しかし、状況は何も変わらない。
その頃、ある少女が事務所の一室で喋っていた……
――――卯月と凛が出会った頃、とある事務所の一室
一人の女がそこにいる。
昨日の夜、一緒にいた男は見当たらない。
「さっきは危なかった……」
女が喋る。
「私の姿は、見られていないとは思うけど……」
女は落ち込む。
「『ガラスの靴』を無くしちゃった……」
「私のミスで……」
女はうつむく。
そして前を向く。
「でも大丈夫。私の『エヴリデイドリーム』があれば絶対に……」
女は床をめくる。
中には、リボンで縛られた男がいた。
「ずっとまゆがいますからね。プロデューサーさん。」
「そのためには『ガラスの靴』を取り戻さないとですね……」
女は口角を上げる。
「がんばってくださいね、凛ちゃん」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「これは、コーヒーを発射してる!!」
卯月は凛の攻撃の正体を見破る。
「ふーん、バレちゃったか。」
「でも攻撃の方法が分かっても、無駄なんだけど。」
そう言って凛は、次のコーヒーを発射する。
「……っ!」
卯月はそれを後ろに跳んで避ける。
ずっと凛の攻撃を避ければいずれ発射するコーヒーがなくなる、そう卯月は考えていたが……
ガドンッ。
卯月の背中が、壁に衝突する。
「はっ!」
「まさか……」
卯月は今、店内の角にいた。
「今までの攻撃は……」
卯月は焦る。
凛は口を開く。
「そう、あんたを角に追い詰めるための誘導。」
「そしてぇっ!」
「この一撃で仕留めるためだ!!!」
凛は、コーヒーを発射する。
卯月には避ける場所がない。
高圧で発射されたコーヒーは、ウォータージェット切断のように、いろいろな物を破壊するだろう。
それが今、卯月に向かって来ている。
卯月は自分の近くにあるテーブルに手を伸ばす。
すると凛は、
「テーブル程度で、私のスタンド、『ネバー・セイ・ネバー』の水圧カッターは防げないっ!」
どぉぉん!
攻撃は、卯月に衝突する。
削れた壁の粉が、煙となって舞い上がる。
「勝った。」
凛は静かに叫び、煙は晴れていく。
「………………………………………………………………」
「………………………………………………………………」
「………………………………!!」
そこに人影を見る。
それは、無傷の卯月だった。
「はぁ……はぁ……」
凛は焦る。
「な……なんでっ!? 無傷なの…………あっ!!」
卯月の手には、水の入った丸型のウォーターピッチャーがあった。
「!!」
凛は気付いた。
(まさか……、ウォーターピッチャーの曲面で水圧カッターの威力を弱めた!!)
凛の攻撃、水圧カッターの原理は、小さな穴から加圧された水を発射して物体を切断するウォータージェット切断と似ている。
しかしウォータージェット切断は、球のような曲面だと表面で水が少しはねてしまい、切断するのに時間と大量の水がかかる。
さらに、卯月が持つピッチャーの中には、水が入っている。
水中で水鉄砲を撃つと威力が弱くなるように、
ウォータージェット、凛の水圧カッターの威力も”水”で弱くなっていった。
卯月は、凛の水圧カッターを防いですぐ店の外へ逃げた。
「はぁ……はぁ……」
卯月は走る。
「交番……交番に行かなきゃ……、でも……」
(私の話……、信じてくれるかな…………?)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「くっ……っ! 逃げられた……」
私のスタンド…………『ネバー・セイ・ネバー』には能力がある……
それは、『水を操ること』
昨日、この能力で私を追跡していた人を撒くことが出来た。
まぁ、突然追って来なくなったんだけど。
水を探さなくては……
私の能力だと水は操れても、生み出すことは出来ないから。
でもここなら、喫茶店なら水は十分にある!
逃げてったあいつ(卯月)を追う!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
卯月は走る。
(喫茶店の状況を見れば、なにか事件があったって分かるとは思うけど…………)
(いや、交番で立ち止まっている間に、追いつかれるかも……)
「そうだ!電車で逃げよう!」
(さすがにそうすれば、追いつけないはず!)
(でもなんであの人、私を襲ったんだろう……)
「私が履いたあのガラスの靴の持ち主だったのかなぁ……」
(そういえば、なんであの靴は映画館の前にあって、いつの間にか消えたのだろう?)
(誰かが拾った……? そもそもガラスの靴もいつの間にか現れたような…………)
卯月は走る。
たっ たっ たっ たっ
ザザーァ! ザザーァ!
「!!」
渋谷駅前交番の前にある広場に、小さなプールがあった。
しかし、水が貯められているのではなく集まっていた。
そう、水が。
「……!! まさか……」
ザバアアァ
水の中から人が出てくる。
その人は喋った。
「あんた…… 島村卯月って名前なんだね。」
その人は渋谷凛だった。
凛は何かを卯月に向かって渡すように投げる。
「えっ……?」
卯月のバッグだ。
ついさっきお店に置いてきたものだ。
「その中に『ガラスの靴』はなかった…… 返すよ。」
「ところでさ…… 卯月」
凛は卯月に寄ってくる。
「『ガラスの靴』は……どこに、やったの?」
「し……知りませ」
「!!」
凛の近くにもう一人、別の人がいる。
卯月はそれを見た。
(いや……! 人じゃない、人の形をした何か……)
その人は凛のすぐ横に立って、いや浮いていた。
まるで、凛の……
「守護霊みたい……」
「ふーん、やっぱり見えるんだ、スタンド」
凛はスタンドと呼ばれた人の形をした像とともに、卯月に近づいていく。
そして拳を振り上げ……
「じゃあ卯月の能力が目覚める前に、私が排除しておかないとね。」
そして凛は、凛のスタンドは卯月を殴る!
「げほっ!! う゛!」
凛のスタンドは卯月の首をつかみ、持ち上げる。
「く……、苦しい…………!」
これでとどめだ!
そう言わんばかりに凛のスタンドは、持っていたペットボトルの水を発射した。
スバシャアアァァ
高圧の、水圧カッター。
卯月に向かっていく。
ズアアアァァァァァ
卯月は目を閉じた。
「私の夢は……」
「いままでの努力は……」
ズアアアアアアアアアアアアアアアアア
その目から涙が流れる。
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
「ワン!」
凛の水圧カッターを、一匹の犬が受け流した。
「え……?」
凛が驚く。
卯月は目を開けた。
そこには、忠犬ハチ公像があった。
忠犬ハチ公像が犬のように動いて、凛の水圧カッターを受けていた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
水の力はすごいのですよ。