「ふう…この間の戦闘で、データは幾らか集まったけど…。
まだ、実装させるにはデータが足りないなぁ…。」
S.O.N.G.研究室で、エルフナインはパソコンの前で頭を抱えていた。
パソコンの画面には、マッカォとドスマッカォに関するデータが表示されている。
「お邪魔しまーす。
エルフナインさん、今時間空いてるかな?」
その時、研究室の扉が開き、スィーヨが入って来た。
「スィーヨさん!丁度良い所に来てくれました。」
「丁度良い所?
もしかして、そこに映っているものが関係するのかな?」
「はい…。
実は、この間の戦闘データを利用してシミュレーションデータに組み込もうと思っているんです。」
「それって、訓練ルームの…えっと…立体映像、だったっけ?
それに使うの?」
「そうです。これから先マッカォみたいなモンスターがまた現れた時に備えて、シミュレーションルームの訓練プログラムに組み込んでみようと思ったんです。」
「…なるほど、なんとなくわかったよ。
それを作るに当たって必要なデータが足りないから、ぼくの知識を貸して欲しいって事だね?」
「そうです。
お願いできますか?」
「勿論、喜んで!」
笑顔で答えると、エルフナインの隣の席に座る。
「えーっと、前回はモンスターの大まかな種類について話したんだったよね。」
「はい。
種類が多くて、正直驚きました。」
「じゃあ、今回はその中から“鳥竜種”のモンスターについて詳しく話そうかな。」
「鳥竜種…ここに映っているマッカォやドスマッカォも同じ種類でしたね。」
「そう。
鳥竜種は、比較的小型の飛竜や翼を持たない小型から中型の肉食竜等が存在するよ。
その姿は様々で、見た目が完全に鳥の様な姿をしたものから、鳥かどうか疑わしい見た目のモンスターもいるよ。」
「マッカォやドスマッカォは羽毛が生えてるので、比較的鳥類に近い見た目をしていますね。」
「ただ、鳥竜種って、“鳥”ってつく割に鳥っぽい見た目をしているモンスターは少ないんだよ。
鳥っぽい見た目をしているのは、僕が知ってるのだとイャンクックや、イャンガルルガ、後はちょっと微妙だけどゲリョスが当てはまるかな。
後は鳥…とは言い難い感じのモンスターが殆どだね。」
「鳥っぽくない見た目だと、どんな鳥竜種がいるんですか?」
「そうだね…有名なモンスターだと、ランポス、ジャギィ、ギアノス、ゲネポス、イーオスの5種類かな。」
「どれも聞いた事がないモンスターですね。」
「この世界にはまだ現れていないからね…。
ただ、現れる可能性が高いのはランポスとジャギィの2種類だね。」
「どうしてですか?」
「ランポスとジャギィは比較的どこでも目撃されるモンスターだからだよ。
残りの3種はそれぞれ生息環境が大方決まっていて、ギアノスは雪山等の寒冷地、ゲネポスは砂漠等の乾燥地帯、イーオスは火山地帯に生息している事が多いんだ。
ただ、イーオスは沼地にも現れるから、何とも言えないけどね。」
「あの、鳥竜種には大型モンスターはいるんでしょうか?」
「いるよ。
大型の鳥竜種モンスターは、翼を持っていて空を飛ぶ事ができるんだ。
見た目は飛竜種に近いけど、飛竜種とは違って顔にクチバシがあるんだ。」
「飛竜種…どんな見た目なんでしょう…。」
「んー…それを話していると話が脱線してしまうから、また今度だね。」
「分かりました。
あの、ランポスやジャギィついても教えて欲しいです。」
「わかった。
ただ、ちょっと取って来たい物があるから、少し待っててくれるかな?」
「あ、はい。構いませんよ。」
「ありがとう。」
そう言うと、研究室から出て行くスィーヨ。
暫くすると、分厚い本を抱えて戻って来た。
「スィーヨさん、それは…?」
「モンスターに関する研究資料集だよ。
ぼく、元々は生物学者を目指してたから、日頃からモンスターを観察するのが趣味だったんだよ。
これはその時に集めたデータのスクランブルブックなんだ。」
「すごい…これらのデータを全部自分で…?」
ペラペラとページをめくりながら目を丸くするエルフナイン。
モンスター一体一体の生息地域や習性等が、事細かく記載されている。
エルフナインじゃなくても、長い時間をかけて作った物なのだと分かる代物だった。
「さて、ランポスとジャギィについてだったね。」
「は、はい!」
「えーと、まずはランポスからかな…あった!
コレがランポスだよ。」
ページをめくり、そのうちの1ページを指差す。
そこには、青と黒のストライプ模様の細身の体軀を持つモンスターの絵が描かれていた。
「これがランポス…随分派手な色ですね。」
「目立ちそうな見た目だけど、主な生息域としている森林地帯では立派な保護色になるんだよ。
頭に生えたトサカと前脚から伸びるナイフの様な鉤爪も特徴だね。」
「ランポスも、群れで行動するんですか?」
「うん。
基本的に、小型の鳥竜種モンスターは群れで行動する事が多いね。
もちろんリーダーである“ドスランポス”も存在するよ。」
「なるほど…ジャギィの方は?」
「ジャギィは…これだよ。」
再びページをめくり、そのうちの1ページを指差す。
そこには、まるでエリマキトカゲのエリマキを小さくした様な見た目の耳を持つ小柄なモンスターが描かれていた。
「これがジャギィですか?
なんだか、随分小さい様な…。」
「実際、肉食モンスターの中では1番小さいからね。
因みに、ジャギィはオスとメスで見た目と名前が異なるという珍しい特徴を持っているモンスターでもあるんだ。
オスの個体がジャギィと呼ばれ、メスの個体は“ジャギィノス”って呼ばれるんだ。」
「この絵を見ると、ジャギィよりもジャギィノスの方が大きいんですね。」
「群れのリーダーである“ドスジャギィ”と比べると小さいんだけどね。
ただ、ドスランポスとドスジャギィに共通して言えるのは、
“群れを統率する力がかなり強い事”なんだ。」
「群れを統率する力…ですか。」
「そう。
ドスマッカォの群れを統率する力は乏しいんだけど、ドスランポスやドスジャギィはその逆で、鳴き声や遠吠えで仲間に指示を出して敵を攻撃するんだ。
対峙する事になったら、苦戦するだろうね。
…さて、ここまで鳥竜種について色々話して来たけど、参考にはなったかな?」
「色々勉強になりました。
ただ、肝心のシミュレーターについてはまだ微妙な感じです…。」
「そっか…。
それなら、一緒にそのデータの調整をしようよ。
何かおかしな所があったら言うからさ。」
「本当ですか…!?
ありがとうございます!
では、早速。
ドスマッカォのこんな動きを入れてるんですけど…どうですか?」
「…うーん…ちょっと跳躍の姿勢が変かも。
もう少し、全身がS字を描く様に…」
そんな感じで、エルフナインとスィーヨはデータの整理をするのであった。
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…その頃、とある場所にて…
『…グルルルル…。』
その影は、夜闇を照らす月を背に、深夜の街を見下ろしていた。
『ギャギギャギャギャッ!ギャギギャギャギャッ!』
『ギュアーンッ!ギュアーンッ!』
そこへ、それよりもひとまわり小さな影が4つ集まってくる。
大きな影は、集まった仲間に軽く目を向けるとー
『グォッ!グォッ!グォオオオオオオオオオォンッ!!』
天へ向けて遠吠えをし、夜の街へと姿を消していった。
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…さらに別の場所にて…
『グルルル…。』
とある森の中から、1つの影が姿を現し、とある場所を見つめる。
その先にあったのは、研究施設の様な建物だ。
『グオッ…オオッ…!
ファアオオォォーーン…!!』
突然遠吠えをする黒い影。
『クォッ!オーッ!オッオッオーッ!』
『グオッ!グオッ!グオーッ!』
すると、その遠吠えに呼ばれたのか小さな影とそれよりも一回り大きい影が合計4体現れる。
『グオーッオッオッオッオッオッオッ…!!』
仲間に目をやり咆哮を上げると、その施設へ向けて走り出す。
小さな影達も、それに続いていくのであった。
この時、新たな物語が始まろうとしている事には誰も気付かない。
次回、新章突入です!