「…と言った事が起こっているのです。」
特異災害対策機動二課本部にて、翼はこれまでに起こった事件の詳細を話し終わった。
「なるほど…。
彼…テイン達が暮らしていた世界のモンスターが、各並行世界に出現しているとは…。」
「こちらでは、そう言ったモンスターは現れていますか?」
「…モンスターの目撃例は無いが…。
もしかしたら、関係しているかもという様な事は起こっている。」
「本当ですか!?
…因みに、どう言った事が起こっているのですか?」
「実は、ここ最近この辺りでは宝石店を狙った連続強盗事件が起こっている。」
「宝石店を狙った連続強盗事件…?
しかし、それは人がやった事で、モンスターとは関係ないのでは…?」
「初めは、私も同じ意見だった。
しかし、我々で詳しく調べてみたところ、目撃証言で気になる物が幾つもあったのだ。」
「気になる物?」
「“巨大な鳥が宝石ケースを破壊していた”、
“尻尾をまるで鞭の様に振るって攻撃して来た”、
“口から毒々しい色の液体を吐き出した”、
“目の前が暫く見えなくなる程の強烈な閃光を放った”
…などだ。」
「なるほど…確かに気になりますね。」
「目撃証言がこんな感じなので、警察も捜査が難航しているらしい。
だが、もしかしたらこれは君が言ったモンスターの仕業かもしれない。」
「宝石を盗むモンスターですか…もしかしたら、テインが何か知っているかもしれません。
彼が戻ったら、聞いてみましょう。」
「うむ。」
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一方その頃、テイン達はシャロンがマカライト鉱石を拾ったと言う公園へ向かっていた。
「ん?なんかあそこに人だかりが出来てんな。」
その道中で、テインはショッピングモールの前に人だかりが出来てるのを見つけた。
「本当だ。何かあったのかな?」
「ちょっと聞いてみるか。
おい、あそこで何かあったのか?」
気になったテインは、人だかりの一番外側にいた人に声をかけた。
「ああ。
昨日の夜、このショッピングモールでまた強盗事件が起こったらしいんだ。
これで、五件目だよ。」
「強盗事件?」
「しかも、五件目って?」
「君達知らないのかい?
この町ではな、宝石店を狙った連続強盗事件が起こっているんだ。
ここでも同じ事が起こってしまったんだよ。
入り口が壊されているから、俺たちも中に入れないってわけさ。」
「強盗って、人の物を無理矢理奪い取る事だよな?
ひっでぇ事をする奴がいるもんだな。」
「うん…早く犯人が捕まると良いね…。」
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…それから更に数分後。
テイン達は、街の外れにある公園にある森にやって来た。
「ついたよ!」
「ここか。」
「ここで、さっきの石を見つけたの?」
「うん。
この森の中で、お姉ちゃん達とかくれんぼをしていた時に見つけたの。」
「そうなのか。
あ、じゃあお前らここで少し待っててくれねーか?」
「え?うん、わかった。」
「ありがとな。」
そう言って、テインは森の中に入って行く。
数分後、ハント装備を着用した姿で戻って来た。
「何があるかわからねーからな。
一応この格好で行かせてもらうぜ。
それじゃあ、この森の中調べてみるか。
シャロン、オレ達から離れるなよ?」
「うん。」
「それじゃあ、行こうか。」
3人は森の中に入っていった。
「しっかし、まさかオレ達の世界特有の鉱石が見つかるなんてな。
驚いたぜ。」
「名前はマカライト鉱石、だったよね。
これってどんな物なの?」
「そうだなぁ…一言で現すと、“便利な鉱石”って所だな。
熱にも強いし、硬さも申し分ない。
防具や武器の材料に最適な代物だな。」
「見た目も綺麗だしね!
そういえば、テインさんの世界には宝石を使った指輪とか飾りを作る習慣ってあるの?」
「んー…多分あると思うぜ。
ただ、オレらは装飾には殆ど縁が無いんだよ。」
「ええっ!?そうなの!?」
「一応“護石”っていうお守りみたいな物はあるけどな。
特に意味の無い装飾はハッキリ言って、オレ達にとっちゃ邪魔になるだけだしな。」
「そうなんだ…。
…ところでさ、話は変わるんだけど…。」
「今度はなんだ?」
「…なんだか、変な臭いがしない?」
「奇遇だな、オレも同じ事を思ってたぜ。
さっきから嫌な臭いがしやがる…。」
周囲の空気を吸い、顔をしかめながら答えるテイン。
彼らの言う通り、不快な気分になる悪臭が3人の鼻を刺激していた。
「シャロンちゃん、大丈夫?」
「…うん。」
「その顔色で言っても説得力ねーぞ。
あんまり無理しないで辛い時は辛いって言いな。」
「そうだよ、無理はしないでね?」
「…うん。」
「しっかし、マジでひどい臭いだなこりゃ。」
「何かが腐った様な、そんな感じがする…。」
「腐肉臭…とはちょっと違う。
植物特有の青臭さが混じってるから、植物が腐った様な感じがするな。
腐肉臭ならぬ“腐草臭”って所か。」
「でも、なんで…?」
「臭いが強くなって来てるから、恐らく臭いの元は近付いて来てるぞ。」
そうして、進み続ける事数分…。
「っ!?」
「な、なんだこりゃ!?」
「なに…これ…?」
目の前に広がっていた光景に、3人は息を詰まらせる。
そこには、腐敗している植物が大量にあったのだ。
木々の幹や枝は萎びており、酷く弱っている。
足元に生える草も、葉の色が緑がかった茶色だったり完全に枯れてしまっている物もあった。
「臭いの元はここだったのか。
それにしてもコイツはひでぇな…。」
「何があったんだろう…?
木も薙ぎ倒されてるみたいだし…。」
「わからねぇ。」
「…うっ…!」
その時、シャロンが響の足元に座り込んでしまう。
慌てて響が顔色を確かめると、シャロンの顔色が真っ青になっていた。
「テインさん!
シャロンちゃんが…!」
「おい、大丈夫か!?」
「…き…気持ち…わるい…!」
「…これ以上ここにいると、シャロンが持たないな。」
「じゃあ、ここで引き返す?」
「いや、オレはここをもう少し調べてみたい。
だから、響とシャロンだけ一旦ここから離れてろ。」
「わかった!じゃあ、また後で会おうね!」
そう言って、響はシャロンを抱き上げると、森の外を目指して走り出した。
「さて、調べてみるか。」
響達の姿が見えなくなったのを確認すると、テインは腐草臭が漂うその場を調べ始めた。
「…にしても、なんでこの辺りだけこんな沼地みたいな姿になったんだ?
スィーヨなら、何が原因かすぐにわかっちまうんだろうなぁ…。
…ま、無い物ねだりしても仕方ねぇか。」
そう独り言を言いながら、辺りの草をガサガサと漁るテイン。
すると…
「…ん、なんだこれ?
石…か?」
草むらの中で光を反射する物を見つけ、引っ張り出す。
それは、美しく光り輝く青色の宝石だった。
「マカライト鉱石…いや、似てるけど違うな。
コイツは明らかに人の手が入った物だし…もしかしてこれが響が言ってた“宝石”って奴か?」
青色の宝石…サファイアを見ながら呟く。
その時、視界の端で何かが光っている事に気付く。
近付いて拾い上げると、それは赤色に光り輝く宝石、ルビーのイヤリングだった。
そして、よく見てみると辺りに宝石が散らばっている事に気付き、テインはそれらを全て拾い集める。
エメラルドの指輪に、トパーズのネックレス、アメジストのブレスレット、更にはダイアモンドの指輪まであった。
「これ…もしかしなくても宝石店?から盗まれた物だよな?
何でこの辺りに落ちてんだ?
こりゃ、報告した方が良さげだな。」
そう呟き、集めた宝石をポーチの中に押し込むと、森の外へ向けて走り出した。
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…一方その頃、森の入り口にて…
「シャロンちゃん、大丈夫?」
「うん…。ありがとう、響お姉ちゃん。」
「どういたしまして!
それにしても、さっきのアレはなんだったんだろうね…。」
「…。」
「…怖かった?」
「…うん。」
「そっか…じゃあ、怖くなくなるまで手を繋いでよっか。」
「…うん。」
小さく答えて、シャロンは響と手を繋ぐ。
すると、ホッとしたのかシャロンの表情が少し柔らかくなる。
「初めてシャロンちゃんと外出した時もこうやって手を繋いでいたよね。」
「うん。」
「そういえば、アレからシャロンちゃんは体調を崩したりしてないよね?」
「大丈夫だよ。
お姉ちゃん達と、元気にしてたから。」
「そっか、良かったー…。」
安心した様に微笑む響。
…その時だった。
…グァー…!
…ガサガサ…バキバキバキ…!
「「!?」」
突然、何かの鳴き声と共に、木が倒れる様な音が響いてくる。
更に、ズン…ズン…!という足音の様な音と共に、地面が揺れ始める。
「お、お姉ちゃん…。」
「シャロンちゃん…私の側から離れないでね。」
警戒しながらシャロンに言い聞かせる響。
その間にも、足音と振動は次第に大きくなって行く。
そして、次の瞬間ー
『グァアアーッ!!』
森の中から、巨大な影が飛び出して来る。
そして、そのまま響達の方に突進して来た!
「シャロンちゃんっ!!」
寸前の所でシャロンを抱いて転がった為、回避に成功する響。
巨大な影は、響達がいた場所を通り過ぎると、少し走ってから急停止する。
『グググググ…。』
唸り声の様な鳴き声を上げながら、巨大な鳥の様にも見えるソレは響達の方を向く。
特徴的な形状をしたクチバシ、くすんだ藍色の体、野太い鞭の様な尻尾、まるで金槌を連想させる様な形状をしたトサカ。
テインの世界のモンスター、“毒怪鳥”ゲリョスだ。
「も、モンスター!?
しかも、マッカォやランポスよりも大きい…!」
「お姉ちゃん…!」
「大丈夫だよ、シャロンちゃん。
私の後ろに隠れて、ゆっくり後ろに下がって…!」
ゲリョスから目を離さない様にしたまま、響はシャロンを背後に隠しながらゆっくりと後ろに下がる。
対するゲリョスは、響達を凝視したままゆっくりと近づいて来る。
「おい、なんだあれ?」
「映画かドラマの撮影かしら…?」
「あの鳥って着ぐるみ?やけにリアルだけど…?」
その時、ゲリョスに気付いた通行人が集まって来た。
それぞれの推測をする人から、興味本位でスマホやカメラで撮影をする人も現れ始める。
その中の幾つかがフラッシュを放った。
『ッ!グァアアーッ!!!』
その瞬間、フラッシュに驚いたのか突然飛び上がる様に咆哮を上げると、集まって来ていた通行人の方へまっしぐらに走り出した。
「っ!
このままじゃ、あの人達が危ない!」
「響お姉ちゃん!」
「シャロンちゃん。
ちょっと行ってくるから、そこに隠れていて!」
「うん!」
コクリと頷き、森の中に隠れるシャロン。
それを見届けると、響は走りながら起動詠唱の唄を歌い、ガングニールのギアを纏い、疾走するのであった。