戦姫と狩人   作:暇を持て余す火の玉

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第10話:群れを束ねる者

互いに自己紹介を終えて、他愛もない雑談をしていた時、ナスターシャがメインルームに戻って来た。

 

「アルニさん。

先程言われた物が用意出来ました。」

「ありがとう、ナスターシャさん。」

「しかし…本当にコレであの生き物が近付けなくなるんですか?」

「近付きにくくさせる事は出来ると思うぜ。

さて、材料が揃ったら、早速作業開始と行くか!

2人も手伝ってくれるか?」

「わたしに出来る事なら、何でもします!」

「ええ。」

「よし、外へ行くぞ!」

そうして、3人は外へ移動した。

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外へ出てみると、そこには交通規制などに使われるバリケードと、太めの木の枝に油を染み込ませた布を巻いた物が用意されていた。

 

「よしよし…これだけあれば充分だな。」

「これって…もしかして松明?」

「ああ。

ジャギィ達は炎が大の苦手で、松明とかに近寄ろうとしない性質がある。

その性質を利用して、松明のバリケードを作るんだ!」

「なるほど…詳しいんですね。」

「そうでもないさ。

今言ったのだって受け売りだしな。

さあ、始めるぞ!」

それから暫くの間、アルニ達は松明のバリケードを作った。

 

…1時間後…

 

「よし!完成だ!!」

松明に火を付けるとアルニは声を張り上げる。

F.I.S.聖遺物研究所の前には、煌々と炎を灯す松明のバリケードが出来ていた。

 

「これで少しは抑えられる筈だ。」

「本当に…大丈夫なのよね…?」

「ああ。

それにしても、これだけの量の松明を短時間で用意するなんてな…。

ナスターシャさんも凄いな…。」

小さく呟いた時だった。

 

『クオッ!オーッ!!』

森の中から一頭のジャギィが現れて、研究所へ走って来る。

しかし、松明のバリケードまで来ると、急に怯えた様に弱腰になる。

そして、何もしないでそのまま森へ姿を消してしまった。

 

「な?」

「すごい…本当に効果があった!」

「炎が苦手というのは間違いないようね。」

「だが、いつまでも持つ訳ではないから、今の内に対策を練らないとな。」

「ええ。

マムの所へ戻りましょう。」

そうして、3人は再び研究所へ入って行った。

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「…そうですか。

効果は確かにあったのですね。」

「はい。」

「では、この間に対策を練るとしましょう。

まずはあの生き物についての情報を纏める必要があります。

アルニさん、マリアから聞いた話では貴方はあの生き物の事をご存じの様ですね。

詳しく教えてもらえますか?」

「ああ。

といっても、俺の知ってる範囲の話になるけどな…。」

そう呟くと、テーブルに置かれた資料の写真を指差しながら話し始める。

 

「まず、このモンスターは“ジャギィ”というんだ。

鳥竜種に分類される小型の肉食モンスターで、肉食モンスターの中では最も体が小さい。」

「確かに、マッカォと比べたら小さいわね…。」

「すばしっこく動き回るが、体が小さいから力はあまり強くない。

だけど、群れでの連携でそういった弱点を補うんだ。

その連携はかなり高度で、時には自分達の2、3倍の大きさのモンスターを仕留める事がある。」

「確かに…ジャギィ達は連携がかなり取れていました。

わたしも、あの時姉さん達が来てくれなかったら…。」

「…本当に危なかったわね。」

「…なるほど…。

ジャギィ達については大体わかりました。

ですが、ジャギィ達は何故この研究所に侵入しようとして来るのでしょう?」

「餌を漁る為かしら…。

…いや、それなら別にここに執着する必用はない筈ね…。

食べ物がある場所なんて、ここの他に探せばいくらでもあるのだから。」

「…俺としては、あの群れの中に“ジャギィノス”が混ざっていた事が気になるんだよな…。」

「ジャギィノス…?

もしかして、ジャギィよりも大きな体のモンスターの事?」

「そう。

ジャギィはオスメスで姿と名前が異なる珍しい特徴を持ってるモンスターだ。

オスの個体が“ジャギィ”と呼ばれ、メスの個体が“ジャギィノス”と呼ばれる。

ジャギィノスは、ジャギィよりも体が大きく、体色も微妙に違うのが特徴だ。」

「それで、なんでジャギィノスが混ざっていた事が気になるのですか?」

ナスターシャの問いに対し、アルニは難しい表情になる。

 

「ジャギィノスは、自分の卵を温めたり守る為に基本的に巣穴から移動する事がないモンスターなのさ。

勿論、外敵を発見したり巣穴に近付いたりすると攻撃はして来るが、ジャギィと共に狩りに参加する様な事はあまりないんだよ。」

「それなのに、さっきはジャギィと共にセレナを攻撃して来た…。」

「確かに不自然ですね…。」

「それに、あの群れにはボスがいるぞ。」

「ボス?」

「ジャギィは群れで行動するモンスターって最初に言っただろ?

そして、群れを形成するモンスターは、大抵それを束ねるリーダー個体がいる。

俺達の世界では、そういったリーダー個体は、基本的に名前の前に“ドス”を付けて呼ぶ事が多い。

今回の場合は、ジャギィのドスだから“ドスジャギィ”って事だ。

“狗竜”とも呼ばれるな。」

「何故ドスジャギィがいると?」

「ジャギィ達が撤退する時に、ドスジャギィの遠吠えが聞こえて来たんだ。」

「私達を警戒して、群れを撤退させたって事かしら?」

「ありえるかもな。

ドスジャギィの群れを統率する力はかなり高い。

仲間が減らされるのを恐れて、撤退させた可能性は高い。」

「…でも、ここを狙う理由はなんなの…?」

「…んー…そこは俺にもわからない。

ここから先は専門家の意見も聞かないとな…。」

「では、この話は一度この辺りで終わりにしましょう。

これから先、少しの間は松明のバリケードでジャギィの侵入を抑えられますが、早急に対処しなければなりません。

皆さん、気を引き締めてくださいね。」

「ええ。」

「はい。」

「おう。」

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「ジャギィ達がこの研究所を狙う理由か…。」

「これは、一度S.O.N.G.に戻った方が良いかもしれないわね。」

「ああ。

そういえば、セレナは今日定期連絡の日だったよな?」

「あっ、そういえば!

どうしよう…。」

「じゃあ、一緒にS.O.N.G.に行くか?」

「そうね。

遅れた理由を説明すれば、司令も納得するわよ。」

「今回は不可抗力だしな。

きっと大丈夫だろ。」

「…わかった。」

「そうと決まれば、S.O.N.G.に戻るぞ!」

「その前に、マムに伝えておかないと。」

「じゃあ、俺達は外で待ってるな。」

そうして、マリアとアルニは、セレナと共にS.O.N.G.に戻ることにしたのだった。

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