危険に巻き込まないためだ。
しかし卯月の意思は固い。
オーディション会場で、卯月が見たものとは――
vs小日向美穂戦、開幕!
――――09:48 スタバ店内
凛と卯月は椅子に座ってカフェオレを飲んでいる。
「卯月は私のいる346プロダクションのオーディションを受けるつもり?」
「はい!」
「…………」
「こんなこと、言うのはおかしいと思うけど……」
凛は口を開く。
「今からでも、キャンセルしたほうがいい」
卯月は目を開く。
「……」
「いや、恐らくオーディションは中止になるよ、きっと」
「えっ、どうして……」
「プロデューサーが……いないから…………何の連絡もなく……いなくなった…………」
「…………」
「…………」
「異動したなら、後任のプロデューサーさんが」
「いない…………」
凛は下を向く。
「え?」
「ついさっきメールでほかのアイドルに確認したけど、そんな話は聞いていないって言われた」
「しかも、プロデューサーは失踪したらしい…… という噂が出来ていた。」
「どういうこと……」
卯月の額から汗が流れる。
「プロデューサーがいないから、オーディションはできないはず。
他のプロデューサーも昨日の今日で予定は空けられないし、絶対に出来ないと思う。」
卯月の携帯電話から、ピロリンという音が鳴った。
「あっ、メール…………」
凛はオーディションの中止を確信した。
卯月はそのメールを読みあげる。
「オーディションは予定通り11時に××(場所)で行われます」
「!!!」
凛は驚く
「そんなバカな…… ありえない!」
「凛ちゃん…… 私も、手伝うよ」
「え?」
「凛ちゃんのプロデューサー、もし合格すれば私のプロデューサーを一緒に探そう!」
「だめだよ卯月……、今なら抜け出せるから…………! 今なら、私とは無関係でいられるから…… 逃げて……」
「無関係じゃない! 友達!」
卯月は立ち上がる。
「それに私は…… アイドルになりたい………… このオーディションに合格すれば……」
「夢が叶う…… そしてあの人と同じ景色を見るんだ……」
凛は卯月を見て、
「……………………」
卯月を止めることは出来ないと悟った。
――――10:34 オーディション会場の近く
「卯月……もし不自然な赤いリボンを見たらすぐに逃げて。 私みたいに操られるかもしれない」
「それと、もし合格したら」
凛は卯月に場所が書かれたメモを渡す。
「ここに、来て。」
「凛ちゃん………… わかった。」
「出来れば私も同行したいけど、私は一応(面接だけど)合格者だし。 もう一人ちょっと心配な人がいるから……」
「うん…… 気をつけるね。」
「じゃ、オーディションがんばって。 きっと卯月は合格できるから」
「はい!」
こうして凛と別れた卯月。
「ここが、オーディション会場……」
会場は結構広く、天井も高い。
そしてそこには20人くらいのアイドル志望の子がいた。
「リンゴ美味しいんご~~」
「#今日のコーデ パシャリ……」
「あぁ~ 尊い~~~~~ かわいい女の子がいっぱいいる~~ それに比べてボクは屋台のヤキソバに紛れた蚊みたいにクソだからマジやむ~
やむやむのやむwwwwww はぁ~でもよく書類審査通ったなボク やっぱり乳かな乳wwwwww つーかボクでも受かってるのに落ちた奴マジでいんの?
もしかして間違えてA〇女優の面接に行ってるのかなボクww え~やだやだやむやむやむやむやむやむやむやむ あ~でも落ちた子マジかわいそ~~
ぷぷぷのぷっぷくぷ~~~ はぁ~めっちゃやむわ~~~~~」
「邪魔だンゴッ」
「やむぅぅぅぅぅううううううう!!!!!!」
「………………」
「どの子も……みんなかわいい…………」
卯月は、周りをみてそう言った。
「私……合格できるかな…………?」
ぽんと後ろから右肩を叩かれる
「全力を出せばきっと大丈夫だよ! だから肩の力を抜いて。」
卯月はびっくりした。
「え…… あなたは、人気アイドルの小日向美穂さんですか!?」
「ふふっ よく知っていますね、って握手会で会ってましたね」
「えぇ! お、覚えているんですか!?」
「もちろん! じゃ、オーディションがんばって!」
そう言って美穂は卯月と別れた。
そして美穂はほかの子にもフレンドリーに話しかける。
「すごい…… ああやってオーディション前の皆の緊張をほぐしているんだ…………」
「がんばろう……私…………」
――――11:02 オーディション会場内
「試験の開始時間です」
「私が本日の試験官を務める小日向美穂です。よろしくね」
「試験の説明をします」
そう言って美穂が試験を仕切る。
「私が『合格』と言えば晴れてアイドルになれます。それだけです。」
会場がざわつく。
「なにか質問は?」
「えっと…… 面接とか、歌を歌うとか、するんですよね?
それで、合格って言わせれば いいってことですかぁ?」
受験生の一人が質問する
「まだダメ……」
「え?」
「!!」
すると質問した受験生は、いつの間にか美穂に胸ぐらを捕まれていた。
美穂は一歩も動いていないのに、
受験生が動いたのだろうか。
美穂は笑顔だ。
笑顔のまま受験生をぶんと投げ飛ばす。
投げられた体は卯月達の近くへ飛んできた。
そして美穂は言う。
「ダメだよね…… 質問するなら『手を挙げなきゃ』…… まだ、質問しちゃダメ…………」
「ちゃんと手を挙げていた子、いたよね…… お口が先に動いちゃったのかな……」
美穂の笑顔に変化は無い
「舌、千切ろうか」
すると地面にうずくまっていた受験生は、突然口を開けて舌を伸ばす。
舌は伸びる、伸びる、伸びて……
千切れた。
そして舌は遠くの壁に当たって落ちた。
いや吹っ飛んだといったほうが良い。
「ひっ……」
卯月の顔が青ざめる。
他の皆も、ただ一人小日向美穂を除いて。
一呼吸の後、
「うわぁぁぁぁぁあああ!!!」
「きゃああぁぁぁあああ!!」
卯月以外の受験生は逃げた。
しかし美穂は、
「試験中は、原則退室禁止です。」
「あああああ!!!」
「体が!前に進まないぃぃ!!やむぅ!!」
受験生たちはさっきいた場所に引き戻された。
誰がひっぱているわけでもないのに、ひとりでに。
しかし卯月は受験生の肩から伸びる糸を見ていた
ピンク色に光る、糸。
それはオーディション会場の天井につながっていた。
「ああああぁぁぁぁ!! 体がぁぁ!」
「浮くぅぅぅ!!!」
そして受験生達は糸に吊り上げられた。
まるで糸が受験生を釣っているみたいだ。
しかし、卯月以外の受験生はあたかも自分が浮いていると思っている。
「これって……」
卯月は気付いた。
卯月は小日向美穂を見る。
「うふふ……」
美穂の胴体には、赤いリボンが巻かれていた。
凛の心を縛っていたのと同じ、赤いリボン。
「そんな…… 美穂ちゃんも……」
「卯月ちゃん『も』、だよ」
「!!!」
美穂の言葉と同時に自分の体が釣り上がる
自分の右肩から天井へ糸が伸びていた。
糸に引っ張られる。
「ええええええぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
やむ。