『クワァーッ!!』
バルベルデ村内に侵入したイャンクックは、火球を吐き散らしながら走り回っていた。
スィーヨが心配していた通り、イャンクックは大型モンスターなので、翼や尻尾が建物に当たる度に、その当たった箇所を破壊してしまっていた。
さらに、吐き出した火球の炎が家に燃え移り、火事も起こり始めている。
「いた!うわぁ、凄い暴れてる…。」
「くそ!
早くイャンクックをここから追い出さないと…!
おい!これ以上ここで暴れるんじゃねーっ!!」
焦りと怒りを滲ませながら、銃弾を放つ。
放たれた銃弾は、イャンクックに数発当たった。
『クゥヮワワワ…クワァアーッ!!』
ーバサバサァッ!ー
クリス達に気が付いたイャンクックは、低空飛行をしながら突撃して来る。
「うわぁっ!?」
「くっ!」
それぞれ散開する様に2人は突撃を回避する。
そんな2人の側に着地すると、すぐ近くに居たスィーヨに飛び掛かり、つっつきを仕掛ける。
そのつっつきをギリギリで転がりながら回避する。
「そいつに気を取られ過ぎだ!」
ーズダンッ! チュインッ!ー
『クワァッ!!』
スィーヨに気を取られた隙をついて、クリスが銃弾を放つも、桃色の外殻に弾かれてしまう。
それに気付いたイャンクックは、クリスに飛び掛かって足で押さえつける。
「うぐっ!この…離せよ!」
逃れようと暴れるものの、クリスとイャンクックでは大きさに差があり過ぎる為、なかなか抜け出せない。
『クワァーッ!!』
そして、足で押さえ付けたまま、イャンクックはついばみを仕掛けようとして来る。
…が、
「クリスから離れろぉっ!」
ードコッ!ー
『クワァーッ!?』
「っ!?」
それは、叫び声と共に飛んで来た球体が、顔面に直撃した事によって遮られた。
「な…君は!?」
「ステファン…何でここにいるんだよ!?」
何とか立ち上がったスィーヨと拘束から逃れたクリスが、球体が飛んで来た方向を見ると、そこには何かを蹴り飛ばした体勢のステファンがいた。
「2人共、大丈夫か!?」
「お、お陰様で…。
いや、何で君がここに…避難してたんじゃないの!?」
「最初はそうしてたんだけど…嫌な予感がして抜け出して来たんだ!」
「なんで…なんでここに来たんだよ?
コイツは、こんな見た目だが危険なんだぞ!」
「わかってる!
でも、ここは俺たちにとって大切な場所で、2人がここを守る為に必死に戦っている…。
そんな時に、ジッとするなんて出来るわけないだろ!」
「ステファン…。」
『クゥワワワワ…!』
ステファンを凝視するイャンクック。
その時、足元を一匹のクンチュウが歩いていた為、イャンクックはクンチュウをパクリと飲み込む。
それに気付いたステファンは、クンチュウを軽く蹴って丸めさせる。
「2人はここだとうまく戦えないんだろう?
俺が、コイツを村の外まで誘き出してやる!
ほら、こっちへ来い!」
その瞬間、まるでドリブルをする様にクンチュウを蹴りながら走り出す。
当然ながら、イャンクックはそれを追いかけ始めた。
「戦う力を持ってない人が、大型モンスターに立ち向かうなんて…!
いくらなんでも危険過ぎるよ!!」
「でも、そのおかげでアイツが移動を始めてる!
追いかけるぞ!」
「わ、わかった!」
顔を真っ青にしながら呟くスィーヨを激励し、クリスは走り始める。
スィーヨも、慌てて後を追った。
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『クワァアッ!!』
バルベルデ村から離れた場所を、ステファンは丸まったクンチュウをドリブルしながら走っていた。
その後ろでは、イャンクックがニンジンをぶら下げられた馬の様なスピードで追いかけている。
…いや、実際イャンクックの狙いはステファンではなく、ステファンがドリブルしているクンチュウなので、あながち間違いではないが。
「大分離れたよな…良し!
それ、取ってこい!!」
そう言って、クンチュウを思い切りシュートする様に蹴っ飛ばす。
『クワァッ!』
シュートされたクンチュウを追い、イャンクックが離れた場所まで走って行く。
「お、追いついた…!全く、大型モンスター相手に無茶をするね!」
そこへ、クリスとスィーヨが追い付いた。
「ご、ごめん…。」
「まあ、今回は助かったからいいけど、次からはこんな無茶をしない事!」
「お前が怪我をして誰かを悲しませないためにも、な。」
「はい、じゃあこの話はおしまい。
ステファンさんは、村に戻って皆と一緒に消火作業を!」
「わかった!
2人共、頑張って!」
そう言って、ステファンは村へ戻って行った。
「…さて、アイツが頑張ってここまで誘導してくれたんだ。
この機を逃すわけには…」
「…行かないね!」
それぞれの武器を構えながら言う2人。
「作戦はどうする?」
「また村の方に行く可能性が高いし、イャンクックも弱っているから、一気に決めたい所だね。
…クリスさん、この辺りだったらミサイル攻撃は出来るかな?」
「ああ、これだけ離れていれば十分だ。
ただ、攻撃に入るのに少しだけ時間がかかるから、それまで時間稼ぎ頼めるか?」
「了解だよ。」
「…来るぞ!」
そう言った瞬間ー
『クワァーッ!!』
ーボゥワアッ!ボゥワアッ!ボゥワアッ!ー
イャンクックが、かなり離れた距離であるにも関わらず火球を連続で吐き出して来た。
吐き出された火球は、空中で弧を描く様に飛んで来るが、2人はそれを難なく回避する。
「こっちも出し惜しみなしで、“狩技”を使わせて貰うよ!」
そう言うと、狩猟笛をブルンと大きく回し、旋律を奏でる。
その旋律は、様々な旋律が合わさったかの様な不可思議な音色だった。
自身が使用する狩猟笛が奏でられる全ての旋律の効果を発動させる“狩技”、“オルケスタソウル”だ。
旋律を奏で終わると、スィーヨはイャンクックの元へ突撃を仕掛け、クリスはエネルギーを溜め始める。
突撃するスィーヨに気付き、イャンクックは再び火球を吐き出そうとするが、口からは僅かな火の粉が舞うだけに終わった。
「さっきの連続発射で、スタミナが切れてしまったみたいだね。
この隙にもう一つの“狩技”、いっくぞぉおおおっ!!」
叫びながらイャンクックの懐に潜り込むと、スィーヨは狩猟笛を縦に構える。
「音・撃・震!!」
叫びながら狩猟笛を縦に振り回し、イャンクックに数回叩きつける。
叩きつけられる度に爆発が発生し、最後に特大の音波衝撃が放たれた。
スィーヨのもう一つの“狩技”、“音撃震”である。
『クワァーッ!?…クキュゥウ…!』
爆音波を至近距離で放たれたイャンクックは、再びショックで動けなくなる。
その瞬間、スィーヨは叫ぶ。
「クリスさん!!」
「こっちも準備万端だ!スィーヨ、そこから離れろ!!」
「わかった!」
そう叫び、スィーヨはイャンクックから離れる。
「それじゃあ行くぞ!
閻魔様によろしくな!!」
その瞬間、手に持つ二丁のガトリングガンと、腰の装甲から大量のミサイルが発射された。
ー『MEGA DETH PARTY』ー
放たれたミサイルは、イャンクックの周囲の地面も巻き込みながら爆発した。
着弾の煙が舞い上がり、イャンクックの姿が見えなくなる。
「…やったか?」
「…わからない。」
巻き上がる土煙を見ながら、2人は呟く。
やがて、爆発が収まり、土煙が落ち着くとー
「っ!?」
「おいおい…嘘だろ…!?」
そこには満身創痍でフラフラの状態であるものの、なんとか立ち上がっているイャンクックの姿があった。
「イャンクックは、火に対して耐性を持っているとはいえ、あの攻撃を受けたらもう終わりだと思ったのに…!?」
呆然とした様に呟くスィーヨ。
『クゥワワワワ…クワァアーッ!!』
そして、イャンクックは2人に突撃をしようとした…が。
『!?クゥワワワ…!』
突然、耳を広げて何かを警戒する様に辺りを見回し始める。
「…?なんだ、様子がおかしいぞ?」
「なんだか、怯えてるみたい…?」
様子が変化したイャンクックに、首を傾げるスィーヨとクリス。
その時ー
…グォオオオー…!
『ッ!!クワァアッ!!』
何処からか、野太い鳴き声が聞こえて来る。
それを聞いた瞬間、イャンクックは怯えた様に鳴き声をあげ、翼を羽ばたかせて何処かへと飛び去ってしまった。
「な、逃げた!?」
慌てて後を追いかけようとするクリス。
しかし、スィーヨがその肩を掴んだ。
「待って!追いかけなくても大丈夫。
あんな目にあったんだから、暫くはイャンクックもこの辺りには近付こうとしないよ。」
「…そういう…ものか…。」
ギアを解除しながら、クリスは呟くのであった。
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…その後、村内の消火、及び復旧作業をした後、クリス達はバルベルデを後にした。
「…そういえば、今回はなんでフィーネは手を貸してくれなかったんだ?」
日本へ向かう飛行機内で、クリスはフィーネに尋ねる。
「簡単な事よ。
今回は、私が手を出す程の事ではなかった。
それだけよ。
そもそも、私の力はあまり人に見せる様な物では無いのだから。」
「…確かにな。
あたしらの力も、本来は人に見られて良い物じゃないんだよな。」
「…それで、あそこは大丈夫なの?」
「ああ。
クンチュウもそこまで危険なモンスターではないし、スィーヨが言うには、本来イャンクックは人里にはあまり近付かないらしいし、縄張りに入って刺激しなければ危険性は低いんだと。」
「そう…。」
「…。」
「ところで、さっきからしかめっ面をしてるけど、どうしたんだ?」
窓の外を見ながら難しい表情をするスィーヨに、クリスは声を掛ける。
「…ん、ちょっと気になった事があってね…。」
「気になった事?」
「聞かせてもらえるかしら?」
「クリスさんとイャンクックを探していた時なんだけど、森の奥の方で焼け野原になっているポイントがあったんだ。」
「そうなの?」
「ああ、まるで何かを爆発させたかの様な有様だった。
でも、それはイャンクックがやった物じゃないかってお前あの後言ってなかったか?」
「…最初はそう考えていたんだけど、イャンクックは火炎攻撃をする事はできるけど、あんな何かを爆発させる様な事が出来るとは思えなくて…。
何より、あそこには爆発物の欠片みたいな物が転がっていた。
イャンクックは火炎攻撃は、発火性の液体を吐き出す物だから、あんな欠片が残る事はない筈…。」
「…つまり、あれはイャンクック以外の何かがやったって事か?」
「まだわからない。
…もしかしたら、バルベルデにもう一回行く事になるかもしれないね…。」
窓の外を見ながら、スィーヨは呟くのであった。
…その後、スィーヨ達が元の世界に戻った後、二課に米軍からある一報が届いた。
バルベルデ上空を飛行していた飛行機が、謎の巨大生物による大量爆撃を喰らい、撃墜される事件が起こったのだと言う…。
ゲーム内では拘束攻撃をしないクック先生ですが、現実にいたら、もしかしたらするんじゃないかなと思い、拘束攻撃の描写を入れました。
この小説では、本来ゲーム内ではやらない行動をする様な描写も多く入ります。
タグの原作・世界観崩壊、オリジナル展開・設定は、そういう事です。
最後の方に登場した謎の巨大生物…もしかしたらこの時点で、何者なのかわかる人もいるかもしれませんね…。
次回から、新しい並行世界編に入ります!