戦姫と狩人   作:暇を持て余す火の玉

15 / 44
第2話:世界を超えて

「これが、完全聖遺物『ギャラルホルン』です。」

アインス達を聖遺物保管庫の一室に案内したエルフナインは、目の前に置かれている物を見ながら言った。

アインス達の目の前には、緑色の巻き貝に宝玉の様な物が埋め込まれた様な見た目の不思議な物体が鎮座している。

これこそ、完全聖遺物『ギャラルホルン』である。

 

「これが…ギャラルホルン…。」

「なんつーか…不思議な見た目だな。」

「ああ。

巻き貝みたいな…何かの生き物にも見えるような…。」

「これによって、ぼく達はこの世界に導かれたんだね…。」

「…。」

それぞれ感想を述べるアインス達。

ギャラルホルンは、淡く緑色に光りながら静かに鎮座し続けている。

 

「ギャラルホルンは今も尚多くの謎に包まれています。

何故わざわざ並行世界の異常を知らせるのか、何の為に並行世界を行き来する事を可能にするのか等、未だにその原理や秘密は明らかに出来ていない事が多いです。

そんな中で、更に新しい謎も出来てしまいました…。」

「新しい謎?」

「それが、アインスさん達の事です。

これまで、ギャラルホルンが装者ではない人を通した事は、一度も無かったんです。」

「なるほど。」

「…。」

納得したように頷くスィーヨ。

しかし、ゴロウはずっと黙って考え込んでいた。

 

「すまない、待たせたか。」

そこへ、聖遺物『アメノハバキリ』のギアを纏った翼がやって来た。

 

「いえ。そこまで待っていませんでした。」

「おお、それが翼さんのギアなんだね。

こうして見るとかっこいいなぁ。」

「フフッ…何だか照れるな。」

「つーか、今ギアを纏ってるって事は…。

ギアを纏った状態じゃないとゲートは通れねーのか?」

「ああ。」

「それでは、翼。

向こうとの情報共有、よろしく頼むぞ。

“奏”にも、よろしく言っておいてくれ。」

「わかりました。」

「翼さん、いってらっしゃい!」

「気を付けろよ!」

「わかっている。

では、行ってまいります。」

そう言ってギャラルホルンに近付いた瞬間、保管庫内が緑色の強い光で包まれる。

思わず顔を隠す一同。

そして、光が収まると、翼の姿がその場から消えていた。

 

「今の光が、ギャラルホルンのゲートを潜った時の光なのか?」

「ああ。」

「確かに翼の姿が消えちまった…本当に並行世界へ行っちまったんだな。」

「…さて、アインス君達はこれからどうする?」

「そうだね…シミュレーションルームで訓練をしたいかな。」

「お、良いなそれ。」

「確か、こないだのドスマッカォのデータを追加したんだってな?」

「はい。

まだ調整中なんですが…。」

「いや、ここはそのデータを使ってみようよ。

そうすれば、更に精度が高いデータが出来ると思うよ。」

「なるほど…わかりました。

試験的にドスマッカォのデータを使ってみます!」

「じゃあ、オレ達がテストしてやるぜ!」

「…。」

「…ゴロウ?

どうしたの、さっきから黙り込んでるけど…。」

「…すまない。

…我はもう少しここにいたい。」

「…わかった。

先に行ってるね。」

そうして、アインス達はシミュレーションルームへ向かい、ゴロウは1人ギャラルホルンの前に残った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「彼を1人にして良かったのか?」

「ゴロウはたまに1人になりたい時があるんだ。

そんな時は気の済むまで1人にすれば良いの。」

「ゴロウが1人になりたい時は、真剣な考え事をしている時が殆どだからな。

無理に連れて行くと機嫌が悪くなるんだよ。」

「そうか…。」

「ところで、こちらからも一つ良いかな?」

「む?」

「さっき

“奏にもよろしく言っておいてくれ。”

って言っていたけれど、その“奏”って言うのは誰なの?」

アインスからの質問に、弦十郎は少し暗い表情になる。

 

「…“天羽 奏”。

特異災害対策機動部二課…今のS.O.N.G.の前身に所属していた『ガングニール』の装者だった。」

「ガングニール?

あれ?響さんのギアもガングニールだよね?」

「ああ。

響君の纏うガングニールは、元々は奏が纏っていたギアだった。」

「つまり、奏さんのギアを引き継いだって事?」

「…うむ。」

「…そんでもって、装者“だった”っつー事は…。」

「…ああ。

こちらの世界の奏は、既に亡くなっている。」

「“こちらの世界の”って事は…並行世界では生きてるって事だね。」

「ああ。

今回翼に向かって貰った並行世界は、奏が生きている並行世界という訳だ。」

「出発する時、翼さん何だか嬉しそうだったね。」

「それだけ、奏は翼にとって大切な存在だった事だろうな。」

「奏さんか…どんな人なんだろう…?」

そんな風に呟くスィーヨであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…。」

ギャラルホルンの保管庫内で、ゴロウは正座をしながら考え込んでいた。

 

「…ギャラルホルンが装者だけを通す理由…それは、その並行世界で起こった異常を解決できる力を持った存在を選別しているからだと、エルフナイン殿は言っていた…。」

ならば、自分達は何故この世界に導かれた?

それは、ギャラルホルンが、自分達をあの異変を解決できる力を持った存在であると、認識したからなのではないか?

元々ギャラルホルンによってこの世界に導かれた我々が、何故ここを通れないのか?

 

「…いや。

本当に、装者しか通さないのか?」

ボソリと小さく呟くと、ゴロウその場で立ち上がりギャラルホルンに近付いていく。

ギャラルホルンの目の前まで歩み寄ると、そっと手を伸ばしてみる。

ーすると、

 

「…!

…やはりか。」

伸ばした指先が先程の緑色の光に包まれ、ゴロウは確信した。

ギャラルホルンは、“装者だけを通す”のではない。

“資格を持った者のみを通す”のだと。

ギャラルホルンが自分を通しかけたのは、自分の力を必要としている異変が起こっているのだと。

そう確信したゴロウに、迷いは無かった。

 

「…ギャラルホルンよ。

我々の力が必要な異変が並行世界で起きているならば、我をその世界へ導いてくれ!」

そう言うと、ゴロウは一歩を踏み出した。

その途端、先程の緑色の強い光がギャラルホルンから放たれ、ゴロウを飲み込む。

そして、光が収まった保管庫内にゴロウの姿は何処にも無かった。

こうして、『蒼星の狩人』ゴロウは、並行世界へ向かったのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。