12:03 2号館食堂

 

「カレー定食、はいお待ち!」

「わーい!」

 

未央が喜ぶなか、卯月と美穂は暗い顔で食事していた。

 

凛はそんな2人を見ていた。

 

―――― 12:45 自主レッスン

 

卯月と美穂は黙って振り付けを確認している。

凛と未央も表情はあまり明るくない。

 

そのまま夜になった。

 

―――― 21:58

 

「凛ちゃん、未央ちゃん。 泊まりの荷物は持った?」

「もちろん」

「ばっちり!」

 

「じゃあお風呂、入ろうか」

美穂が言う。

 

 

かぽ~ん

ざばぁーーっ!

 

「ふぃ~~、疲れが溶けていくぅ~~」

「悪くないね……」

未央と凛は大浴場に入る。

 

「…………」

 

美穂は大浴場の外の露天風呂に入っていた。

卯月もそれに入る。

「凛ちゃんや未央ちゃんと一緒じゃなくていいの?」

「はい。 えっと、露天風呂に入りたい気分だったんです……」

 

「…………」

「…………」

 

「…………………………………………」

「…………………………………………」

 

長い沈黙が続く。

 

(美穂ちゃんにアイドルやめないでって言いたいけど、どう説得すれば……)

 

(卯月ちゃん、私にやめないでって言ってくれてたけどごめん。 夢を奪った私にアイドルは出来ない……」

「だからこれで最後……」

 

「それって、アイドルをやりたくないわけじゃ、ないんですよね?」

 

「えっ!? 聞こえてた?」

美穂は驚く。

心の声がいつの間にか本当に声になって出て行ったようだ。

「う、うん。」

 

「そっか、聞こえてたのか。」

「美穂ちゃんって……アイドルをやめたくないんだよね?」

 

美穂は少しの間、沈黙する。

「卯月ちゃん。何度も言うけど私は、アイドルを目指している女の子を傷つけた。」

「きっともう私の姿なんて、見たくないと思うの。」

「何で……」

 

「私はもう戻れない。ちゃんと、真実を伝えないと……」

そういって美穂は、卯月に防水のスマホを見せる。

「……?」

 

「誰かのツイッター?」

卯月はそこに表示された文字を読んだ。

『昨日、オーディションに行ったら小日向美穂ちゃんを見たけど、急に暴れ出してびっくりした~~』

『返信 みほちーがそんなことするわけねぇだろアホ』

『返信2 何言ってんだこいつ』

『返信3 本当にそいつ美穂ちゃん? つーか現役のアイドルがオーディションに来んの?』

 

「誰も信じてない…… じゃあ隠せば、やめなくても」

「そんなの嫌だ! 罪を……告白しないと……」

「そんなの抱えてのうのうと私はアイドルなんてやれない……」

 

一方、凛と未央は外で美穂と卯月の会話を聞いていた。

「…………」

「もう、我慢できない!」

「し、しぶりん!?」

 

バァン!!

「り、凛ちゃん!?」

「聞いてたの!?」

 

「うん。 風呂は声がよく響くから。」

「いやここ外の露天風」

「美穂!」

卯月の冷静な発言を凛は遮り、美穂に問う。

 

 

「昨日あんたが私に向けたあの表情、何だったの?」

 

「あれは…… その……」

 

「『失敗前提の奴にステージに立つ資格はない』、だよね? でもあんたも変わんないと思うけど。」

「は?」

「ライブの後に真実を伝える? 『私は数十人ぽっちの夢を奪いましたのでアイドル辞めます』って?」

「…………」

「それで何人の夢を裏切るのさ。そんな真実知って誰が得するのさ?」

「それは……」

 

「あんただけだろっ!!」

 

「あんたが…… 罪の意識をファンに押しつけるんだろう! あんただけスッキリするんだろううっ!」

「あんたは加害者じゃない…… あのリボンの被害者だ………… だから堂々としててよ!!」

「『ファンをこれから裏切るアイドル』のほうが、ステージに立つ資格ないんじゃないの?」

 

凛の言葉に美穂は黙る。

 

 

 

「今なら、まだ間に合うよ、美穂ちゃん」

卯月は言う。

「受験生たちが望んでいるのは小日向美穂ちゃんが悪くないってことだと思う。」

「だから、私たちを襲った美穂ちゃんはニセモノってことにしよう。」

 

 

「そんなの…… それこそファンに嘘ついて裏切ってる……」

美穂は卯月の提案を拒否した。

 

 

「その嘘を背負うことが、彼女たちへの贖罪だよ。」

「だから、嘘をつこう?」

 

だがその程度で手を引く卯月ではない。

ついに美穂は、その場に座り込んだ。

 

「嘘…………」

「ステージが終わって…… 罪を背負っても体が動くのなら……」

「嘘を……つこうかな……?」

 

 

 

風呂から上がった3人は、レッスン室に布団を敷いて横になった。

美穂は別室で自主レッスンをしている。

 

(アイドルって、いろんなものを背負い込んでステージに立っているんだ……)

「私に…… できるかな……」

3人の内の誰かが、言った。

 

 

 




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

露天風呂や浴場にスマホを持ち込むのはやめましょう。
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