「…その後、アイツらは何処かへ姿を消してしまった。
そして、それ以降時々姿を現す様になったんだ。
奴らは見た目通りの肉食性らしく、これまで人が襲われた事もある。
ここがピリピリしてるのはそう言う理由なんだよ。」
「そうだったんだ…。」
「あの生物について現時点で分かっているのは、
必ずリーダーを含む5頭以上の群れで行動する事、
ボスの遠吠えには、仲間をどこからともなく呼び寄せる効果がある事、
群れで連携して攻撃してくる事、
大体こんな感じね。」
「…。」
「ゴロウ?どうかしたのか?」
ジッと黙り込むゴロウに気付き、声をかける翼。
すると、スッと立ち上がり了子に顔を向けた。
「…了子殿。
其奴らとの戦闘時の映像やデータはあるだろうか?」
「勿論よ!
あの生物…私達は“ラプトル”と仮称しているけど、ラプトルとの交戦時のデータはしっかりとってあるわよ?」
「…では、そのデータを見せて貰いたい。」
「別に良いけど…面白い物ではないわよ?」
そう言ってコントロールパネルを操作する了子。
すると、メインモニターにアンノウンとの交戦データが映し出された。
「これが…ラプトル…。」
「最近は昼にも姿を現す様になったから、詳しい姿を捉える事が出切る様になったんだ。
まさか、こんな色とは思わなかったけど…。」
映し出されたモンスターは、体格は細身で青と黒のストライプ模様が付いている。
頭には赤いトサカが伸び、前脚には赤色のナイフの様な鋭い鉤爪が生えていた。
群れのボスも見た目はほぼ同じだが、体の大きさが子分よりも一回り大きく、体色も濃くなっている。
また、前脚の鉤爪と頭のトサカも大きく立派になっていた。
「…やはり。」
その映像を見て、確信した様に呟くゴロウ。
「…やはり?という事は、アレも…。」
「…そうだ。」
「その反応…ゴロウ君。
君はあのモンスターを知っているのか?」
ゴロウの呟きに気付き、弦十郎が尋ねる。
「…然り。
あれは、我々がいた世界に生息していたモンスターだ。」
「なっ!?
ゴロウのいた世界のモンスター!?」
「という事はあのモンスターについて詳しく知ってたりするかしら?
知ってたら教えて欲しいわ〜。」
「…我の知る範囲で良ければ。
その映像とこの映像を前に出して欲しい。」
「了解よ〜。」
そう言うと言われた2つの映像を前に映し出す。
「…まず、このモンスターの名は“ランポス”という。
鳥竜種に分類される小型の肉食モンスターだ。
大きな体格をした群れのリーダー格は“ドスランポス”と呼ばれる。
ランポスは群れを形成して狩りを行うモンスターで、リーダーであるドスランポスの命令に従って獲物を追い詰める。」
「確かに、これまでのデータを見ても、ドスランポスの咆哮に反応して攻撃を仕掛けて来てるわね。」
「アイツら妙に連携が取れてるからな…そう言う事だったのか。」
「では、先にリーダーを倒してしまえば、連携を崩せるという事か?」
「…確かにそうだ。
だが、ドスマッカォとは違い、ドスランポスは自分が窮地に立たされると、仲間のランポスが助けに来る。
そう簡単には仕留めさせてはくれないだろう。」
「流石にそんな簡単には行かないよな…。」
奏がそう呟いた瞬間、
ーブァーンッ!ブァーンッ!ー
司令室内に、警報が鳴り響いた。
「司令!ノイズが現れました!!」
「ノイズ…そうか、この世界では現れると言っていたな。」
「場所は何処だ!」
「商店街近辺です!
この時間帯だと、人もかなりいるのでこのままでは大きな被害が…!」
「すぐに避難誘導をするんだ!
翼、奏!すぐに現場に急行してくれ!」
「了解です。」
「ああ。」
「ゴロウ君、君はノイズと戦う手段を持っていないから、ここで待機しているんだ。」
「承知。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
商店街近辺、普段なら人々の賑やかな声で溢れているのだが、この時溢れていたのは阿鼻叫喚だった。
原因は、彼等の前に現れた“異形の存在”。
人の様な形をした物もいれば、尾が残った蛙の様な形をした物、どことなくダチョウに似た形をした物、ブドウの房の様な物が生えた人の様な形をした物もいる。
ー『認定特異災害:ノイズ』ー
触れた物を自身もろとも炭素分解する能力を持つ、人類共通の脅威。
その数はみるみる内に増殖し、まさに雑音とも言うべき奇声を上げながら人々に近付いていく。
悲鳴を上げながら逃げ惑う人々。
ーCroitzal ronzell Gungnir zizzlー
ーImyuteus amenohabakiri tronー
そんなカオス極まるその場に似合わぬ歌声が響き、辺りが光に包まれる。
光が収まると、2人の少女がノイズの前に立ちはだかっていた。
「ノイズにランポスとこっちの世界はかなり忙しいな!」
聖遺物『ガングニール』のギアを纏った奏は、ヤレヤレといった風に言った。
「だけど、相手はノイズ。
ランポスと比べたらまだやりやすいんじゃない?」
聖遺物『アメノハバキリ』のギアを纏った翼は、その手に刀を持ちながら言う。
「まぁね。
さて…久し振りにやるぞ!」
「行こう!いざ、推して参る!!」
そう言って、2人は歌声を響かせながらノイズの群れに突撃していった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アメノハバキリ、ガングニール、両者共にノイズとエンゲージ!」
「そこから先には、まだ避難が完了していない一般市民が多数いる!
避難が完了するまで、ノイズを先に進めるな!!」
[りょーかい!やってやるよ!]
[分かりました!ここから先へ、ノイズは進ませません!]
「…あれがノイズ…。
実際に目にするのは初めてだ。
…しかし、奏殿が纏っているギア…見た目は若干異なるが、やはり…。」
「そう。
響ちゃんが纏うギアと同じ、ガングニールのギアよ。」
「やはり…。
それにしてもあの2人、連携が中々上手いな。」
「世界は違っても、2人は元々ツヴァイウィングとして活動して来たからね〜。
戦いでもその連携は素晴らしいわよ。」
「…ツヴァイウィング?」
「2人で結成していたボーカルユニットよ。
歌手って言えばわかるかしら?」
「…すまぬが、我々のいた世界ではそういったものは無かったので、何を言ってるのかさっぱり分からないのだ。」
「あらもったいない。
機会があったら、あの2人の歌を聞いてみると良いわ。」
「…検討しておこう。」
そう呟きゴロウはメインモニターに目を向ける。
メインモニターでは、奏と翼の2人が連携してノイズを次々と殲滅している。
このままいけば、ノイズの完全殲滅は時間の問題だろう。
…だが、ゴロウの脳内では、“ある可能性が起こる事”を危惧していた。
「…人々の混乱…取り逃した獲物…奴らがこの好機を逃すとは思えぬが…。
…我の杞憂で終わる事を祈ろう…。」
そう小さく呟くのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁあああっ!!」
叫びと共にノイズを斬り伏せる翼。
ダチョウ型のノイズが粘着液を放って来るが、それも余裕で回避し斬り伏せる。
「いざ、参る!」
そう叫ぶと、手にした刀が大剣の様な姿に変化した。
そのまま高く跳躍し、一気に振り下ろす。
すると、剣閃が蒼光の刃として放たれた!
ー『蒼ノ一閃』ー
放たれた光の刃は、軌道上にいたノイズを纏めて切り裂いた。
「流石は翼、やるねぇ!
だが、あたしだって負けてないぞ!」
そう言うと、その手に握った巨大な槍を持って高く跳躍し、地上にいるノイズへ向けて投擲する。
その途端、同じ槍が大量に複製され、槍の雨が降り注いだ!
ー『STARDUST∞FOTON』ー
降り注いだ槍の雨は、大量のノイズを貫いた。
その時、司令室から通信が入った。
[2人共!一般市民の避難は殆ど完了したわ!
あともう少しだけ耐えて!]
「わかりました。奏!」
「こっちもだいぶ倒したから、後もう一踏ん張りだな!」
視界に入るノイズもだいぶ数が減って来た。
この調子なら行ける。
そう思った時だった。
[っ!?待って2人共、また別の反応が現れたわよ!]
「別の反応?櫻井女史、それは一体!?」
[待ってて、今解析するから…。…これは…!]
「了子さん?」
[2人共、気を付けなさい!この反応はー]
『ギャギギャギャギャッ!ギャギギャギャギャッ!!』
『ギュアーン!ギュアーン!!』
その続きを遮る様に、辺りに響き渡る鳴き声。
それを聞いて、奏は了子が言おうとしていた事を瞬時に理解した。
「…ああ、なるほど。
まさかこのタイミングで現れるとはね…!」
そう呟き背後に目をやる奏。
その目に映ったのは、ドスランポスが率いるランポスの群れだ。
その数、数十頭。
「奏、アレは!」
「ああ。
このタイミングで現れるとは思わなかったけど…。
しかも、かなりの大人数と来た!
でも…やるっきゃないよな!
翼!あたしはランポスを喰い止める!」
「わかった!私はノイズを殲滅する!」
そう言って背中合わせになってそれぞれの武器を構える2人。
『グルルルル…!
グオッ!グオッ!!グォオオオオオオオッ!!!』
ドスランポスが咆哮を上げると同時に、
“青藍の狩人”の狩りが始まった。