外道魔術師の一目惚れ   作:シークレット/K

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少しづつ時間を取れるようになってきたので、リハビリがてらの投稿です。
ちょっとずつ進めて行けたら良いなぁ……(願望)


第五話

「────バカな」

 

ラザールの名を聞いたセリカが、料理を食べる手を止めて目を見開く。

死んだはずの仲間が、共に戦った英雄が────生きて、外道に堕ちている。

到底信じられない、有り得ない事だが……セリカはシュバルゴが妄言を吐くとも思えなかった。

 

「それが本当なら、対応できるのは私ぐらいか……」

 

『六英雄』と呼ばれた者たちは、文字通り人間じゃない強さを誇る。

中でも【剣の姫】エリエーテはさらに別格の強さを誇るが……とにかく、ラザールが悪事に手を染めているという事実を知った今、嘗ての戦友と戦う準備ぐらいは整えておかなければならないだろう。

 

実の、では無いが息子が……グレンが帝国軍で働いているのだ。

大切な存在を喪わないために、護るための準備は不可欠だ。

 

「ッチ、次の地下探索は中止だな……。あのガキ、面倒事を増やしやがって……!」

「地下探索?」

「ん?ああ、魔術学院の地下遺跡の探索だよ。危険が少ない最上層は授業で使ったりしてるが、それより下は危険度が跳ね上がる。私でも、攻略は半分も進んでない」

「……名だたる【第七階梯】である(あるじ)が攻略不可能となると、余程化け物地味た構造をしているのだな?……、まあいい。それで話は戻るが、研究会が狙っている計画の重要な通過点の話だ」

 

まだ、これ以上の衝撃的な話があるのか、とげんなりしているセリカを尻目に、シュバルゴは告げる。

 

「研究会が躍起になって実現させようとしている最重要の研究……死者をよみがえらせる禁忌、project revive lifeだ」

 

息子(グレン)がいつの日か話していた、救えなかった兄妹の話。

セリカが聞いたのは、死者をよみがえらせる【固有魔術】といっても過言ではない儀式魔術研究プロジェクト、Re=L計画を主導していた一人の男が、妹と親友とともに天の智慧研究会から逃げ出そうとして、親友の男に裏切られて妹ともども殺されたということだけだったが、グレンが何かを隠していることには気づいていた。

 

「Re=L計画がどこで研究されているのかは分からんが、俺が知る中でそれらを研究している組織の一つとしては、『蒼天十字団(ヘヴンス・クロイツ)』が挙げられる」

「『蒼天十字団』だと……!?」

 

アルザーノ帝国内部に秘密裏に存在する、天の智慧研究会にも関わっていて後ろ暗い研究を行っているなどという眉唾物の都市伝説とされている組織。

それを明確に存在することを暴露したシュバルゴに、セリカが詰め寄る。

 

「アリシア女王がかの組織の存在を知っているか否かは……主もよく知っているだろう?」

「……知らないだろうな。アリスが知っていてそれを放置することはないだろうし」

 

シュバルゴの言葉に冷静さを取り戻したセリカは、椅子にどかりと座り込む。

自身が知る全てを話し終えたシュバルゴは食べ終えた皿を下げ、セリカは聞いた話を纏めるために自室へと向かった。

 

そして、それから数ヶ月経過して。

 

アルフォネア邸の使用人として働きながら絶賛片想い中の相手であるルミアを愛でる日々を送っていたシュバルゴと、アルザーノ帝国魔術学院の講師として働きながらアルフォネア邸に居候するホーク。

ルミアも親に捨てられた事実からかたまに影が差すこともあるが、少しずつ笑顔が増えてきており、その背景には時たまレナードが連れてくる一人娘の存在もあるのだろう。

セリカもまた、アルフォネア邸に結界を張ったり、ラザールと相対した時の為の策を練ったりしながら、学院勤めをしている。

 

そんなアルフォネア邸に、ある人物が()()()()()

 

「セリカ、帰ったぞ~!────って、んな!?シュバルゴ=モータナス!?」

「……【愚者】か、久しいな」

 

アルザーノ帝国における軍である帝国宮廷魔導師団の、魔術的な犯罪に対して派遣される『特務分室』、その執行官ナンバー0【愚者】────グレン=レーダスとの、敵として出会った時以来の再会だった。

 

こちらを睨みながら左手を向けてくるグレンに対して、シュバルゴは降参とばかりに両腕を上げる。

 

「なんでお前がここに!!」

「……イヴ=イグナイトに聞いていないのか?」

「イヴに?何の話……って、まさか、イヴの奴が敗北した相手って」

「オレだな」

 

ますます睨みをきかせてくるグレンだが、スーツを着てモップを持つシュバルゴの姿を見て頭が冷える。

 

「……何してるんだ、ここで?」

「見てわからんのか?掃除だ」

「いやいや、どういう事だよ!?」

 

淡々と答えるシュバルゴに、脳内でハテナしか浮かばず困惑するグレン。

そんな二人のもとに、自室から出てきたルミアが鉢合わせた。

 

表向きには病死したことになっている王女だが、改名とともに髪を切り、セリカのセンスで購入された私服を着たルミアは、一先ず王女だとバレない程度にはなっていた。

 

「シュバルゴさん、お疲れ様です。ええと、そちらの人は……?」

「主……セリカも言っていただろう。彼女が散々自慢してきた息子だ」

「ちょっと待って!!いろいろとツッコミどころ満載なんだけどッ?いつからこんなに居候増えてんの!?」

 

外道魔術師のはずのシュバルゴを笑顔で労うルミアの姿を見て、遂にグレンの脳が限界を迎えた。

そんな痛くなってきた頭を抱えるグレンの背後、玄関の戸が再び開く。

 

「ただいまぁ〜、って、グレンじゃん。玄関で何やってんだ?」

「え、【愚者】が居るんっすか?そういえば、セリカさんの息子でしたっけ」

 

職務を終えたセリカとホークが帰ってきた。

銃を抜いて玄関でこちらに顔を向けて立ち尽くす息子の姿を見て、セリカは首を傾げ……グレンの身体の前方、左指の先で佇むシュバルゴの姿を認めて合点がいった。

 

「ああ、そこのシュバルゴは私の小間使いになったから、警戒しなくても大丈夫だぞ?お前も遠慮せず使ってやれ」

「はぁッ!?」

「……フン、主が言うならば仕方がない。オレに出来ることならば何でもやってやる。何なりと言え」

「マジで、一体どういう事なんだよ……?」

 

グレンの拭えない混乱と困惑は、シュバルゴが用意した料理を食べながら事の経緯を説明し終えるまで続くこととなった。

 

#

 

「プッ、クク、だ〜はっはっは!!」

 

ルミアの正体だけは伏せて、シュバルゴ達が辿った行程を一から説明し終える頃には、先日のセリカと同様にグレンも大笑いしていた。

 

「狙われてた令嬢に一目惚れして所属組織を裏切るって、お前、マジか!?」

「……フン、笑いたければ笑え。この気持ちに偽りはない」

 

ちなみにルミアは、改めてシュバルゴに好意を抱かれているという事実を再確認して、頬を染めて机に突っ伏している。

アルフォネア邸に来てから、どうにか最悪の初対面からの関係改善をしようと努力してきた結果であり、ルミア自身のシュバルゴに対する好感度が上がった証左と言えるだろう。

 

まあ、どちらかと言えば恋・懸想といったものではなく、会ったことの無い父親をシュバルゴを通じて幻視しているような感じではあるが。

 

「あー、ココ最近で一番笑ったわ。それに、ここなら研究会の手から逃れるにはうってつけなのは確かだし、納得もいった。にしても、急に一時的な休暇を言い渡されたと思ったら、こういう事かよ」

「……イヴ=イグナイトもオレ達のことを信用しきれていない故の監視役か。だが、イヴ=イグナイトが上に報告しなかったということは、それなりにはオレやホークを信用してくれたと見ていいのか?」

「知らねえよ、あんなヒステリック女の考えてることなんて。……ま、ラッキーだったとでも思っておけばいいんじゃねえの?知らんけど」

 

もうシュバルゴにその気は無いとはいえ、外道魔術師だった事実は変えられない。

指名手配されていなかったホークにしても、シュバルゴの援護として馬車を襲っていたことはその場にいた者たちの全てが知ることだ。

上層部にどんな報告をしたのかは分からないが、シュバルゴ達の居場所が割れておらず、イヴも特務分室室長として変わらず勤務していることから考えるに、死を偽装するか何かしてどうにかしてくれたのだろう。

 

「……すぐに信用しろなど言わん、笑みの奥の警戒も貴様が満足するまで解かなくていい。オレは使用人として働きながら、ルミアを愛でる日常を送れれば何も不満はないからな」

「バレてたのかよ。まあ、自分で言うのもなんだが、しばらくは懐疑の目を向けることになると思うが……それはそれとして、ここにいる間は馬車馬のようにこき使ってやるからな!」

「それでいい」

 

こうして【愚者】、グレン=レーダスとの和解が成ったのだった。

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