朽ちぬ花の花言葉   作:ゆゆゆ民

2 / 9
この作品は半分の原作愛と半分の作者の妄想でできています。


一話

しんと静かなある夜、今となっては使われていないどこにでもあるような廃倉庫の前に、背中に細長い包みを背負い黒のジャンパーを着た少女   私は立っていた。

 

全く、少し前までは半袖で過ごせたのに、と白い息を吐いてボヤきつつ目の前の固く閉ざされたシャッターを見上げる。

部下から渡された情報によれば、ここに凶悪なネズミ(・・・)がはびこっているとの事らしい。

それの駆除は無数に存在する私の仕事の内の一つなのだ。

 

「っすぅー......はぁ、よし。」

 

「......変身。」

 

そう呟くと同時に黒い光と花弁が身体を包み、闇に紛れるための黒いジャンパーは光を呑み込む純黒の鎧へと変化する。

 

                      

 

............今から120年ほど前の事。

この四国には、神樹様という神様から力を借り受けて、これまた神樹様の結界の外からやってくる外敵と戦う、世間一般には"勇者"と呼ばれる少女たちがいた。

 

彼女らの使命は、世界を生かすために"バーテックス"と呼ばれているその敵を殲滅する矛となり、自らの後ろにある全てを守り抜く盾となる事。

 

                      

 

コツコツ、とつま先で足元のアスファルトを叩くと同時に、私の影から染み出した真っ黒な瘴気がドームを作るように周囲一帯を囲い込む。

ネズミは一匹たりとも逃すわけにはいかない。

背中の包みを解き、中の刀を抜きつつ一閃。

私はシャッターを切り裂き、風より速く倉庫の中へと飛び込んだ。

 

                      

 

ところが、少し特殊な生い立ちの私には、力と共に貰い受けた護国の使命の他にも、もう一つ役目が与えられていた。

 

といっても、それ程難しい事では無い。

その役目とは、四国という大樹の中に沸いた腐れ、人の身でありながら狂い、人の世を脅かそうとする内敵の排除である。

 

                      

 

突然破壊されたシャッターの音に驚いた見張りの男がこちらを発見し、かなりの速度で拳銃を向けるてくる。

どうやらそこそこできるらしい。

 

けれど、それでも勇者を相手取るには余りに遅い。

狙いを定める前に十数メートルの間合いを詰め、どす黒く濁った瘴気を纏った手で、トン、と胸を叩くと見張りは意識を失いその場に崩れ落ちた。

 

この瘴気を受けた者は、身体に外傷は出来ず、命に関わる事も絶対にありはしない。

だが、それよりも深い場所にある魂はその限りではない。

生物の根源である魂が破損すれば、この先一生光や音を感じることも、己の力で動くことも、まして何かを考える事すらも出来はしない。

事実上、これは殺人と同義の行為である。

 

......私はこの行為に憐れみも後悔も、ましてや罪悪感など絶対に抱く事は無い。

己を庇護する神に背いた時点で奴らはもはや護るべき対象ではない。そんな相手に私は一切容赦をするつもりは無い。

......何より、私にも許せない理由というものがあるのだ。

 

足下に転がるヒトだったものから目線を上げ、見張りが守っていた扉を開ければ............見つけた。

まさに廃倉庫と言った様子の外とは打って変わり、白い天幕や太陽のような紋様の描かれたタペストリーで飾られた儀式場の如き部屋。

 

その中心の台座に小さな、しかし異様なまでの神気を放つ銅鏡が鎮座していた。

 

「チッ、またこんなモノを......あぁもうめんどくさいめんどくさい......誰が後で片付けると思って......」

 

今までの経験から既に予想出来る後始末の面倒くささと、大っ嫌いな奴とそっくりの気配で溜まった苛つきに任せて頭を掻きむしる。

 

ひとしきり頭を掻いて深い溜め息を吐き、漸く落ち着きを取り戻した私は、非常に萎えた気分のまま銅鏡に触れ、瞬間、勢いよく吸い込まれるような感覚に身を任せて目を閉じた。




感想や評価など下さると作者は小躍りして喜びます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。