戦姫と狩人   作:暇を持て余す火の玉

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第6話:蒼星推参

「くっ!まさかここで姿を現すとは!!」

司令室内で、弦十郎は焦りの言葉を放った。

ランポス達もノイズの脅威を察していたのか、これまで姿を現すのは、“ノイズが消滅した後”だった。

しかし、今回は“ノイズがまだ残っている”にも関わらず姿を現したのだ。

 

「今までのデータから今回は姿を現さないと思っていたのに…!

どうして急に!?」

「…これは私の完全な想像だけれど…。

もしかしたら、ランポス達は奏ちゃんがノイズと戦っている最中が一番体力を消耗している事を学習してしまったのかもしれないわ。

それと、奏ちゃんがギアを纏える時間には制限がある事も知ってしまっているかもしれない。」

了子の推測に、弦十郎は驚きを露わにする。

彼女の言った通り、奏がガングニールのギアを纏う事が出来るのはLiNKERを投与しているからであり、それが切れてしまったらギアは強制解除されてしまうのだ。

 

「奏のLiNKERの効果が切れるまで、後どれくらいだ!」

「そうね…長く見積もって後数分かしら…。

このままだと不味いわね…。」

「くっ!効果が切れるまでに倒し切れるか…!?」

険しい表情で告げられたそのタイムリミットに、弦十郎は焦りの表情を浮かべる。

緊張で満たされる司令室内で、了子はある事に気が付いた。

 

「…あら…?ゴロウちゃんがいないわね…?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ハアッ…ハアッ…!

コイツら…どんだけ出てくるんだよ…!?」

息を切らしながら槍を地面に突き立てながら立つ奏。

彼女の前には、ランポスの群れが集まって来ていた。

動きが比較的単純なノイズと違い、ランポスはドスランポスの咆哮に反応して連携攻撃を仕掛ける為、戦いずらいのだ。

更に、LiNKERの効果が切れ始め、全力を出せなくなって来たのも重なり、体力も少しずつ限界が来ていた。

翼も奏の元に参戦したかったが、ノイズはまだ残っている為中々援助に向かえなかった。

 

「くそ…槍が重い…!そろそろやばい…!」

ランポスの飛び掛かりを転がって回避しながら呟く。

 

『ギャアギャギャアッ!!』

「なっ!?」

その時、一匹のランポスが隙を突いて飛び掛かってきた。

体力が減り動きが鈍くなっていた奏は、反応が遅れてしまう。

 

「奏ぇっ!」

「っ!!」

翼の悲鳴が響き、思わず目をきつく閉じる奏。

だが…

 

ーザキィ…ィイン…ッ!ー

『ギュワアッ!?…ギュォォ…。』

 

その刹那、金属音と共にランポスの悲鳴の様な鳴き声が響く。

今、何が起こった?

そう思いながら奏は目を開けた。

そこにはー

 

「…お二方、待たせて申し訳ない。助太刀に参った!」

抜身になった太刀を握り、何処か和を感じる青い服装に青色の傘を被った少年ーゴロウが、ランポスを斬り伏せた光景が広がっていた。

 

「な…お前…!?

なんでここに来た!?」

「…決まっている。

お二方を助けに、そして、このモンスターを狩る為だ。」

「ここにはノイズもいるんだぞ!?

ノイズはお前でも…!」

「わかっている。

だから、奏殿には翼殿と共にノイズの殲滅に集中して欲しい。

お二方の連携があれば、あれくらいの量はすぐに片付くであろう。」

「でも、その間このランポスが…!」

「…ランポスやドスランポスに遅れを取る我ではない。

ランポスの群れは我が引き受けよう。」

[奏ちゃん、私も彼の言う事には賛成よ。

ノイズはシンフォギアでしか対応出来ないけど、ランポスは彼でも倒す事が出来るわ。

ここは彼にランポスを任せましょう!]

「了子さん…。」

了子からの通信も入り、奏はゴロウの言う通りにする事に決めた。

 

「…わかった。

あんたを信じてるからな!」

そう言って、奏はノイズと戦う翼の元へ向かった。

 

「…任せよ。お二方の背中は、我が守る!

“五星の狩人”が一人、“蒼星の狩人”ゴロウ…推して参るっ!!」

そう叫び、ゴロウはランポスの群れに斬り込んで行った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ガングニール、アメノハバキリと共にノイズと再交戦!

ゴロウもランポスの群れと交戦を開始しました!」

「…了子君…。

…本当に、彼に任せて大丈夫だったのか…?」

メインモニターを見ながら呟く弦十郎。

ゴロウは、まだ年若い少年、いや、もはや子供と呼んでもいい様な外見だ。

そんな彼が、たった1人でかなりの量のランポスを相手にするのは、普通に考えたら自殺行為にも等しいので、無理もない。

 

「そこは大丈夫だと思うわよ、弦十郎くん。

さっき渡された資料を見た感じだと、あれくらいの量のモンスターは、彼にとっては充分対応出来るらしいから。」

「しかし…彼の行為は、一般人が戦場に自ら飛び込む様なものだぞ。」

「…確かに、彼が“一般の人”だったら、私も同じ事を考えたでしょうね。

でも、彼は普通の人間ではなくて、あの生き物のエキスパートよ。

彼に対して、私達はあの生き物について殆ど知らない、言ってみれば素人に等しいわ。

素人が闇雲に手を出すよりも、専門家に任せた方が良いと、私は判断したから、彼に任せたの。

…それに…これは完全に女の勘みたいなものだけど…。

彼は、何か“隠し玉”を持っている様な気がするのよね。」

口元に手を当てながら、最後に小さく呟く了子であった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『ギャギギャギャギャッ!ギャギギャギャギャッ!!』

けたたましく鳴きながら、飛び掛かりや噛みつき等で攻撃してくるランポスの群れ。

 

「…ふっ!」

しかし、それを見切った様に回避しながらカウンター斬りをして行く。

これまで何度もランポスを狩猟して来たゴロウには、ランポス達の動きが手に取るようにわかる。

どさくさに紛れて翼達の元へ向かおうとするランポスもいたが、そこを突破しようとしたランポスは、長いリーチが特徴である太刀によりその行手を阻まれ、次々と斬り捨てられて行く。

 

「…凄いな、本当にあの量のランポスを抑え込んでるぞ!?」

「彼の太刀捌きを見るのは私も初めてだが、まさかあれほどの腕前だったとは…。」

「あたし達も負けていられないね!

行くぞ、翼!あたし達の連携攻撃で、一気に終わらせるぞ!」

「わかった!」

そう言うと、2人はそれぞれの武器を構える。

 

「これで、もらった!!」

槍を地面に突き刺し、奏はエネルギーを一気に解き放ちながら引き抜く。

すると、槍を刺した箇所から地割れと共に衝撃波が巻き起こる。

 

「覚悟!」

同時に、翼は刀の先を地面に突き刺しながら猛進、一気に抜き払った。

その瞬間、抜き払った剣閃が蒼炎の刃となり、ノイズに放たれる。

 

ー『SATURN∞BREAK』ー

ー『疾駆ノ炎閃』ー

 

地割れと炎の刃は、残っていたノイズを全て消し飛ばした。

 

[作戦領域内のノイズ全滅を確認!

残りはランポスとドスランポスだけです!]

「ゴロウ1人では、流石に抑え切るのは難しい。

私達も加勢するぞ!」

「ああ!

…と、言いたい所だが…。」

そう言った瞬間、奏の纏うギアが消滅し、元の服装に戻ってしまった。

LiNKERの効果が切れたらしい。

 

「…悪い、さっきので力を使い切っちまったみたいだ…。

だから、翼…。」

「奏…わかった。

あとは私とゴロウに任せて!」

そう言って、翼はゴロウの元へ向かった。

 

「ふんっ!せっ!はっ!!」

その頃、ゴロウは向かって来るランポスを次々と斬り伏せていた。

ランポスの数は少しずつ減っているが、未だに殲滅は出来ていない。

その原因はー

 

『ギャギギャギャギャアッ!!

グオッ!グオッ!グォオオオオオオッ!!』

そう、ドスランポスだ。

幾らランポスを倒しても、ドスランポスが咆哮で何処からか仲間を呼び寄せるので、中々数が減らないのだ。

これは、少し不味い…そう思った矢先だった。

 

「はぁあああっ!!」

声と共に青い光の刃が煌めき、ランポスの群れの大多数を吹き飛ばした。

 

「遅れてすまない!

貴方のおかげで、ノイズは無事に殲滅出来た。

ここからは私も参戦する!」

「翼殿!

奏殿は?」

「奏は、今はあそこで休んでいる。

奏も来れたら良かったのだが…。」

「いや、一人だけでも増援はありがたい。」

「それにしても、あまり数が減っていない様に見えるが…。」

「ランポスを倒しても、ドスランポスによって新しく仲間を呼ばれてしまうのでな…!

このままでは、幾ら倒してもキリが無い!」

飛びかかって来たランポスを叩き切りながら言う。

 

「ならば、どうする!?」

「決まっておろう。

…ドスランポスを叩く。

だが、その為にはランポスの群れの壁を突破しなければならない。」

「ならば、その壁は私が斬り破る!はぁあああっ!!」

そう言うと同時に、『蒼ノ一閃』で半数以上のランポスを吹き飛ばす。

ドスランポスを守る壁が薄くなるが、まだあと少し届かない。

 

「残りの道は、我自身で切り開く…!

ノイズを見事に殲滅したお二方に敬意を表し…我も見せよう…。

我が“狩技”を…!!」

そう呟き、太刀を構えると、全身を2回横回転させながら太刀を大きく薙ぎ払う。

その刹那、剣閃上に桜の花弁が舞い散った…次の瞬間。

 

『ギャギャアッ!!?』

大量のランポスが斬り捨てられ、ゴロウの前にドスランポスへの道が開いた。

ゴロウが持つ狩技…『桜花気刃斬』。

了子が予測していた“隠し玉”だ。

蒼ノ一閃と桜花気刃斬によって、殆どのランポスが倒された。

残るのは片手で数えられる程度の量まで減ったランポスと、ドスランポスだけだ。

 

「…ドスランポス、お覚悟!!」

『グルルル!

クァアオッ!クァアオッ!!クァアアオッ!!!』

遂に怒り状態に突入したドスランポスは、ゴロウに向かって飛び掛かる。

 

「甘いっ!!」

しかし、ゴロウはその攻撃をしっかりと回避する。

そして、そこに翼が斬り込んでくる。

 

「はぁあっ!」

刀を振り下ろした瞬間、ドスランポスの頭のトサカが砕け散り、同時に全身を仰け反らせた。

 

「隙あり!!」

その隙を逃さず、ゴロウは太刀を横に薙ぎ払った。

…その時だった。

 

「う、うわぁああああっ!!」

「「!?」」

突然、奏の悲鳴が響き渡った。

見てみると、なんとランポスに押さえ付けられてるではないか!

 

「奏!?」

「しまった…!ドスランポスに気を取られ過ぎたか…!」

助けに行こうにも、距離が離れ過ぎていて間に合いそうにない。

押さえ付けたランポスが、奏に喰らい付こうとしたー

ーその瞬間だった。

 

ーベチャッ!ー

 

ランポスの顔に小さな物が飛んで行き、粘性のある液体の様な音と共に弾ける。

その瞬間、動物の糞の様な悪臭が奏の嗅覚を突いた。

 

「うっ!くっさ!?なんだこの臭い!?」

『ギャギャアッ!?』

ランポスもその悪臭には敵わず、悲鳴を上げながら何処かへと走り去っていった。

その様子から、ゴロウは飛んできた物が“こやし玉”である事を見抜いた。

そして、その飛んできた方に目を向けると…。

 

「ふぅ…やっと見つけたよ、ゴロウ。」

「ったくよ…1人でどっか行くんじゃねえっつうの!!」

「うわ!本当にいた!?」

「取り敢えず、見つかって良かったな。

色々危なかったみたいだし。」

そこには、何かを投げたような体勢をとるアインスとテイン、ギアを纏った立花響と雪音クリスの姿があった。

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