朽ちぬ花の花言葉 作:ゆゆゆ民
切腹いたす!(血狂いグサー)
キュ、キュ、と音を立てて窓を磨き、曇り一つ無くなったガラスを見てうん、と頷く。
今日は高校一年生の二学期の最終日で、今は大掃除中だ。
「よし、これで終わり。じゃあね皆!良いお年を!」
「あっ友奈ちゃん、また明日!」
終業のチャイムが鳴ったのを聞き、皆に挨拶をしながら荷物を背負って外に駆け出す。
自転車で帰り道を急ぎながら、冬休みの予定を考えてにやける。......多分端から見ればけっこう気持ち悪い顔をしてる気がするけど、そんな事はどうでもいい。
キキーッ!とブレーキ音を轟かせつつ塀に自転車を立てかけ、靴を脱ぎ捨て廊下を走る。
! 居た居た!
「んぅー......あっ、お帰r「ちーちゃんっ!」んぐぅ!?」
「離しっ......!ねぇ息が......、息がぁっ......」
「すぅぅぅぅっ......はぁぁぁぁぁっ......最っ高......」
帰ってきて早々に私の顔を抱きしめ頭に鼻を押し付け深呼吸する友奈。
というかこのままだとまずい、このやたらに大きな胸に殺されるっ......!
「先にぃ......手をぉ......洗いなさいっ!」
「ぎゃんっ!?」
私のアッパーで友奈が軽く一メートルほど空を舞ったがまぁ......
............ぐでぇ、と軟体動物の如くのびのびと畳に体を預ける友奈を後目に野菜炒めを作りつつ、冬の予定について考える。年末年始が忙しいのはどんな世界でも常らしく、例に漏れず大社もブラック企業めいた忙しさとなるのだ。
友奈は冬休みを私と過ごすつもりで随分と楽しみにしていたけれど、きっとあまり一緒にはいてあげられないだろう。
可哀想な事をする、と小さな溜め息混じりに食卓に料理を並べて友奈に声を掛ける。
「今日のご飯も美味しいね、ちーちゃん!」
「はは、そう言って貰えて良かった。」
全く、変わり映えしない平凡な日々だなぁ、と苦笑しつながらもぐもぐと笑顔で三杯目のご飯を平らげる友奈を見る。
......監視下に置く、とは言ってももっとやり方が合っただろう。そういう込み入った事情がある人の為の施設も当然あるし、なんならもっと馴染みやすい家に引き取って貰う選択肢だってあった。
それでもこうして一緒に暮らしている。
まさかこれが皆への償いだとでも言うつもりなのだろうか。そうだとしたら、途轍もない大馬鹿者だ。
私は、私の我が儘でまた誰かの人生を歪めている。
布団の中で、隣で寝息を立てる友奈の頬をそっと撫でて、誰にも聞こえないような小さな声で一言、呟いた。
「この子は、この子だけはせめて、これから先、最期までずうっと幸せでありますように。」
ちなみに『大赦』でなく『大社』になってるのはワザとだったりします。