朽ちぬ花の花言葉   作:ゆゆゆ民

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テスト期間に更新する学生の屑


四話

キュッ、と髪を後ろに縛りいつも通りのポニーテールにして鏡でおかしな所が無いか確認する。

 

「......よし、こんな感じ。」

 

あの地下牢で保護した少女(恐らく友奈)は、極度の栄養不足と睡眠不足で酷く衰弱した状態にあった上、どういう技術を用いたのか、体内で大量の呪いを作り出し、外へと放出する体質へと作り替えられていた。

今更だが、私が『呪い』と呼んでいるこの存在は、神樹様や例のクソが使う神通力の派生した存在で、悪感情によって膨れ上がり、接している全てを蝕み壊す。言うなれば恐ろしく毒性が強く解毒の難しい猛毒のような物だ。

治療こそ済んでもはや苦しむことは無くなったとはいえ、そんな物に体を数年間に渡って蝕まれ続けた彼女の精神状態は決して良いものでは無いだろう。

 

......故にッ!今は私が安心感を与え、彼女の精神の支柱と成らねばならないのだ!

そうと決まれば話は早い。彼女に触れ、もう数時間後に目覚める事が分かった。今すべきは一刻も早く、人に安心を、”日常”を感じさせる姿へと変身する事である。

 

「じゃあ早速っ!............いや日常って、どうすれば良いんだろ?」

 

この後結局、大社職員や友人の知恵を借り、予測時間の十分ほど前にようやくそれらしいモノが完成したのだった......

そしてまぁ、結果は......

 

 

襖の奥からは、布団から起き上がった時の衣擦れの音がする。よしよし、もう目は覚めてるみたい。

笑顔を作り、起きていた事を知らないように装って襖を開く。

 

「んぁ、起きてる!?良かった......ずっと眠ってたから心配したよ......」

 

どこかまだぼぅっとした様子でこちらを見つめる少女に、もう一押し言葉を掛けようとして、

 

「私はチギ「天使(ママ)......」......へ?」

 

正座に体勢を変えようと片手を付いた妙なポーズで静止した私と、失言した、という感じの表情で口元を抑えてワタワタとうろたえる少女。

 

 

......と、こうなってしまった訳である。

 

(仕切り直し中......)

 

「はふはふっ!もくもく......」

 

カチャカチャと、食器とレンゲが触れる小気味良い音に

頬を緩ませつつ必死の形相でお粥をかき込む少女を見つめる。

やはりかなりの空腹だったらしく、かなりジッと見つめているのに気付く様子すらない。まぁ作った側としてはうれしい限りだけれど。

 

「......よく食べるなぁ。」

 

......もしもを懸念してかなり底の深い大きな丼に成人男性三人分ほどの量を入れたのだけれど、既にその殆どが彼女の口に消えている。

 

「ふぅ......あ、ごちそうさまでした......」

 

「はい、お粗末様でした。」

 

私お手製の卵粥を完食して、レンゲを置き手を合わせる少女。

すごい、あれだけ食べてケロッとしてる......いやいや、そんな事よりも。

 

「じゃあ、改めて自己紹介させてもらうね。私は(チギリ)、一応大社のトップやってます。」

 

「私の名前は榊友奈で......えぇっ!?大社のトップって、物凄い偉い人!?」

 

ワタワタと慌てだした少女改め友奈に苦笑しつつ、まぁ形式上だけみたいな所もあるけどね、と続ける。

兎にも角にも、本題はここからである。

 

「悪いんだけど君には、私と暮らしてもらうことになる。」

 

「......えっ、えぇ!?」

 

目を見開いて椅子から若干立ち上がる程に驚いた様子を見せる榊。

まぁ無理も無いだろう。

突然謎の組織に拉致され数年に渡って拷問のような仕打ちを受けた挙げ句、救出された直後に得体の知れないこんなちんちくりんと暮らせ、なんて言われたのだから。

 

「一応理由を説明すると、君の体は今爆弾みたいな事になってる。」

 

「爆弾......?それって危ないんじゃ!?」

 

「うん。君の体はね、少しずつ良くないモノを造って溜め込んでしまうようになってるの。私達の監視下に居るなら制御は簡単なんだけど......」

 

制御はできるという言葉に不安げな表情を若干和らがせる友奈。

......なんだか本当の事を話しているのに詐欺師にでもなったかのようであまり気分は優れないが......まぁ昔は本当の詐欺だってよくやっていた、今更だ。

 

「その良くないモノっていうのがかなり面倒な代物でね、君が嫌だ!とか腹が立つ!なんて思う事があると、際限なく増えていくんだよ。」

 

「そしてそれがある程度溜まっちゃうと、溢れ出して周りにバラまかれる事になる。」

 

その言葉から数瞬の後、友奈の顔がサッと青ざめる。事の重さを理解したらしい。

聡い子だ、なんて偉そうな事を思って内心感心しつつ椅子から立ち上がり、頭を下げる。

 

「君がこんな目に遭っているのは、もとはと言えば私達大社が平和を確立出来ていないのが原因。私は君に謝らなくちゃいけない。......本当に、申し訳ないっ!」

 

「......良いんです、そんな事。」

 

友奈のそんな呟きを耳にして顔を上げれば、そっと片膝をついてこちらに目線を合わせられる。

 

「契さんは、私をあの地獄から助け出してくれた。それだけでも、私は感謝してもしきれないんです。」

 

「今頃になってしまったけど、言わせて下さい。」

 

優しい、日溜まりのような暖かい笑顔。

 

「助けてくれて、ありがとう!」

 

あぁ、眩しくて、懐かしい、そんな微笑み。

本当に嫌になる。

......私みたいなヤツにはもったいないったらありはしない。

 

「......今日から、よろしく。」

 

 

 

 

 

............と、ここまでが三年ほど過去の話。こうして、私と友奈の生活(日常)が始まったのだ。

 

そしてここから先は、その生活(日常)が一旦、終わりを迎える話。




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