朽ちぬ花の花言葉   作:ゆゆゆ民

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たぶん大社はブラック


六話

大社の社員食堂にて、今日はクリスマスイヴ、現在は11時50分ごろのちょうどお昼時。

食堂は土日だろうが祝日だろうが、それこそ正月だろうと出社しなければならない一部の社員達で賑わっている。

そんな哀れな社員達の中で、目立たないように隅の方で縮こまって、(※それでも結構目立っている)私はおにぎりを頬張っていた。

だってほら、他の社員からすれば私は、ちまっこい癖に色々指図してくる嫌な感じの上司だと思うし。

そんなのに近くに居られちゃせっかくのご飯も不味くなるというものだろう。

本当なら自分の部屋で食べたいのだが、それをするととある元同僚に引きずり出されるので大人しく言われたとおりここで昼食をとっている。

 

「失礼するわよ。」

 

そんな事を考えていた私の前で、ガラッと椅子の引かれる音。

顔を上げれば、噂をすればなんとやら。今はこの食堂の料理長を務めている妙齢の女性の呆れ顔があった。

 

「あなたはまたこんな所に一人で......もっと他にも話しかけなさいな?」

 

「蓮華、心配は嬉しいけど別にこれで良いんだよ。それより厨房の方は?」

 

「そんなもの、私がしばらく居なくたって平気よ。なんたって私が鍛えた料理人達よ?一人分の穴くらいどうってことないわ。」

 

ふん、と言わんばかりのドヤ顔でそう語る彼女の話を適当に流しつつ目の前に差し出された唐揚げに箸を伸ばす。うん、流石に美味しい。

ジューシーな唐揚げの食感を堪能していた所で、何時もサッパリした思考をしている蓮華にしては珍しく、浮かない顔で、ねぇ、と話しかけられた。

 

「少し相談があるのだけれど。なんていうか、その、最近眠れないのよ。」

 

「柄にもなく深刻そうな顔してると思ったら......年?」

 

「殴られたいのかしら?コホン、どうにも落ちつかないというか、こう、嫌な予感がするのよ。」

 

「嫌な予感、ねぇ......。」

 

ふざけるのは程々にして、蓮華がここまで不安げにするのは現役の頃でさえあまり無かった。

そして、彼女の長年培われた感覚はよく当たる。

まさか、ここ数十年ほどは来ていないが......"友奈"の誕生と言い、最近活発な天教団の動きと言い、もしあの神がまた動き出すとしたら。

 

「分かった、用心しておくよ。唐揚げごちそうさま。」

 

礼を言って立ち上がり、食堂を後にする。

 

廊下を歩く私の脳裏に過るのは、私が、一人だけが残ったあの光景。あの絶望。そして何よりも、この手に残り続けて消えない肉を貫く感触。

私の非力さが招いた最悪の過去だ。

蓮華の直感が万が一当たるとしたら......いや、そうだったとして今度は犠牲なんて出させるものか。きっと現れるだろう他の勇者なんて必要無い、私一人で全て殺し尽くすだけだ。

私の全てを捧げてでも、今度は完璧に全部を守り抜いてみせる。

 

そこまで考えた所で自分の部屋の前を通り過ぎそうになっていたことに気づいた。

......全く、流石に深く考え過ぎだ。少し頭を冷やさないと。さて、午後の分の書類も頑張らねば。確か後一メートルくらいだったっけ......。

 

 

                      

 

「メリークリスマスちーちゃん!はいこれ!」

 

「おぉ、メリークリスマス友奈。これはぁ......おぉぉ......!」

 

翌日のクリスマス。普段通り出社した私は何故か他の社員達と結託した蓮華に大社から締め出され、強引に休暇を取らされる事となっていた。まだ仕事いっぱい残ってるのに......。

そうして帰ってきた私を待っていたのは、どこに隠してあったのか、豪華なクリスマスの飾り付けと大量の料理、そして友奈のお手製のクリスマスプレゼントだったと言うわけなのだ。

 

そういえばしばらく前から友奈がどこか浮かれているような気がしていたが、知らない間に蓮華と手を組んでこのパーティーを計画していたらしい。

これまでにない凄まじい友奈の行動力に思わず舌を巻いたがこの際もうヤケである。こうなってしまったものは仕方ないと割り切って楽しむまでだ。

明日の仕事の量なんて知らない、知らないったら知らないのだ!

因みに友奈に貰ったプレゼントの中身は、何時か行った遊園地で撮ったツーショットの収められたペンダントだった。自分も同じ物を用意していたらしく、お揃いだね!と嬉しそうにはにかんでいる。

正直に言うと結構ジワッと来た。

 

「はぁ、残業がぁ......睡眠時間がぁ......」

 

「ふっふっふ、ちーちゃんの仕事はしばらく蓮華さんたちが引き受けてくれるように頼んだからちーちゃんも今年中は休みだよ!」

 

「好きッ!友奈好きッ!」

 

条件反射で友奈に飛びつく私と、私の髪に顔をうずめてだらしない顔を晒す友奈。......なんだか、共依存へズブズブと沈んで行っているような気がする。

 

「えへへぇ......幸せぇ......」

 

「......そうだね。」

 

この生活を今一度、省みる。

普通に朝に起きて、普通に仕事して、普通に帰ってきて、普通にただいま、と挨拶して、普通に眠る。

あまりにも当たり前で、幸せな日常。

 

だけどそんな日常は、崩れるのは一瞬で。

 

何の前触れもなくスマホから響き渡る、不安を煽るアラームの音。

 

「何、これ、樹海化、警報?」

 

友奈は、動けている。

勇者と奴らのみしか動けない筈の世界の中で、だ。

 

「......ふざけるな」

 

こうなるのはどこかで理解していたはずだった。

友奈という少女が産まれてきた以上、ほぼ確実な事なのだと。

それなのに、何故だろう。

 

「ふざけるなふざけるなふざけるなっ......!」

 

こうもとめどなく怒りが溢れてきてしまうのは。

 

地平線から世界を包み込むように極彩色の光が押し寄せて、私と友奈を飲み込む。

 

真っ白に塗り潰された視界のどこかで、日常の壊れる音がした。

 

 




バーテックス「仕事の時間よ^~」

契「来ないで?」
友奈「どういうことなの......」
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