外道魔術師の一目惚れ   作:シークレット/K

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今回はグレン視点。
ついに原作一巻突入です。


学院襲撃事件(一巻)
第九話


攫われたルミアとシスティーナを助け出す出来事から数年がたった。

数年の間に様々なことが起きた。

 

システィーナの祖父、レドルフ=フィーベルの死。

特務分室の一員であった【正義】の裏切りと【女帝】の死、それに伴う【愚者】グレン=レーダスの特務分室脱退。

ルミアとシスティーナのアルザーノ帝国魔術学院入学など。

 

大まかなところでいえばこのくらいか。

 

そして、ルミアたちが二年に上がってしばらく経った日の朝。

特務分室を脱退してからというもの、別の働き口を探すこともせずにだらだらと過ごすだけのグレンに対して、遂にセリカがキレた。

 

「いつまで私のヒモになってるつもりだよ、お前!?いい加減に働けよ!!」

「いいじゃねぇか、俺を一生養うぐらいの余裕、あるだろ!?」

「食っては寝る毎日を繰り返すお前の情けない姿、もう見たくないんだよ!!それでいて小間使いも遠慮なく振り回すし!」

 

この場にシュバルゴはいない。

穀潰しのグレンとは違って、邸内の家事や命令を卒なく熟す万能執事は、主人たるセリカの息子であるグレンの命令で買い出しに出掛けていた。

 

「とにかく!学院の講師が人事異動で一枠空いたから、お前をそこにねじ込む!期間は一ヶ月で、免許諸々は私の権限でどうにかする。拒否権は無いからな!!」

「ちょ、はぁ!?魔術講師って、お前────」

「《其は摂理の円環へと帰還せよ・五素は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離せよ》」

 

グレンが文句を言おうとした瞬間、放たれた【イクスティンクション・レイ】がグレンの真横を通り過ぎて、背後の壁に丸く切り抜かれたかのような大きな穴を空けた。

 

「文句があるなら言えよ?ただ、次は外さん」

「ま、ママぁぁぁぁああああああ──ッ!!」

 

こうして、グレンは半ば強制的に魔術学院の非常勤講師として働くことが決まった。

 

#

 

グレンの出勤日当日。

セリカは用事があって一足先に学院に向かっているが、セリカが居なくとも同僚となるホークがいるし、何よりシュバルゴがサボることを許さない。

 

初日早々病欠しようとしていたグレンがシュバルゴの手によって強制的に外へと放り出されると、そこには。

 

「あ、やっと来ましたね!?()()()()()()()()()()()()()()()()()()、絶対に逃がしませんよ!」

「おはようございます、グレンさん」

 

どこか嬉しそうな……期待の目で見てくるシスティーナと、苦笑いしつつも落ち着いた様子で挨拶してくるルミアの二人がいた。

 

「って、お前らの担任ってマジか!?どんな偶然だよそれ!」

「ほら、行きますよ!」

 

誘拐事件で救われてから、何かとグレンに付きまとうようになったシスティーナは、グレンの手を引いて歩き出した。

グレンが軍を辞めた理由もそれとなく聞いていたため、アルフォネア邸で引きこもり生活をしていたことにも理解がある分、久々の外へ出る機会を機にニート脱却を目指そうと息巻いていた。

 

「それじゃあ、シュバルゴさん。行ってきますね?」

「ああ、気をつけて行くがいい」

 

出かける際の挨拶を交わした後、さらにシュバルゴはルミアの頭を撫でる。

誘拐事件以降から不安そうな表情が尽きなかったルミアを元気づけようとしてルーティンとなった行動である。

 

それなりに成長したと判断した時に一度やめたこともあったが、シュバルゴにすら見捨てられてしまったのではないかと不安になったらしく、表情が戻ってしまったために継続することとなった。

 

気持ち良さそうにされるままになっているルミアを見て、今日も一日頑張る気力を得たシュバルゴは撫でる手を止めて背中を押す。

今日も見捨てられていないと、帰る場所があることを確認できたルミアは、満面の笑みを浮かべて先に行ってしまったシスティーナとグレン、ホークに追いつくべく走り出した。

 

#

 

「……今日から一ヶ月の間、お前らの担任になるグレン=レーダスだ。早速だが、今日は授業は行わない」

 

本来(正史)であれば、黒板に大きく自習という文字を書いて教卓に伏せっていたグレンだが、今回は違った。

知り合い(システィーナ)が滅茶苦茶キラキラした目で見てきていたためだ。

 

サボりたい、働きたくない────そうは思うが、誘拐事件後から今も尚慕ってくれている少女の期待を真っ向から裏切ることは、流石のグレンにも出来なかった。

結果────

 

「先ずはこれまでの授業でどんな事を学んだか、どこまで進んでいるのかを教えてくれ」

 

まともにならざるを得なかった。

 

とりあえず今日は、生徒達の学習がどれだけ進んでいるかの確認の日にすることにした。

何せ、いきなりねじ込まれただけで、何も聞かされていないのだ。

初日は授業をする上での準備時間にせざるを得ない。

 

……と、そう判断したグレンだったが、とある生徒の一言で一時限分はまた別のことに使われることになった。

 

「先生!まず先生のことについてもっと知りたいんですけど!」

 

確かに、グレンは自分の名前しか伝えていない。

これから一ヶ月とはいえ、担任として魔術理論を教えるために親睦を深める時間は必要だろう。

 

「……おう、答えられる範囲でなら何でも答えるぞ」

 

こうして、生徒達によるグレンへの質問攻めが始まった。

 

セリカの推薦だということが広まっていたためにその関係性を聞いてきたり、前職は何だったのか、また、魔術階梯がいくつか……など。

様々な問いに、たまに真実をぼかしつつ答えていった。

 

第三階梯(トレデ)だと答えたら露骨に残念そうな雰囲気を出してきたが、それ以外はつつがなく答え、一時限目の授業時間は終了した。

 

そして、二限目以降。

教室に向かう前に渡された教科書を流し見しつつ、生徒たちの魔術知識や前任の授業方法を確認していく。

結果、教科書の内容は上辺だけで魔術理論の詳しい説明は全く載っておらず、生徒の知識も範囲は広いが内容はとても浅い。

更には前任の授業のやり方も教科書に沿っていたため仕方がないのかもしれないが、とりあえず覚えればいいとでも言うように適当。

 

折角魔術を学ぶ上での最高の設備が整っている学院の環境が全然生かされていない現状にグレンはため息をつき、明日からの授業の準備のために昼休み以降の授業をとりあえず自習ということにして教員室に籠るのだった。

 

#

 

翌日。

早々に教科書を投げ捨てたグレンは、生徒達に言い放った。

 

「今日は黒魔【ショック・ボルト】を題材として魔術理論の授業をしていく」

 

瞬間、文句の嵐がグレンを襲うが、気にせず言葉を続ける。

 

「お前らの文句も仕方ないと思うし、【ショック・ボルト】なんてとっくに極めたとか考えてるやつも多いと思うが、取り敢えず今日は聞いてけ。終わった後で全然役に立ってねぇっていうんだったら、またやり方考えてくるからよ」

 

そう前置きして生徒達を黙らせたあと、すぐに学院中を震撼させることになるだろうグレンの授業が始まった。

 

 

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