朽ちぬ花の花言葉   作:ゆゆゆ民

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そろそろ亀更新ってタグに増やさなきゃなぁ......
んなぁ......(自戒)


八話

天使型の星座盤が輝き、ヒュッ、という小さな音に反応して、咄嗟に構えた生太刀が押し退けられたように弾かれる。その次の瞬間、髪が一束切り飛ばされ、耳に熱い痛み。

ゾクリと粟立つ首筋。

飛び散る鮮血。

その場から飛び退いた次の瞬間には、不可視の何かが微かな音と共に通り過ぎ、足元から後方の木の根までの間に深々と数十本の筋が刻まれる。

 

「危ないな......あとほんの少し遅ければスライスされる所だったぞ?」

 

斬撃の痕の深さからしてかなりの切れ味だ、当たれば私の体など鎧ごとバターのように裂かれるだろう。

そして飛んでくる数もかなりのもの、無理に近づけば次の瞬間には挽き肉だろう。

ヒュン、ヒュン、と飛んでくる何かを避けつつ天使型(ヤツ)を見るが、顔をこちらに向けてこそいるものの指一つ動かさず、完全に静止している。

 

「チッ、観察でもしてるつもりか!」

 

余りにも一方的な戦況に悪態をつくが、内心、焦りが増している。

反撃に必要なヒントが見つからないのだ。

その上、数十秒前までは跳びまわる私の後ろを通り過ぎるレベルの精度だった狙いは、今は肌を掠める程に正確だ。

せめてもの反撃と、巻き上げられた小石を蹴り飛ばし撃ち出すが、命中の寸前で逸らされ後方へと飛んでいく。

飛来する刃の正体、引いてはヤツの能力の正体は何か、なんとなく予想はついているが、その能力の根源は何か............

やはり、よく見ればヤツの背中から蟲の羽根の如く薄く半透明な半円状の羽が生え、小刻みに動いている。

そして羽が震えるたび、ヒュッと言う音と共に不可視の刃が飛んでくる。

 

「天秤座、見えない刃、逸らされた小石......なるほど。」

 

狙いがどんどんと正確になり、脚を切断する軌道の刃を体を捻って避け、手の平に瘴気を集中させる。

想像するのは(いしゆみ)、そしてつがえる矢には少し凝った物を。

 

「特別製だ、持っていけ!」

 

放たれた矢は悲鳴のような風切り音と共に飛び、天使型の体に当たる寸前に見えない壁に阻まれ......一瞬の拮抗の後、それを貫いて半円状の羽を打ち抜き奴の羽がちぎれ飛ぶ。

瞬間、弩を構えた腕に食い込み肘から先を切断しかけた刃が消滅し、私は伝い落ちた血を振り払って挑発するように嗤う。

 

大正解(パーフェクト!)!やっぱり風、いや、空気を操ってたな!」

 

刀から伝わった金属などの硬質な物とは違う妙な感触、風を起こす天秤座(ライブラ)からの進化体であること、そして極めつけには小石(飛び道具)の軌道を逸らされた事。ヒントが多くて実に分かり易くて助かった。

 

「敗因は能力が余りにも分かりやすかったことだ、ライブラッ!」

 

天秤型は残った片羽を震わせこちらに刃を飛ばしてくるが、狙いも威力も先ほどまでとは比べるまでも無い。

弾き、かわして距離を詰め、放った矢で薄い空気の壁を突き破り今度こそトドメを刺すべく生太刀を胸の星座盤に突き立てようとして

 

ぎぃっ...やあああぁぁぁぁ!!

 

最後の抵抗と言わんばかりの耳を劈くような天使型の叫び声を聞き、次の瞬間思いっきり体を引き上げられる。

 

「うわっ!?これは、大気圧を操って竜巻を起こしたのか、滅茶苦茶だな......!」

 

体をバラバラに引きちぎられそうな風の暴力を耐え、空中を舞う木の根にしがみついて周りを見れば、バラバラになった木の根や砕けた地面の破片が所狭しと飛んでいる。

私は実物を見たことは無いが、自然発生したものと比べても同レベル、いやひょっとしたらそれ以上かもしれない。まさしく天の使いを名乗るに相応しい力だと敵ながら感心する。

 

「だけど、なぁ......。」

 

少し時間をかけすぎだ。約束の五分までそう時間はない。

指を根に食い込ませて姿勢を直し、息を整え、集中する。出来ることならあまり使いたくないが仕方ない。

 

「友奈を待たせてしまってるんだ。」

 

   これ以上、お前如きの相手をしている暇は無い。

生太刀を握る手に力を込め、『()』をイメージして自分自身を保つ。

 

「満、開......!」

 

私の中へ呼び込まれて全身を駆け巡り、"私"に触れ、飲み込もうとする無数の怨恨や呪詛を強引に抑えつけ、逆に喰らって瘴気へと変換する。

身を包む勇者装束の鎧が神官服めいたモノに変換され、刀身を覆った瘴気が固形化し、身の丈ほどの大剣へと変わった。

 

「ふぅ......さて。」

 

ズン!、と足場を蹴り砕いて加速、距離を詰め、天使型が反応するより速く胸の御霊(コア)を星座盤ごと大剣で貫く。

貫かれてから数瞬後、己の状況に気付いた奴が手を伸ばすがとっくに手遅れだ。

 

「しぶとい。さっさと倒れろ、バーテックス。」

 

刃を横凪ぎに振り抜かれ、天使型は虹色の光と一握りの砂山へと姿を変えた。

 

                      

「私は、勇者になるっ!」

 

私の言葉に三体の注意がこちらへ向いたのを感じる。

緊張に乾いた唇を湿らせ、萎縮しそうな内心を振り切るように口角を上げる。

 

「そこの二人、どこか安全な場所に隠れてて!」

 

「わ、わかったっ!」

 

後ろの二人が隠れたのを確認し、前を見ようとして、とてつもない大音量の不協和音が耳を襲った。見ると、緑色の怪物の頭に付いている鐘が揺れてこの音を出していた。

 

(っ、これじゃ手が使えない!他の二体の攻撃も避けるしかない!)

 

耳を押さえながら怪物の方を見上げて、ほんの目前にまで迫っていた爆弾と水球を咄嗟にかわし、後ろで響いた爆発音に冷や汗を流しつつ走り出す。

ピンクと青色の怪物からとめどなくこちらに爆弾と水球が撃ち出されている。

当たれば相当に危ないだろうが、弾速は遅く、走っていれば当たることは無さそうだ。けれど......

 

ゴォォン...!!ゴォォン...!!

「っ......ぐぅ......!」

 

問題なのは耳を塞いでも、まだ頭にガンガン響くほどのこの音がずっと鳴り響いていること。

身体能力の強化されて頑丈になっている私はともかく、後ろの二人は長く聞いていたら危ないかもしれない。

ちーちゃんは五分耐えてと言っていたけど、このままだとそれすら危ない。ここは一つ攻めに出るしかない!

 

「さっきからガンガンガンガン、うるさぁぁい!」

 

意を決して弾幕をかいくぐって飛び上がり、耳の痛みをこらえて緑色の怪物の鐘の関節部分を蹴り抜く。

ガゴンッ!と言う音と、硬いものを砕いた確かな感触と共に、衝撃で怪物の体がぐらりと傾き、吊されていた鐘が落ち、砂へと変わっていく。

 

「わぁっ!?」

 

が、次の瞬間、これを狙っていたのか水の玉と爆弾の集中砲火が直撃し地面へと叩き落とされてしまった。

 

「っ!?いったぁ......」

 

運良く水球が爆発を防いだのか外傷は軽い火傷で済んだが、爆発と墜落の衝撃で脚を傷めたらしく、体を動かせない。

更に追い討ちを掛けるように、二体の怪物はもう一度こちらに狙いを定め、水球を圧縮し、爆弾を溜め始める。

動けない状態を狙って確実に私を殺すつもりらしい。

 

「勇者の人ぉ!早く逃げろぉ!」

 

離れた場所の根の影から、さっきの人の声が聞こえるが、動けない。

 

「っ......!ぅぉああぁぁぁ!!」

 

私は自分の目を疑った。

なんと、さっきの人が私と怪物の間に立ちふさがり両手を広げて私を庇っていたのだ。

 

「なっ!?出てきちゃダメ!早く戻って!」

 

「目の前で殺されかけてる奴を見捨てるなんて、できるかぁ!」

 

「だからって何してるの!?そんな事したってあなたまで殺されるだけ!あの怪物の狙いは私、だから早く戻って!」

 

まずい、怪物達の方を見れば、やはり攻撃を溜め続けている。

きっと私の前に立っている彼女の体なんて簡単にバラバラにして、後ろに居る私ごと殺せてしまうだろう。

それならばせめて、と必死に手を伸ばし、彼女を引き寄せ抱きしめるように庇う。

 

今頃になってこみ上げてきた恐怖に、ギュッと目をつむり、せめて衝撃と痛みに備える。

ところが、目を閉じた次の瞬間に私を襲ったのは、立っていたなら体が吹き飛ばされる程の暴風だった。

無数に吐き出された爆弾と鉄砲水は暴風に吹き飛ばされ、怪物達は三体とも体を真っ二つにされて砂と光の粒子になって消えていったけれど、そんなことはもうどうでもよかった。

 

「お待たせ、友奈。遅くなっちゃってごめんね?」

 

ふわり、と夜色のマントと白銀に変わった髪をはためかせた小さな影が舞い降りる。

疲れから倒れる私は抱き止められ、薄い意識の中で優しい笑みを見た。

やっぱり、ちーちゃんはいつだって私の最高のヒーロー(勇者)だ。




戦闘シーンって難しいね
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