デレのジョな冒険 スマイリングシンデレラ   作:並び替え

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まゆのスタンド能力によって操られた小日向美穂
それを解除することに成功したと思われたが――




第8話 試験官 その③

 

――――11:05 346プロダクション内の事務室

 

「さて…… どうしましょう?」

 

暗い部屋の中に、まゆはいた。

 

「プロデューサーさんをずっと床の下に隠せるかな?」

「いつか見つかっちゃう…… 場所を変えないと……?」

「それに、卯月ちゃんやあいつを始末しなければ…… プロデューサーさんとの愛が、終わってしまう……」

 

まゆは上を向いた。

太陽の光が優しく顔にかかる。

 

「いや、美穂ちゃんなら大丈夫…… 糸とリボン……私と似ているから……」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「美穂ちゃんに…… 触れた……」

卯月は、美穂の手にスタンドで触ることが出来た。

「元に戻って! 美穂ちゃん!!」

 

「…………」

「……………………」

「………………………………」

「あれ、私なにやって……ぐっ!」

 

「美穂ちゃん!!」

美穂はリボンに締め付けられた。

「あぁっ! ああぁぁあああ!!」

 

「……卯月ちゃん」

静かな声。

 

「? ごほっ!」

 

美穂は卯月の腹に蹴りを入れた。

卯月が登っていた糸から手が離れ、地面に激突した。

 

「ひゅー ひゅー がはっ!」

卯月は『スマイリング!』で地面に激突したダメージを軽減できたが、腹に当たった美穂の一撃が痛く手で腹を押さえた。

「そんな…… 触ったのに………… なんで……?」

(凛ちゃんのときは……!これで解決したのに………………!)

(そう、凛ちゃんの……リボンを……!)

 

「はっ!」

 

(そうか…… 美穂ちゃんに触ってもまたリボンが美穂ちゃんを操るから意味ないんだ!)

「本体は美穂ちゃんじゃない……」

「あの『リボン』っ!!」

 

しかし、リボンのついた美穂は他の受験生達とともに天井にぶら下がっていた

 

(美穂ちゃんはどんどん上に移動している…… 仮にあそこまで行けても他の人が邪魔でリボンに触れない……!)

(でも美穂ちゃんも私を攻撃できない!)

 

「そんなことないよ?」

「!!」

卯月は美穂の声に反応する。

そして美穂は箱を投げた。

 

箱は空中で開き、中からキラキラしたものがたくさん出てくる。

色は金色、出てきたそれは卯月に降りかかる。

 

「…………?」

それは、殆どの人が危ないと認識するものだった。

「これは……」

「画鋲!?」

 

『スマイリング!』

 

たちまち『スマイリング!』は画鋲を触る。

「痛っ!?」

 

しかし、画鋲の針が指に刺さってしまった。

卯月は確かに画鋲を友達にしたが、針はそのまま刺さった。

「そんな! どうして!?」

 

 

「それは……」

「!!」

卯月のスタンドが喋る。

 

「画鋲は針が大切だから…… それを捨てるなんて友達のためでも出来ないって……」

「!!」

「私の能力はあくまで友達になるだけ、お願いを聞くか聞かないかは相手の意思による……」

「じゃあ…… この画鋲の攻撃は…………」

 

「防げない!?」

 

卯月に画鋲が降りかかる。

 

「きゃあ゛あ゛あああ!!」

卯月は腕で顔をガードしたが、腕や体に画鋲が刺さる。

一つ一つは軽い怪我だが……

それより大きな危機がある。

 

「!!」

 

卯月の周りには、大量の画鋲が散っていた。

「……」

「ここから………… 動けない!」

 

そして天井につり下がる美穂は糸でくっつけていた受験生達を落とした。

 

「!」

卯月はスマイリング!の能力で地面を柔らかくし、受験生達の落下によるダメージを抑える。

そして美穂も地面が柔らかくなったのを利用して着地する。

 

「卯月ちゃん………… 私は全員落とすつもりだよ。 そして、」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「これ以上プロデューサーさんをたぶらかす娘が現れないようにしなきゃ……」

暗い部屋に窓から明るい光が差し込む。

それを浴びて、まゆは言った。

 

「アイドル志望は、全員始末ですよぉ…………」

「うふふふふ、うふふふふふふふふふふふふ……………………」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「みんな! 今度こそ逃げてっ!」

 

オーディションの受験生達は、また一目散に逃げた。

ただし、卯月を除いて。

 

「…………」

卯月は画鋲を1個1個拾い集めている。

 

「何度逃げても、無駄だよ…………?」

美穂はまた手から糸を発射する。

逃げた受験生をまた捕まえるのだろう。

「捕まえて、逃がして、また捕まえて……」

「何度も繰り返すうちに体も心も、ボロボロになる。」

「私の能力は人を殺せないけど、壊すことはできる……」

 

美穂の手から発射された糸が受験生の体にくっつく直前、

卯月は何かを投げた。

そして、

 

「捕まえた。」

 

美穂は捕まえた受験生を引き寄せようとし――

「痛!」

美穂の手に画鋲がいくつも刺さる。

美穂がそれを抜く間に、卯月以外の受験生はオーディション会場から出た。

 

「ごめんね、美穂ちゃん……」

卯月の手には画鋲が握られていた。

美穂の糸が逃げている受験生達に着弾する前に、

卯月は画鋲を投げていた。

その画鋲が代わりに糸にくっついた。

 

「そして私は、自分の手に画鋲を引き寄せた……」

美穂は手から出た血をハンカチで拭きながら、卯月のほうを見た。

 

「美穂ちゃん…… 本当にごめん……」

卯月は涙を流し、

「すぐに解放するから……」

 

 

 




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
画鋲は危ない。

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