その過程で、櫻井桃華を強盗から助ける。
桃華は、まゆになにかお礼をするようだ。
「この櫻井桃華、なにかお礼をいたしますわ!」
桃華という少女は、まっすぐとまゆの目を見た。
それに対しまゆが向けたのは、疑いの目だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この子、怪しいですね……
たしかに私は、強盗から助けました。
でもそれはプロデューサーさんをおっさん呼ばわりしたあの男に苛立ってやったこと。
あくまで偶然だ。
この子があの猫女の差金でなければの話ですが。
「お礼だなんて、要りませんよ。」
店を出なくては。
「その背中の殿方を――」
!! この女やっぱり狙って……
「病院まで、車で運びますわよ」
「病院はだめっ!」
私はほぼ反射で返した。
プロデューサーさんを病院に連れて行ったら、
行ったら……
プロデューサーさんが他の女に触られてしまうかもしれませんし。
「病院ではダメなんですよ。」
「そ……そうですの……?」
でも、車がないのも事実ですね。
運転手を乗っ取る体力はありませんし、ここにいてもいつかは見つかってしまう。
「困りましたわ……どうお礼すればよいのかしら」
「どこまで、してくれますか?」
「どこまでもお礼いたしますわ!」
罠かもしれないって、分かってるんです。
でも逃げ切るには、これしかない……っ。
「私たちを、車にのせてていただけませんか」
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―――― 15:00 レッスン室
「もう3時だね、今日はもう終わりにしようか」
「……はい」
卯月の表情はあまり良くなかった。
前日のライブでの出来事が離れないのだろう。
美穂が卯月に近づいてくる。
「卯月ちゃん、これ」
「あっポカリ……、ありがとうございます」
受け取ったペットボトルを、ふたを開けて飲む。
ごくっこっこっこっ……
「卯月ちゃん?」
「ぷはっ! はぁ……はぁ……、何ですか?」
「昨日のこと、気にしている?」
「…………」
「あの事件が起きたのって、プロデューサーさんを探していたからだよね?」
「ほかの子に聞いてまわったけど、李衣菜ちゃんも響子ちゃんも、プロデューサーさんの情報を集めていたみたい」
「私もだよ」
淡々と答えた美穂との会話に、凛が入る。
「私もプロデューサーのことを調べてた。 有効な情報は集まらなかったけどね」
「ただ、18階にあるプロデューサーの仕事部屋が怪しいとは思う。 私はそこで洗脳された。 あの2人もきっと……」
「…………」
「その部屋に、何かあるのかな……?」
今度は卯月が凛に聞いた。
「少なくとも、私が操られる前に見たときはなにも無かった……ガラスの靴以外は」
「もう一度、行けばなにかあるかな?」
卯月の一言に、凛ははっとした。
「卯月、だめだ。 きっとこれは触れちゃいけないことだ、思ったより相手は容赦ない。 博物館の展示物みたいに、触ってはいけないことなんだ!」
凛は必死に卯月を説得する。
「じゃあ、なんで凛ちゃんは探しているの?」
「納得いかないから。 別にアイドルに興味はないけど、なんであの人が私をスカウトしたのかには興味ある」
「ってのは建前で、本当は私を好き勝手した赤いリボンが許せないだけだよ」
つまらなさそうに、凛は答える。
「だからもうこのことは忘れて明日からもレッスン……」
「私も」
「卯月?」
「私も、あのリボンがやったことはむごいと思ってる」
「それを放っておいて私は笑顔になんてなれない」
「それは、戦うってこと?」
今の発言は凛ではなく、美穂が言った。
だがどちらにしろこの質問はされていただろう。
「違うよ。 私は助けたい……でも響子ちゃんは間に合わなかった、もうこんなのは嫌……」
「これ以上それを繰り返せば、『真実の笑顔』にはたどり着けない……」
「真実……? それって、」
凛は不思議に思い聞こうとしたが、美穂に遮られた。
「卯月ちゃん、凛ちゃん! 大変!!」
2人は、美穂のスマホに表示されたニュース動画を見た。
『さきほど、コンビニエンスストアで強盗事件が発生しました』
現場であるコンビニが映される。
『犯人は地面に倒れており……』
「あ!」
コンビニの窓ガラスに、巨大な猫が走っている様子が映っていた。
その猫に乗っている少女は――
「みくちゃん!?」
「凛ちゃん、美穂ちゃん! 行こう!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
道路を一台の車が走る。
3列シートで、1列目には桃華と彼女が用意した運転手、2列目にはまゆとプロデューサーが座っており、3列目は空席である。
(この質感……! まゆは車に疎いですが、明らかに高級車!)
まゆは座っている座席を触り、その感触に驚く。
(身なりからして相応の金持ちだとは思ってましたが……)
(でもどうして、運転手は用意できるのに護衛は用意しなかったのでしょうか?)
ルームミラー越しに桃華の顔を見る。
彼女はそれに、笑顔のようなものを返した。
そんな桃華の座席の下に、『ガラスの左靴』があることをまゆは知らない。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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第3章に新登場したスタンド一覧は、第3章の最後のお話の最後に記載する予定です。