閑話:スィーヨのモンスター講義…大型鳥竜種編
「…と、言うことがあったんだよ。」
S.O.N.G.研究室にて、スィーヨはこれまでの事変を伝えた。
「セレナさんや奏さんの並行世界にも、モンスターが出現したんですか…。」
「エルフナインさんは、今回の出来事をどう捉えてる?」
「…今は、何とも言えません。
ただ、少なくとも途轍も無い異変が起こっている、というのは薄々思っています。
複数の並行世界に、同じ世界からの存在が同時出現するなんて事は、今まで一度もありませんでしたから…。」
「やっぱりそう思うよね…ぼくも同じ意見だよ。
ただ、今はまだ情報が足りないから、確実にこうだとは言えない感じだね。」
「その為にも、また別の並行世界に渡ってもらわないといけませんね…。」
「今回の件で、ぼく達も並行世界に渡れる事が分かったから、今後はぼく達も全面協力するよ。」
「ありがとうございます。」
「…さて、この話はここまでにして、またモンスター講義をしようかな。」
そう言いながら、スィーヨはスクランブルブックを取り出した。
「今後の参考にもなりますので、今回もよろしくお願いします!」
「OK。
えーと、前回は“鳥竜種”の中でも、“小型及び中型”の鳥竜種について話したから、今回は“大型鳥竜種”について話して行こうかな。
大型鳥竜種は、基本的に飛竜種の骨格をしている事が多いのが特徴だね。
この世界で言えば…そう、“ワイバーン骨格”と言えば良いかな。」
「前脚が翼になっているドラゴンの事ですね。」
「そう。
飛竜種の様な骨格だけど、顔に鳥の様なクチバシが付いているのが特徴だね。」
「なるほど…。
他に特徴はありますか?」
「そうだね…やっぱり空を飛べる事かな。
大型鳥竜種は、翼を持つから空を飛ぶ事ができるね。
あとは、“遠距離攻撃”が出来るのもあるね。」
「遠距離攻撃…ですか?」
「そう。
これまでのランポスやマッカォ等は、敵に接近して直接攻撃する“近距離戦型”だったのに対し、大型鳥竜種は口から特殊な液体を吐き出して攻撃する者がいるよ。
毒や火など、その内容は様々だね。」
「遠距離攻撃できるのも特徴…と。
代表的な大型鳥竜種モンスターはどんな物がいますか?」
「ちょっと待ってね…。」
そう言って、スクランブルブックをパラパラとめくるスィーヨ。
そして、あるモンスターのページで手を止める。
そのページには、桃色の鳥の様なモンスターが描いてあった。
「大型鳥竜種の代表格は、なんといってもこのモンスター、
“イャンクック”だね。
一見すると巨大な鳥の様に見えるから、“怪鳥”とも呼ばれるよ。
“大怪鳥”と呼ぶ事もあるみたいだけどね。」
「イャンクック…なんだか変わった見た目ですね。」
「性格は非常に臆病で、あまり戦闘は好まないらしくて、他の大型モンスターと遭遇した時は基本的に逃げる事が多いよ。
しゃくれたクチバシと、扇状に広がる耳が特徴だね。」
「これ、耳なんですか?」
「そう。
周囲の音を効率よく集める為に進化したんだ。
ただ、耳が良すぎて、爆音を聞くと驚いて暫く動けなくなってしまうんだ。」
「さっき、非常に臆病な性格って言ってましたけど、このモンスターは害はあまり無いんでしょうか?」
「いや、臆病ではあるけれど、それなりに縄張り意識は強くて、自分よりも小さい相手…例えば人間が相手だと、積極的に攻撃するんだ。
大きさも大型鳥竜種の中では1番小さいけど、それでも人間よりもかなり大きいから、突っつかれたりするとひとたまりもないよ。
それに、イャンクックは火炎液という発火性の液体を体内で生成出来て、これを吐き出して火炎攻撃をしてくるんだ。」
「火を吐くんですか…!
…他にはいますか?」
「他の大型鳥竜種モンスターといえば…これかな?」
スクランブルブックをパラパラとめくり、再びとあるモンスターのページで止める。
そこには、奇妙な形状のトサカを持つ、くすんだ藍色のモンスターが描いてあった。
そのモンスターの絵を見て、エルフナインは首を傾げる。
「これは…?」
「“ゲリョス”って言うモンスターだよ。別名は“毒怪鳥”。」
「毒怪鳥…という事は、このモンスターは毒液を吐き出すんですか?」
「その通り。
ゲリョスは、体内に毒袋を持っていて、ここから毒液を吐き出して攻撃して来るんだ。
しかも、一度に吐き出す量もかなり多くてね…毒液で少しの間大きな水溜りが出来るくらいなんだ。
毒性もかなり高くて、大量に浴び続けると小型モンスターの場合はそのまま命を落としてしまう事もある。
下手をすると、毒液を撒き散らした一帯の植物が枯れてしまう事もある程なんだ…。」
「そんな…もし遭遇したらかなり厄介ですね。」
「また、ゲリョスは“狂走エキス”と呼ばれる特殊な体液を循環させているんだ。」
「それは一体なんですか?」
「筋肉乳酸の生成を抑え込む成分で、簡単に言うと増強剤みたいな物だよ。
これによって、ゲリョスは四六時中走り続けても殆んど疲れを見せない程の驚異的なスタミナを手に入れたんだ。
他に気になる事は?」
「このトサカ…ですね。
なんだか、金槌にも見えますけど…。」
「ああ…実はね。
ゲリョスのトサカの中には、鉱物質の器官があってね。
これをクチバシの先端に打ち合わせて、その器官を破壊する事によって、非常に強烈な閃光を放つ事ができるんだ。
この閃光は非常に強力で、単純に目を閉じても瞼を貫通する程だよ。
ゲリョス自身はこの閃光に慣れているらしくて、平気みたいだけど…。」
「なんだか、一気に面白いモンスターが出て来ましたね…。」
「…さて、今回はこの辺にしておこうかな。
今後も、時間が出来たらまたお話するね。」
「今回も色々教えてくださり、ありがとうございました。」
「それじゃあ、ぼくはそろそろ寝るね…。
早く寝ておかないとアインスに怒られちゃうから…。」
「分かりました。
スィーヨさん、おやすみなさい。」
「おやすみー…。」
そうして、スィーヨはエルフナインの研究室を後にし、自分の生活スペースへ向かうのであった。
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…とある並行世界の密林にて…
巨大な鳥の様な影が、空を飛んでいた。
下を見ながら飛んでいる為、エサか何かを探している様だ。
しかし、中々求める物は見つからない。
『…クワァ〜。』
お腹すいたな〜、と言う様な鳴き声をあげながら、ソレは飛んで行くのであった。
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…またとある並行世界にて…
ーガッシャァアアン!ー
ージリリリリリリリリリリリリリ!!ー
深夜のショッピングモールに、ガラスが割れる音と、けたたましい警報の音が響く。
音源は、宝石を取り扱うコーナーで、そこでは巨大な影が蠢いている。
どうやら、宝石を集めている様だ。
ーと。
「動くな!」
拳銃を持った複数の人影が現れる。
警報を聞いて駆けつけた警備員だ。
「どこの誰かは知らないが、奪った物をそこに置くんだ!」
『…。』
警備員の問いに、ソレは答えない。
ーバチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!ー
代わりに、小さな火花と共に何かを打ち付ける様な音が聞こえて来る。
そして、暗闇の中で何かが白く光り出した瞬間ー
ーッ!!!!!ー
「っ!?」
「うぁあっ!!」
警備員の視界が、閃光で真っ白に染まり、意識を奪い去る。
『グァー!!』
その隙に、黒い影は警備員の横を走り抜け、そのままどこかへと走り去って行った…。
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…また別の並行世界にて…
「なあなあ、オレらと遊ぼうぜ?」
「いやっ!やめてください!!」
「へへへっ、そんな邪険になんなくてもいいだろ?」
住宅街の路地裏で、1人の女性が数人の学生に取り囲まれていた。
「怖いんなら警察にでも通報すれば良いだろ?」
「まあ、携帯ねーから通報出来ないだろうけどな?」
奪い取った携帯電話をぶらぶらと見せながら言う不良学生。
女性は恐怖の余りに腰が抜けて動けない。
そんな時だった。
『グゥヮワワワ…グワァ〜…!』
不良達の背後、路地裏の外から、鳥の様な鳴き声が聞こえて来る。
「あ?
…なんだ今の?」
「オレ、ちょっと見て来るわ。」
確認の為に、不良の1人が路地裏の外に顔を出したー
ーその瞬間。
『グワァーッ!!』
ーガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!ー
「っ!?
ギャァアアアッ!?」
「っ!?
おいっ、どうし…た…?」
突然響いた絶叫に、顔を向ける不良。
そこには、血だらけになった不良と、それを足で踏みつける巨大な鳥の様な影があった。
『グゥワワワワ…グワッ…!』
その視線に気付いたのか、黒い影は顔を向ける。
まるで血に飢えた獣の様な血走った目を見た瞬間、不良と女性は恐怖心で動けなくなった。
そして、そんな一同に黒い影はー
『グワァアアアッ!!!』
咆哮の様な鳴き声をあげて、襲い掛かった。
…その日の翌朝、路地裏で血まみれになる程の重傷を負った不良学生と女性が発見されたと言う…。
次回、新章突入です!