そして、熊の脱走と同時に仁奈がいなくなる。
仁奈はどこへ行ったのか……
仁奈を追いかける変な野郎とは……?
「え?」
菜々を襲おうとしていた熊は、別の熊によって突き飛ばされた。
「……………………」
菜々は少しぼーっとしていたが急いで逃げた。
「仁奈ちゃーーん!? 仁奈ちゃーーん!?」
そして菜々は仁奈を探した。
「!!」
すると、熊が菜々を追いかけて来た。
「そんな!」
菜々は逃げるが、熊との距離はどんどん近づいてくる。
「はぁ……はぁ……、このままだと追いつかれる!」
「でもこの熊、何かがおかしいような……」
その熊の口には何か赤いものと白いくずがついていた。
「あの口についているもの…… まさか、ローストビーフサンドイッチ!?」
「ってことは仁奈ちゃんは……、もう襲われた!?」
「う゛っ!」
菜々は道の段差につまずいて転ぶ。
「痛……っ! しまった!」
追いついた熊が菜々に覆い被さろうとする。
菜々は目を閉じた。
「…………?」
目を開くと熊に抱きつかれていた。
しかし熊は菜々を食べたりひっかいたりしようともせず、ただ抱きついていた。
そして菜々は何かを感じ取った――
(え…… 仁奈ちゃん?)
見た目は熊だが、それは仁奈だった。
仁奈は熊になって菜々を守ったのだ。
「ぐおおおおおおおおおおおっ!!!」
先ほど突き飛ばされた、仁奈ではないほうの熊が近づいてくる。
熊の仁奈は、そいつと戦おうとしている。
「ぐおおおおおお!!」
「仁奈ちゃん……」
熊は、仁奈に向かって突進する。
しかしすぐに銃声とともにそれは止まった。
菜々と仁奈は、熊が撃たれたのを見た。
「やった! 熊が駆除されて……はっ!!」
菜々は熊の姿の仁奈を見た。
「になちゃん! 戻って!」
そう叫んだと同時に、仁奈の身体はぐにゃりと変形し、菜々になった。
「にな、になのきもちになれましたかー?」
「え……?」
菜々は目の前にあらわれたもう一人の菜々の姿に戸惑う。
だが周囲がこちらを見て騒ぎ出したので、菜々は菜々を連れて逃げた。
―――― 07:03 駐車場
「はぁ……はぁ……、ここなら他の人はいませんね……!」
「菜々おねーさん……?」
菜々は自分に似た仁奈を見た。
見た目はもちろん、声まで完全にそっくりだ。
「そっくりだ……」
「にな、になのきもちじゃないでごぜーますか? またまいごですか!?」
「えっと……?」
「菜々おねーさん! になです! 信じてくだせー!!」
「信じでくだ……」
菜々は仁奈の言葉を遮るように抱きついた。
「大丈夫です! わかりますよ……、仁奈ちゃん……」
(この一件、ただごとじゃない……!)
「とりあえず、まずは会場に行かなきゃ……」
(そこなら、仁奈を追う『野郎』から守れる!)
(電車ももうすぐ動くだろうし、それに乗れば!)
「行こう、仁奈ちゃん。」
「…………」
「仁奈ちゃん?」
仁奈は菜々の後ろを見て震えていた。
「や……や……」
「仁奈ちゃん? どうしたんですか?」
「やろーが…… 後ろにいるです……」
「っ!!」
菜々は後ろを見た。
すると、スーツを着た男が笑顔でこちらに向けて歩いて来た。
「すみません、そこの女性。 ちょっとよろしいですか?」
「は……はい。」
「私は、警察官です。」
菜々は差し出された名刺を受け取った。
「はぁ。」
「そちらの子を保護してくださり、感謝いたします。 つきましては謝礼と引き渡しを――」
「引き渡した後、どうするんですか?」
「もちろん、親元に連れて行きます。」
「!! 仁奈ちゃん! 思ったより早く見つかったね!」
(なんだ、変な野郎って仁奈ちゃんを保護しようとした警官さんのことだったのか……)
「嫌でごぜーます!! そいつ、嘘ついてやがります!!!」
「仁奈ちゃん! 何言って――」
「そいつおまわりさんの気持ちになれてないですよ!」
「それは子どもの前だから!」
「逃げるです! 逃げるですよ!」
「あっ! 仁奈ちゃん!! 待ってください……」
仁奈は猫になって逃げた。
「す、すみませんあとで連れ戻します!」
そう言って菜々は追いかける。
「チッ、あのガキまたどこかに消えやがったな……」
男の小言は、菜々には届かなかった。
「仁奈ちゃん! 待ってください、仁奈ちゃん!! おまわりさんが来たから安心ですよ!!」
「うるせーです! あいつおまわりさんの気持ちじゃねーです!!」
「さっきから何言って…… あっ!」
仁奈は熊の姿になって逃げた。
「待って!」
菜々は追いかける。
駐車場の外に出ると熊が一頭、倒れていた。
「仁奈ちゃん!?」
仁奈は起き上がろうとし、さらにすこし離れた所から男の声が聞こえる。
「熊が起き上がるぞ! 撃て!」
「待て、女がいる!」
「おい! そこの女性、危ないぞ! どけ!」
「ぐぉぉ…………」
「え?」
仁奈熊は、数人の大人に囲まれ駆除されようとしていた。
菜々は仁奈をかばうように立つ。
「くそ、どけよ!」
「待て新人、銃を向けるな!」
「おい! 襲われるぞ!どけ!!」
「まずい、熊が起き上がりそうです!」
「私があの女を避けて熊に撃ちます。」
1秒後、銃の引き金は引かれた。
その弾丸は真っ直ぐ菜々の頭に向かう。
「っ…………!」
菜々は目を閉じた
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第1章の終わりに、スタンド設定を投稿しました。
よろしければご覧ください。
なお、第2章のスタンド設定は第2章の終了後に投稿する予定です。