戦姫と狩人   作:暇を持て余す火の玉

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第5話:雑音と青藍の狩人

「…その後、アイツらは何処かへ姿を消してしまった。

そして、それ以降時々姿を現す様になったんだ。

奴らは見た目通りの肉食性らしく、これまで人が襲われた事もある。

ここがピリピリしてるのはそう言う理由なんだよ。」

「そうだったんだ…。」

「あの生物について現時点で分かっているのは、

 

必ずリーダーを含む5頭以上の群れで行動する事、

ボスの遠吠えには、仲間をどこからともなく呼び寄せる効果がある事、

群れで連携して攻撃してくる事、

 

大体こんな感じね。」

「…。」

「ゴロウ?どうかしたのか?」

ジッと黙り込むゴロウに気付き、声をかける翼。

すると、スッと立ち上がり了子に顔を向けた。

 

「…了子殿。

其奴らとの戦闘時の映像やデータはあるだろうか?」

「勿論よ!

あの生物…私達は“ラプトル”と仮称しているけど、ラプトルとの交戦時のデータはしっかりとってあるわよ?」

「…では、そのデータを見せて貰いたい。」

「別に良いけど…面白い物ではないわよ?」

そう言ってコントロールパネルを操作する了子。

すると、メインモニターにアンノウンとの交戦データが映し出された。

 

「これが…ラプトル…。」

「最近は昼にも姿を現す様になったから、詳しい姿を捉える事が出切る様になったんだ。

まさか、こんな色とは思わなかったけど…。」

映し出されたモンスターは、体格は細身で青と黒のストライプ模様が付いている。

頭には赤いトサカが伸び、前脚には赤色のナイフの様な鋭い鉤爪が生えていた。

群れのボスも見た目はほぼ同じだが、体の大きさが子分よりも一回り大きく、体色も濃くなっている。

また、前脚の鉤爪と頭のトサカも大きく立派になっていた。

 

「…やはり。」

その映像を見て、確信した様に呟くゴロウ。

 

「…やはり?という事は、アレも…。」

「…そうだ。」

「その反応…ゴロウ君。

君はあのモンスターを知っているのか?」

ゴロウの呟きに気付き、弦十郎が尋ねる。

 

「…然り。

あれは、我々がいた世界に生息していたモンスターだ。」

「なっ!?

ゴロウのいた世界のモンスター!?」

「という事はあのモンスターについて詳しく知ってたりするかしら?

知ってたら教えて欲しいわ〜。」

「…我の知る範囲で良ければ。

その映像とこの映像を前に出して欲しい。」

「了解よ〜。」

そう言うと言われた2つの映像を前に映し出す。

 

「…まず、このモンスターの名は“ランポス”という。

鳥竜種に分類される小型の肉食モンスターだ。

大きな体格をした群れのリーダー格は“ドスランポス”と呼ばれる。

ランポスは群れを形成して狩りを行うモンスターで、リーダーであるドスランポスの命令に従って獲物を追い詰める。」

「確かに、これまでのデータを見ても、ドスランポスの咆哮に反応して攻撃を仕掛けて来てるわね。」

「アイツら妙に連携が取れてるからな…そう言う事だったのか。」

「では、先にリーダーを倒してしまえば、連携を崩せるという事か?」

「…確かにそうだ。

だが、ドスマッカォとは違い、ドスランポスは自分が窮地に立たされると、仲間のランポスが助けに来る。

そう簡単には仕留めさせてはくれないだろう。」

「流石にそんな簡単には行かないよな…。」

奏がそう呟いた瞬間、

 

ーブァーンッ!ブァーンッ!ー

 

司令室内に、警報が鳴り響いた。

 

「司令!ノイズが現れました!!」

「ノイズ…そうか、この世界では現れると言っていたな。」

「場所は何処だ!」

「商店街近辺です!

この時間帯だと、人もかなりいるのでこのままでは大きな被害が…!」

「すぐに避難誘導をするんだ!

翼、奏!すぐに現場に急行してくれ!」

「了解です。」

「ああ。」

「ゴロウ君、君はノイズと戦う手段を持っていないから、ここで待機しているんだ。」

「承知。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

商店街近辺、普段なら人々の賑やかな声で溢れているのだが、この時溢れていたのは阿鼻叫喚だった。

原因は、彼等の前に現れた“異形の存在”。

人の様な形をした物もいれば、尾が残った蛙の様な形をした物、どことなくダチョウに似た形をした物、ブドウの房の様な物が生えた人の様な形をした物もいる。

ー『認定特異災害:ノイズ』ー

触れた物を自身もろとも炭素分解する能力を持つ、人類共通の脅威。

その数はみるみる内に増殖し、まさに雑音とも言うべき奇声を上げながら人々に近付いていく。

悲鳴を上げながら逃げ惑う人々。

 

ーCroitzal ronzell Gungnir zizzlー

ーImyuteus amenohabakiri tronー

 

そんなカオス極まるその場に似合わぬ歌声が響き、辺りが光に包まれる。

光が収まると、2人の少女がノイズの前に立ちはだかっていた。

 

「ノイズにランポスとこっちの世界はかなり忙しいな!」

聖遺物『ガングニール』のギアを纏った奏は、ヤレヤレといった風に言った。

 

「だけど、相手はノイズ。

ランポスと比べたらまだやりやすいんじゃない?」

聖遺物『アメノハバキリ』のギアを纏った翼は、その手に刀を持ちながら言う。

 

「まぁね。

さて…久し振りにやるぞ!」

「行こう!いざ、推して参る!!」

そう言って、2人は歌声を響かせながらノイズの群れに突撃していった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「アメノハバキリ、ガングニール、両者共にノイズとエンゲージ!」

「そこから先には、まだ避難が完了していない一般市民が多数いる!

避難が完了するまで、ノイズを先に進めるな!!」

[りょーかい!やってやるよ!]

[分かりました!ここから先へ、ノイズは進ませません!]

「…あれがノイズ…。

実際に目にするのは初めてだ。

…しかし、奏殿が纏っているギア…見た目は若干異なるが、やはり…。」

「そう。

響ちゃんが纏うギアと同じ、ガングニールのギアよ。」

「やはり…。

それにしてもあの2人、連携が中々上手いな。」

「世界は違っても、2人は元々ツヴァイウィングとして活動して来たからね〜。

戦いでもその連携は素晴らしいわよ。」

「…ツヴァイウィング?」

「2人で結成していたボーカルユニットよ。

歌手って言えばわかるかしら?」

「…すまぬが、我々のいた世界ではそういったものは無かったので、何を言ってるのかさっぱり分からないのだ。」

「あらもったいない。

機会があったら、あの2人の歌を聞いてみると良いわ。」

「…検討しておこう。」

そう呟きゴロウはメインモニターに目を向ける。

メインモニターでは、奏と翼の2人が連携してノイズを次々と殲滅している。

このままいけば、ノイズの完全殲滅は時間の問題だろう。

…だが、ゴロウの脳内では、“ある可能性が起こる事”を危惧していた。

 

「…人々の混乱…取り逃した獲物…奴らがこの好機を逃すとは思えぬが…。

…我の杞憂で終わる事を祈ろう…。」

そう小さく呟くのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はぁあああっ!!」

叫びと共にノイズを斬り伏せる翼。

ダチョウ型のノイズが粘着液を放って来るが、それも余裕で回避し斬り伏せる。

 

「いざ、参る!」

そう叫ぶと、手にした刀が大剣の様な姿に変化した。

そのまま高く跳躍し、一気に振り下ろす。

すると、剣閃が蒼光の刃として放たれた!

 

ー『蒼ノ一閃』ー

 

放たれた光の刃は、軌道上にいたノイズを纏めて切り裂いた。

 

「流石は翼、やるねぇ!

だが、あたしだって負けてないぞ!」

そう言うと、その手に握った巨大な槍を持って高く跳躍し、地上にいるノイズへ向けて投擲する。

その途端、同じ槍が大量に複製され、槍の雨が降り注いだ!

 

ー『STARDUST∞FOTON』ー

 

降り注いだ槍の雨は、大量のノイズを貫いた。

その時、司令室から通信が入った。

 

[2人共!一般市民の避難は殆ど完了したわ!

あともう少しだけ耐えて!]

「わかりました。奏!」

「こっちもだいぶ倒したから、後もう一踏ん張りだな!」

視界に入るノイズもだいぶ数が減って来た。

この調子なら行ける。

そう思った時だった。

 

[っ!?待って2人共、また別の反応が現れたわよ!]

「別の反応?櫻井女史、それは一体!?」

[待ってて、今解析するから…。…これは…!]

「了子さん?」

[2人共、気を付けなさい!この反応はー]

 

『ギャギギャギャギャッ!ギャギギャギャギャッ!!』

『ギュアーン!ギュアーン!!』

その続きを遮る様に、辺りに響き渡る鳴き声。

それを聞いて、奏は了子が言おうとしていた事を瞬時に理解した。

 

「…ああ、なるほど。

まさかこのタイミングで現れるとはね…!」

そう呟き背後に目をやる奏。

その目に映ったのは、ドスランポスが率いるランポスの群れだ。

その数、数十頭。

 

「奏、アレは!」

「ああ。

このタイミングで現れるとは思わなかったけど…。

しかも、かなりの大人数と来た!

でも…やるっきゃないよな!

翼!あたしはランポスを喰い止める!」

「わかった!私はノイズを殲滅する!」

そう言って背中合わせになってそれぞれの武器を構える2人。

 

『グルルルル…!

グオッ!グオッ!!グォオオオオオオオッ!!!』

ドスランポスが咆哮を上げると同時に、

“青藍の狩人”の狩りが始まった。

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