戦姫と狩人   作:暇を持て余す火の玉

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第9話:姉妹と狩人

「セレナァアアアアアアッ!!」

モンスターと戦う少女を見て、マリアは思わず叫んだ。

 

「“ジャギィ”の群れと戦ってるあの子がセレナか!

やっぱりこっちに来てみて正解だったな!」

「ええ!私達も加勢するわよ!!」

「ああ!一狩り行くとするか!」

そうして、マリアは短剣を、アルニは双剣を手に持つと少女の元へ全速力で走り始めた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はあ…はあ…!」

F.I.S.聖遺物研究所前で、“セレナ・カデンツァヴナ・イヴ”は息を切らしていた。

彼女の前には、モンスターの群れが集まって来ている。

エリマキトカゲのエリマキの様な形状をした耳に、橙色と紫色の体色をした小型の肉食恐竜の様な見た目のモンスターと、それよりも一回り大きな体格をしたモンスター、

“ジャギィ”と“ジャギィノス”の群れだ。

 

『クオッ!オーッ!オッオッオーッ!!』

『グォッ!グォッ!グォーッ!!』

鳴き声を上げながらセレナを取り囲むジャギィ達。

 

「あなた達がどうしてここを執拗に攻撃するのか、わたしにはわかりません…。

ですが…ここから先へは行かせません!」

自分が倒れれば、次はこの研究所が襲われる。

だから、ここで負けるわけには行かない!

そう自分に言い聞かせ、気力を振り絞って立ち上がると、短剣を構える。

 

『クオッ!!』

『グオーッ!』

立ち上がるセレナに、ジャギィやジャギィノスは襲い掛かる。

 

「えいっ!!」

それに対して、短剣を振るって飛び掛かるジャギィを斬り伏せる。

だがー

 

『グォオオッ!!』

 

ードンッ!ー

 

「きゃあっ!?」

ジャギィノスが死角からタックルを仕掛けて来て、それをモロに喰らってしまう。

小柄なセレナと比べると、ジャギィノスはかなり大きな体格な為その威力もバカにならない。

吹っ飛ばされたセレナは、地面に倒れ込む。

何とか立ち上がろうと顔を上げた時には、ジャギィがセレナに噛みつこうとしていた。

 

「っ!」

思わず目を閉じたその時ー

 

「はぁあああっ!!!!」

 

ーザンッ!ー

 

『クオッ!?』

女性の叫び声と共に、斬撃の音が響き、ジャギィの悲鳴が聞こえて来る。

その女性の声に、セレナは顔を上げた。

 

「セレナ、大丈夫だった?」

自分を心配するその女性を見て、セレナは瞳を輝かせた。

 

「マリア姉さん…!来てくれたの…!?」

「ええ。かわいい妹が心配になってね。」

「姉さん…。」

「ウララララァアアアアアッ!」

そこへ、ジャギィを次々と斬り伏せながらアルニが走って来た。

 

「ギリギリだったな!大丈夫か!?」

「ええ、何とかね。」

「あなたは?」

「安心して、彼は私達の味方よ。」

その時だった。

 

…アォォォォン…!

 

『!クオッ!クオッ!!』

何処からか遠吠えの様な鳴き声が聞こえて来ると、ジャギィの群れが突然森の方へ走り始め、全ていなくなってしまった。

 

「…いなくなった…?」

「今回はこの辺にしてやるって事か?

全く舐めた真似を…。」

「…ぁ…。」

その時、まるで糸が切れた人形の様に、セレナは倒れてしまう。

 

「セレナっ!?」

「…大丈夫。眠っただけだ。

多分、俺達が来るまでずっと戦っていたんだろうな。」

「ここで寝かせるのは不味いわ。

早く運ばないと!」

「だな!俺がセレナを運ぶから、マリアは案内頼む。」

そう言うと、アルニはセレナをおんぶした。

そして、2人はそのまま研究所内に入って行った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「2人共、お待たせしました。」

研究所内のメインルーム。

そこに、老練の女性“ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ”がやって来た。

 

「マム…セレナは大丈夫なの?」

「ええ。

連戦による疲労の蓄積が原因です。

暫くすれば、目を覚ますでしょう。」

「そう…良かったわ…。」

「さて…先程名前は伺いましたが、改めて自己紹介を。

私は“ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ”。

ここの責任者です。」

「俺はアルニ。

並行世界からやって来たハンターだ。

よろしく頼むぜ。」

「こちらこそ。

さて、セレナが目覚めるまでの間に、こちらで起こっている出来事を簡潔に説明します。」

「お願いするわ。」

「ああ、頼む。」

「あの生き物が最初に確認されたのは、今から1週間程前の事です。

最初は、研究所敷地内の森の奥に数匹が目撃されていましたが、日を追う毎に次第に数や目撃頻度が増えていきました。

そして、5日程前にあの生き物が研究所の前まで姿を現し、無理矢理侵入しようとし始めたのです。」

「マジかよ…。」

「最初は数匹程度の数だったのですが、それから毎日の様に侵入しようとする様になり、その度に数も増え始め、最近では数十頭程の数にまで増えて来ました。」

「セレナは、それからずっと…?」

「…ええ。

彼等は昼夜問わずやって来るので、セレナもここ最近は連戦続きで…。」

「…なるほど。

となると、あのモンスターの群れを此処に近付けさせないようにしないといけないわね。」

「それなら、俺に考えがあるぜ。」

「何か策があるの?」

「聞かせてください。」

「勿論だ。

ただ、その為に必要な物がある。

ナスターシャさん、至急用意して欲しい物があるんだが…。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アルニが必要な物を伝えて、ナスターシャがそれを用意する為、メインルームを後にしてから数分後。

セレナがやって来た。

 

「姉さん!」

「セレナ。もう起きて大丈夫なの?」

「うん。

しっかり休む事が出来たから。」

「それは良かったな。」

元気そうなセレナを見て、アルニは安心した様に微笑む。

 

「貴方は、さっきの…。」

「さっきはドタバタしてたから、自己紹介が遅れちまったな。

俺はアルニ、並行世界から来たハンターだ。

今はマリア達の世界で世話になってる。」

「アルニさん…ですね。

わたしは、“セレナ・カデンツァヴナ・イヴ”です。

マリア姉さんの妹です。」

「よろしくな、セレナ。

それにしても、姉妹だけあってマリアと似てるな。

しかもかわいい…。」

「ふふっ…なんだか照れます。

ところで、さっき“ハンター”って言ってましたけど…。」

「ああ。

さっきセレナが戦っていた様なモンスターの専門家さ。」

「私達の世界にも、セレナが戦っていた様なモンスターが現れたの。

その時、彼等の知識はとても頼りになるわ。」

「彼“等”っていう事は、他にも仲間がいるんですか?」

「ああ。

俺以外に後4人いるぜ。

この後の状況によっては、もしかしたら応援に来てもらうかもしれないから、その時に改めて紹介するよ。」

「わかりました。」

「…ところで、さっきあのモンスターの事を“ジャギィ”と呼んでいたわよね。

と言う事はつまり…。」

「…ああ。

奴等も、元々は俺のいた世界のモンスターだ。」

「やっぱり…。」

「(…それにしても、マッカォ、ランポスと来て、今度はジャギィ。

それぞれの並行世界にそれぞれモンスターが現れてる…。

一体どうなってるんだ?)」

胸中に抱いた疑問を、顔には出さないまま熟考するアルニであった。

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