朽ちぬ花の花言葉 作:ゆゆゆ民
ここに私が閉じ込められてから、何年たったんだろう。
二年?それとも三年?
......もうだいぶ長いことお日様を見ていないから分からなくなっちゃった。
私がここに連れてこられたのは、九歳の誕生日の日。
お父さんとお母さん、それと来年小学生になる可愛い弟。あの人たちが来たのは、皆でケーキを囲んで誕生日会をしていた時だった。
チャイムが鳴って、ドアを開けたお父さんが最初に殺された。パンッ、ていう小さな音と一緒に床に倒れて、赤い水溜まりができた。
その次はお母さんで、私と弟を抱えて部屋の隅に逃げたけど、簡単に引き離されてまたパンッ、と音がして、私のほっぺたに真っ赤な雫がついた。
せめて弟だけでも、そう思って弟を抱えて逃げようとしたけど、結局私は捕まって、布を口に押し当てられて眠らされてしまった。
そして、意識を失う前、もう一度パンッ、と乾いた音がした。
目が覚めた時、周りは完全に真っ暗だった。
周りは岩壁になってるみたいで、唯一見つけた木の扉を叩いて、ここから出して、と叫び続けた。
叫び疲れて、へたり込んだ頃になって、きぃ、と音を立てて扉が開いた。
助けが来たのかと一瞬期待したけど、その望みはすぐに壊された。
無理やり腕を掴まれ引きずり出された私は冷たい寝台の上に押さえつけられて、麻酔の薬を打たれて眠らされた。
次に目がさめたのは、体が内から焼かれてるみたいに熱くて、苦しかったから。
背中もなんだかズキズキ痛んで、手で触ってみると、縫い合わされた痕のある大きな傷ができていた。
今頃になって本当に怖くなった私は、大声を上げて泣いてしまった。
しばらくそうしていると、怒った様子の男の人が入ってきて、酷く痛めつけられた。それからは私は声を出して泣くのを止めた。
唯一気を紛らわせる方法だった運動は、何度も体を弄られたせいで痛くて、できなくなった。
一度逃げ出そうとして、両足の骨を折られて酷く殴られてからは逃げ出そうという気も無くしてしまった。
起きて、最低限のご飯を食べて、無理やり手術を受けて、体の痛みを堪えながらなんとか眠る日々、段々と大きくなっていく焼けるような痛みと、それと引き替えのように、じわじわと失われていく体力。
私の心が折れてしまうまで、そう長くは掛からなかった。
それからしばらくして、眠る事すら難しくなった。
冷たい岩壁で熱い体を冷やして、うずくまるようにして眠って、それでも時々夜中に目が覚めて、痛みにすすり泣いて。
考えることも、あと何日生きていられるか、どうせ死ぬなら楽に、なんて内容ばっかり。
数えるのすら止めてしまうほど長い時間が過ぎて、なぜかまだ、私は生きていた。
本当に痛くて苦しくて、生きているのが嫌になって自分を呪ってしまう位なのに、それでも。
今日は、珍しく外が騒がしくて目が覚めた。
せめて眠っている間くらいは静かにしてほしいのに、なんて考えていると、扉が開かれた。
まだ眠っていい時間のはず、と顔を上げて見えたのは、私の体を弄くるいつもの男の人には見えない小さなシルエット。
「............だ......れ......?」
思わず口からでた声は、長いあいだほとんど喋ってなかったからか、酷く掠れていた。
「っ、大丈夫ですか!?」
焦りを感じる、でも耳に心地いい、優しそうな声。
女の子なのかな?でもなんでこんな所に、外の人たちは、色々と頭に疑問は浮かんできたけど、それも全部、その子に抱き上げられてどうでもよくなった。
だって、その手はとっても温かくて、優しくって。
もう、ここで死んだっていい。そんな事が頭に浮かんで、私は意識を失った。
............なんだか、暖かい。何時も感じている火のような熱さじゃない、いつまでもそこに居たくなるような暖かさ。
ゆっくりと目を開き、辺りを見渡す。
チュンチュン、と雀の声がどこからか聞こえてくるような畳張りの部屋、そこに敷かれたお布団に寝かされていたらしい。
起き上がって、不思議な事に気がついた。体が痛くない。
ペタペタと体に触れれば、いつもは触った所がジリジリ痛むのに、それさえ無くなっている。
ぱた、ぱた、と音がして、私の後ろの襖が開かれた。
「......んぁ、起きてる!?」
振り向いた私の目の前に映ったのは、
「良かった......ずっと眠ってたから心配したよ......?」
母性に溢れた笑みを浮かべ、白い割烹着に身を包んだ
体感駆け足気味?