デレのジョな冒険 スマイリングシンデレラ   作:並び替え

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「きゃっ!」
 まゆは人とぶつかって倒れた。

 その『人』は、まゆを心配している。
「ええ、だいじょうぶ……です……」

「…………」
 まゆの顔は、ほんのりと紅かった――


第42話 ピンク色のリボン

 

 

 まゆの目の前に、プロデューサーが血を流して倒れている。

 

 「私の……せいだ……」

 

 どこを、間違えたのだろう。

 何が悪いかは私にはもうわからない。

 でももう、後には戻れない。

 

 そうだ――

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 ――凛がスカウトされるよりそこそこ前 346プロダクション

 

「見つけた……運命の人っ!」

 まだアイドルになっていないまゆは、346プロの社長室に忍び込み資料を漁っている。

(私とあの人が衝突した場所からの逆算と、この日の部屋の使用用途から考えると、あの人は346プロダクションの採用面接を受けている! そしてこの書類を見るに、不採用!? なんで……ん?)

 

 書類の備考欄には、「プロデュース経験あり ただしスカウトしたアイドルが問題を起こしている。 そのため不採用だが、彼にスカウトをさせ良い子がスカウトできたら、その子だけアイドルとして採用する」と書かれている。

(……つまりあの人には採用をエサにスカウトをさせ、成功したら難癖つけてその結果だけもらう……ってことですね。 自らの利益のために他者を利用する、なんとも卑怯な方法ですね)

 まゆは表情を変えずに立ち上がった。

 

「まずは、あの人を見つけなきゃ」

 1時間程まゆは街を走って運命の人を探す。

 

「見つけた、間違いない!」

 まゆはPを見て喜ぶ、が話しかけない。

(私があの人をプロデューサーだと知って話しかけるのは得策ではない、押しが強すぎると引かれてしまうから。 つまり話しかけられるのが最適ですね)

 Pの視界から少し外れた位置、そこにまゆは立った。 待ち合わせをふりをして。

 

 するとすぐに、

「へ~い!」

 声を聞いて振り返る、少し嫌そうに。

「ねーちゃん暇かい、お茶しようぜぇ!」

 Pではなく、金髪の若い男に話しかけられる。

 もちろんスカウトではなく、ナンパだ。

 

「あの、もうすぐ塾があるので……」

「ほよほよほよほよほよほよ! この俺よりベンキョーが大事だってのかい! あぁ寒い世になったねぇ~!」

「…………」

「そこで! 温かいお茶! 飲みたいよね~でも今の時代一人だど寂しくて寂しくて震える……、だから一緒にお茶飲もうぜぇ頼むよぉぉぉおおおおお!!」

「あの……困ります……」

「ふむふむ5マス、進む(!?)…… おっとマス目に何か書いてある、2人でお茶に行く。 なるほどというわけでお茶に……」

 

「     」

「!!」

 2人の会話を聞いたPが金髪男に話しかける。

 そしてPがいくつか喋った後に、金髪モブ男が「ちくしょ~」と言いながら走って逃げた。

 

「あ、あのっ。 ありがとうございました……」

「     」

「!」

「               」

「はい! よろしくお願いします!」

「        」

「あ、塾は今日休みでした……ふふ……」

 まゆは、プロデューサーにスカウトされた。

 

 ――346プロダクション

 

 まゆとPは面接室へと向かう。

「ほう、戻ってきたか……ん? その女は……」

 Pが面接官である部長に、スカウトに成功したことを話す。

「ふーむぅ……」

 部長はまゆをじろじろ見る。

「ルックスは、なかなかだなぁ…… よし! この子は採用しよう。 だが……」

 まゆは無言で部長に近づく。

「な、なんだね! 採用と言ったじゃないか、君っ!」

「私、別の会社で読者モデルをやってる関係で、346プロ所属の友達が何人かいるんです。 その友達から聞いた話なんですけど……」

 Pには聞こえないように声を小さくする。

「あなた盗撮してますよね?」

「はぁ? 何を言っているんだ君は」

「2号館にある女子更衣室に、隠しカメラがあったんですよ」

 

 まゆはスマートフォンを出す。

「これがその盗撮動画です。 カメラを起動してから設置しているんですね。 あなたの顔がはっきりと映っているんですよぉ」

 

 部長の顔が、青白くなる。

「頼む……言わないでくれ…………」

 

 こうして、プロデューサーは採用されてまゆのPとなった。

 この際に部長は嫌がらせで、不便かつ人のいない18階の事務室をPに与えた。 しかしまゆにとってプロデューサー以外の人がいない場所は好都合であった。

 あと部長は結局他の人に盗撮がバレて解雇となった。

 

 

 

 佐久間まゆの、読者モデルからの転身は話題を呼んだ。

 この頃はレッスンを含めて基本的にプロデューサーはつきっきりだったのもあって、まゆは幸せだった。

 また、まゆはアイドルとしてそこそこの功績を残しており、プロデューサーはそのたびにまゆを褒めていた。

 やはりまゆは幸せだった。

 

 だが、それも長くは続かない。

 というのも、Pに新しい担当アイドルが増えたのだ。

 まゆと違い346プロによる新人発掘オーディションで選ばれたが、Pとまゆの時間は、今までより大きく減ってしまった。

 

「最近入った子たち、すごい素質をもっているよね!」

「それに比べて、佐久間まゆは落ちたよねぇ」

 ギャルっぽい女2人が階段を上りながらそんな話をする。

 

「!」

 

 その横を、まゆが静かに通り抜ける。

「うわっ!」

 ギャルの片方は驚いて、手に持っていた丸いペットボトルを落としてしまった。 中からストレートティーがこぼれる。

 ギャル2人はそれを放置してそそくさと逃げた。

 

 

 

 18階、まゆはプロデューサーがいる事務室へと入った。

「プロデューサーさん、話ってなんですか?」

「     」

「……え?」

 

 プロデューサーは、新しいアイドルをスカウトした。

 オーディションではなく、直接のスカウトだ。

 今日はもう帰ってもらったが、その子の名前は『渋谷 凛』というらしい。

 まゆは動揺し、来た道を急いで引き返した。

(私が……弱かったせいだ……)

(だから新しい子をスカウトしたんだ……)

(女は……車…………気に入らなければ男は乗り換える……っ)

 

 このときの佐久間まゆは、冷静さを欠いていた。

 それが、惨劇を生む原因となったのかもしれない。

 

 まゆは階段を走って降りる途中で、こぼれたストレートティーを踏んで足が滑った。 このまま転べば後頭部が段差に当たって、無事では済まないだろう。

 しかし、まゆを追いかけていたプロデューサーがまゆの服を引っ張り、彼女は尻もちをついただけで済んだ。

 そして、プロデューサーは落ちていたペットボトルを踏んで階段を転げ落ちた。

「プロデューサー……さん……?」

 

 

 プロデューサーが血を流して倒れている。

 首の骨は折れ、頭はあらぬ方向へと曲がっていた。

 彼は頭から落ちたのだ。

 

 

「私の……せいだ……」

 まゆがプロデューサーに近づこうとしたとき、

 背中を何かに踏まれた。

 

「!?」

 それは、ガラス製の靴だった。

 そして大量のリボンが、自分の身体から溢れ出る。

 それは全身を覆い尽くした。

 

「………………」

「乗り換え……できなくすればいいんだ」

 

 これが佐久間まゆのスタンドの発現であり、最初に行った精神操作である。

 佐久間まゆは、プロデューサーの死をすぐには受け入れられなかった。

 

 そのため――

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「そんな……、ありえませんわ。 Pちゃまは……もう、死んでる!」

 

「…………そうだ……プロデューサーさんは…………」

 プロデューサーの死の記憶が蘇る。

 まゆの首から、ピンク色のリボンが抜け落ちた。

 自分への束縛が、ほどけた。

 

 




3章は残り2話です(完結じゃないよ)。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
質問や感想等受付中です。
第3章に新登場したスタンド一覧は、第3章の最後のお話の最後に記載する予定です。

この小説は現在、水曜更新です。
続きは来週をお待ちください。
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