(車の屋根に咲く薔薇を、取り除くには……)
まゆは、そのスタンドで薔薇を観察した。
(『エヴリデイドリーム』の周り、そしてなぜかリボンを掴んだ場所に薔薇が咲いている……)
(これは重さか衝撃に反応して花を咲かせる能力……? もしくは地雷のようなものを設置している? もし後者だとすれば、どうして車の中に設置しないのでしょう? いや、それより……)
(私の、スタンドが倒れた場所には薔薇が生えていない……?)
『エヴリデイドリーム』はもう一度自分の周囲を見る。
(よく見れば、周りには生えてないところもある…… 影になっているようなところとか、影……?)
まゆはスタンドの足を少し動かす。
それによって影の場所が変わり、光が差すところにふわりと薔薇が咲き始めた。
(なるほど、日光だ! 車内だと日光が当たりにくいから、置いてないのですか。 それなら日光が当たらなければ、花は咲かない!)
(ただ、それが分かったところでこの状況は何も変わりません。 なにか、日光を遮れるもの……)
まゆは、交通標識を見る。
(弱ってなければ、あれをもぎ取ったんですけど……)
「……っ!」
(違う。 まゆがすべきことはスタンドを自分の身に戻すこと。 薔薇の対策はその過程に過ぎない!)
(車の中に戻れば、日光は当たらない!)
まゆは、スタンドを動かしてまとわりつく薔薇のツタを引きちぎる。
「うぅっ!!」
まゆの身体の傷が広がる。 そこから噴き出る血が、車のシートに染みてゆく。
桃華は、その様子を見ていた。
「そのまま、おとなしくしてくださりませんこと? スタンドへのダメージは自分の体に反映されるってことは知っていますわよねぇ?」
それでもまゆは力を振り絞り、ツタを引きちぎった。 傷はさらに開く。
「あとは…… 窓を開ければ……」
窓を開けるためにまゆはボタンを押そうとした、が。 桃華が何もせずともそれは出来なかった。
(体が……動かない! 力が……出ないっ…………)
まゆの右手は動かず、スタンドの右手が動く。 そして手が地面(車の屋根)に触れるたびに薔薇が新しく生え、まとわりつく。
「あら、せっかくちぎったのに。 何をしているんですのあなたは」
桃華は助手席から、まゆが小声で何か喋るのを見た。
「開かないなら……」
ガンッ
「!!」
後部座席の窓にヒビが入る。
「まさか……割るつもりですの?」
「まゆさん、あなた…… ずいぶん力づくですわね……」
複数回、まゆのスタンドは薔薇のツタの絡まる手で窓を殴った。 薔薇の棘を利用したのだ。
そして音を立てて窓が割れる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「!!」
リボンのスタンドが、窓から車内に入ったにゃ! そして……薔薇のツタがしぼんでいくにゃ。
なるほど、あれは日光を遮ると力が弱まるのにゃ。 とはいえ、まだ太陽も出てる。
「もう少し、距離を離すにゃ……へ?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「佐久間まゆさん。 私の能力の弱点は把握していますわ」
桃華はリモコンのボタンを押す。
すると車の屋根がぱかっと開いた。
「このベンツは本来、屋根の開閉はできません。 でも、櫻井家の力ならこのくらいの改造はなんてことないですわ」
「そんな……」
まゆの顔に日光が差す。 しぼんでいた薔薇のツタは活力を取り戻し、さらには
「後部座席のところどころから薔薇が……」
まゆとプロデューサーに、新たな薔薇のツタが纏わりつく。
(屋根だけじゃない、座席にもやっぱり仕掛けていましたか……ひ、引きちぎれない)
「行動はすべて把握済みですわ、あなたは少なくとも数日前から、Pちゃまを閉じ込めていた」
「!!」
桃華の言葉にまゆは驚く。
「そして、今を待ってましたわ。 まゆさんの動向を探り、トラックを走らせて買収したコンビニへ停車させる。 そしてあなたに恩をつくりわたくしの車に乗せた……」
「すべては私の能力を最大限生かすためですわ!」
抵抗のできないまゆに対し、桃華は強く言い放つ。
「さて、あとは邪魔者を排除するだけですわね。 彼女のおかげで私の計画は成功しましたが、Pちゃまを横取りされるわけにはいきませんわ」
桃華はコインを一枚、車の後ろのみくに向かって投げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(屋根が開いて、リボン女が縛られたにゃ。)
(で、小さな女の子がなにか言ってる……あの2人はやはり敵なのかにゃ?)
みくの数メートル先で、何かがチリーンと音を立てながら転がる。
「にゃ?」
そのコインから突然、薔薇のツタが生えてみくと自動車猫に絡みつく。 みくは道路の真ん中で動きを封じられた。
「しまったにゃっ! 車の屋根と同じ仕掛けが、このコインにされていたのかっ!」
みくはそこから抜け出すために身体をひねるが、ツタが余計に絡む。
(落ち着いてちぎれば…… ん?)
次は、車の音が聞こえる。
その音はどんどん大きくなってゆく。
すぐそこに車が迫る。
「まずいにゃ! もう猫化も間に合わない……」
みくは車のライトに強く照らされる。 彼女が車に轢かれるのを回避することは、もう不可能だ。
(りーなちゃん、ごめん……)
『ネイキッド・ロマンス!!』
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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第3章に新登場したスタンド一覧は、第3章の最後のお話の最後に記載する予定です。
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