ファンタジア!~異世界転移した私は勇者を目指します~   作:ヤマタ

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第37話 魔龍を撃て!

 魔龍ドラゴ・ティラトーレと魔女ルーアルの襲撃によって、建国祭で賑わっていたタイタニア王都は阿鼻叫喚の地獄へと変容した。ティラトーレの攻撃で次々と火炎が巻き上がり、市民や観光客達は我先と逃げまどう。

 

「チッ・・・この魔龍というのは化物か・・・」

 

 シエラルはドラゴ・ティラトーレ相手に引き下がらずに立ち向かうが、飛行する相手へ攻撃を当てるのは困難を極める。相手からのほとんど一方的な砲撃を躱すので精一杯だ。

 

「シエラル、久方ぶりだな」

 

「あぁ、クリス様。こんなところでお会いすることになるとは」

 

 タイタニア第1王女であるクリスが自らの騎士団を率いて駆け付け、シエラル達の支援に入る。

 

「飛んでいるアレを落とすためには遠距離攻撃が有効だな」

 

「そうですね。魔弾を直撃させればいいのですが、あの背中に乗る魔女が防御してくるので当たらないんです」

 

 ミリシャが魔弾を撃とうとも、ルーアルが魔力障壁を展開して防いでしまう。そんな光景が何度か繰り返され、未だにダメージを与えられていない。

 

「私達で注意を引き付け、射撃隊に十字砲火で仕留めさせる。いくら化物でも攻撃が集中すれば倒せるはずだ」

 

 クリスもまた先陣を切って魔龍の前に躍り出る。その視線を受けつつも、全く怯むことなく剣を向けた。

 

「そんな武器では我に攻撃は届かんよ」

 

「そうかな?」

 

 クリスの狙いはティラトーレが攻撃するタイミングだ。いくら魔龍の火力でも有効射程範囲があり、魔弾や火炎を陸に照射するためには低空に侵入する必要があった。その高度なら適合者の全力のジャンプで届くし、剣で攻撃するのも不可能ではない。

 

「アタシ達も馳せ参じたわ」

 

「アイラ、待っていたぞ」

 

 第2王女のアイラもまた部隊と共に参上し、クリス達と戦線を形成してティラトーレに対する。

 

「フン・・・雑魚がいくら集まろうと、この我の敵ではないな!」

 

「そうですとも。さぁ、ヤツらを焼き払ってやりましょう」

 

 ティラトーレの翼に魔力が集中し、高出力の魔力光弾の照射が始まる。それを見るルーアルは満足そうな顔であった。

 

 

 

 

 

「ゴメン・・・迷惑かけちゃった・・・」

 

「そんなことないわ。あんな攻撃、躱せってのが無理な話よ」

 

 詩織はリリィに背負われて城の敷地内にある臨時拠点へと運ばれた。ここでは負傷した兵士や市民が手当を受けており、詩織もまた医師によって治療される。

 

「傷の程度には問題ないみたい。吹き飛ばされて意識は朦朧としていたけど」

 

「良かった。じゃあわたしは皆の援護に行くわね」

 

「待って!私も連れていって」

 

 詩織は慌てて立ち上がり、リリィの前に立ちふさがる。

 

「まだ様子を見ておいたほうが・・・」

 

「大丈夫。体はちゃんと動くし、あんなヤツがいるのに寝てられないよ」

 

「分かった。では行きましょう」

 

 詩織の戦意の宿った瞳を見てリリィは頷き、再び魔龍と友軍が交戦している地点へと出撃しようとした。その時、

 

「あっ!ここにいらっしゃったんですね、リリィ様」

 

「シャルア、どうしたの?」

 

 以前立ち寄った研究棟のシャルア・イオが大手を振ってリリィの元へ駆け寄る。

 

「実はこれをお渡ししたくて・・・」

 

「これは?」

 

 シャルアが取り出したのは二つの黄金の杖だ。どこかで見覚えがあるなと詩織は記憶を探る。

 

「リリィ様達がベルフェンから持ち帰った杖ですよ。真っ二つに折れていて機能を失っていましたが、ディグ・ザム坑道から得られた鉱石等と組み合わせて修復することに成功しました。一つに接着し直すことはできませんでしたが」

 

 その説明でクイーンイービルゴーストと手を組んでいたイルヒが用いていた杖だということを詩織は思い出す。

 

「ふむ。これで魔弾を使った遠距離攻撃も可能ね」

 

「はい。普通の杖とは違う特別な魔具のようですし、これであの飛行型も倒せるかもしれません」

 

「ありがとう。うまく使いこなしてみせるわ」

 

 リリィはその杖の一本を詩織に手渡し、二人は城の門を出る。

 

「確かこの杖、魔弾が曲がるんだよ」

 

「そう言っていたわね。わたし達にもそれが可能なら、あの魔龍にも直撃をかけることができるわね」

 

 やり方は知らないが、実戦で試してみる他にない。しかし普段杖など使わないので不安ではある。

 

「ミリシャに魔弾を撃つコツでも聞いておけばよかったな」

 

「前に聞いたことがあるけど、抽象的であまり参考にはならなかったわ」

 

「そうなんだ・・・」

 

 ミリシャのような射撃をできる気はしないが、それでも、とにかくやるしかないのだ。

 詩織は杖を握りしめ、あの魔龍にリベンジをかましてやると気合を入れた。

 

 

 

 

「ん?ヤツの気配だ」

 

「あの勇者ですか?」

 

「あぁ。今度こそ潰してやる」

 

 数人の適合者を魔弾で吹き飛ばしつつ、詩織の来る方へと姿勢を向ける。先ほどは倒しそこねたが、今度こそは消し炭にするために魔力を全身に流す。

 

 

 

 

「撃たれる前に撃っちゃいましょう」

 

「だね。どれだけ魔弾が飛ぶかもよく分からないし」

 

 詩織とリリィは黄金の杖を魔龍に向け、魔弾を撃ち放った。普通の魔弾とは異なる煌めく光の尾を引きながら飛翔していく。

 

「そんな攻撃ではな」

 

 ティラトーレはスッと位置を変えて射線から避けたが、

 

「・・・何っ?」

 

 魔弾はティラトーレに向けてホーミングし、曲線を描きながら急速に接近してきたのだ。

 

「なんという魔弾だ。射線を曲げてきた」

 

「あの魔具は自分は見たことがありません」

 

「新型というのか」

 

 ティラトーレもルーアルも知らない攻撃ではあったが、それを脅威とは思わなかった。この程度であれば回避も難しくないし、一度見てしまえば対処は簡単だろう。

 

「シオリ、曲がったわよ!」

 

 予想よりも魔弾が曲線に飛んだことでリリィが喜ぶ。が、詩織は不思議な感覚を味わっており、眉をひそめた。

 

「どうしたの?」

 

「なんていうかな、魔弾の飛ぶイメージが頭の中に視えた」

 

「えっ?そんな感覚はなかったけど」

 

「マジか。もう一度やってみる」

 

 詩織は第二射を放つ。すると、また頭の中に飛翔する魔弾の視点のようなイメージが脳内に投射された。

 

「・・・分かった!そういうことか!」

 

 目をつぶり、そのイメージに集中した。すると・・・

 

「なんて動きを・・・」

 

 リリィが見守る中、魔弾は急激な方向転換を行い、避けたティラトーレの側面から襲い掛かる。

 

「頭のイメージに考えを伝えることで魔弾の動きを制御できるみたい」

 

「なるほど。シオリの特殊な魔力と杖が完全にリンクしたことで真価を発揮したのよ。わたしや元の持ち主ではできなかったけど、シオリなら高精度なコントロールができるんだわ」

 

 強引な解釈なような気もするが、今はそうとしか考えられなかった。勇者と呼ばれる異界の適合者に反応する聖剣と似た性質なのだろうと。

 

「リリィ、あの魔龍に牽制攻撃をお願い。私が追撃して撃ち落とすよ」

 

「よし、やってやるわ!」

 

 リリィが魔弾を放ち、それに少し遅れて詩織も魔弾を発射する。それに対してティラトーレは回避運動を行い、ルーアルが迎撃のために杖を構えた。

 先んじて撃たれたリリィの魔弾はティラトーレを追尾するように滑らかにホーミングするが、直撃はしない。意思のない機械的な追尾機能など容易に見切られてしまう。

 

「そこだっ!当たれっ!」

 

 しかし詩織の魔弾は違う。まるで生物のような意思を持つかの如く敵を追尾する。そのコントロールを直感で会得した詩織ならば本来あり得ない芸当ができるのだ。

 

「だがなっ!」

 

 避けきれないと判断したルーアルが魔力障壁を展開。薄い透明色のバリアーがティラトーレを包みこむが、

 

「なんとっ!?」

 

 その魔力障壁を魔弾が貫通し、ティラトーレの腹部に直撃する。ダメージは大きくないが、姿勢を崩して失速し、そのまま地面へと落下した。

 

 

 

 

「やったのか?」

 

 空中で巻き起こった砲撃戦の様子を見ていたシエラルはティラトーレの落下地点に急行する。あの一撃がトドメになっていればいいなと祈るも、

 

「しぶといヤツだ」

 

 粉塵の中から巨体が現れ、火炎を放射する。すでに傷は修復されており、怒りに狂うティラトーレは目に付いた物を破壊しようと暴れているのだ。

 

「地面に降りてきたのなら・・・!」

 

 シエラルは魔剣に魔力を流して渾身の斬撃を浴びせようとするが、別方向からの殺気を探知してその場から飛びのく。

 

「ルーアル、貴様!」

 

「これ以上の邪魔だては許さん」

 

 ルーアルの尋常ならざる火力の魔弾がシエラルや後続の適合者達を狙う。魔龍にも引けを取らない遠距離攻撃は脅威であり、暴れまわるティラトーレも相まって手を付けられない。

 

「皆、道を開けて!!」

 

 打つ手を考えている中、後方からのリリィの叫びを聞いたシエラル達は咄嗟に飛びのく。すると、先ほどまでシエラルが立っていた場所を閃光が薙ぎ払った。

 

「シオリの聖剣か」

 

 この特異なパワーは間違いなく詩織だ。聖剣を用いて夢幻斬りを放ったのだろう。

 

「う・・・ぐっ・・・」

 

 剣状の閃光はティラトーレの片翼と腕を斬り飛ばした。ティラトーレはよろけ、建物に激突する。

 

「こんな小娘に・・・!もう勘弁ならん!!」

 

 魔龍の強靭な生命力とダークオーブの魔力はダテではなく、このような大きな損傷も回復してしまう。倒すためにはダークオーブを破壊するか、頭部もしくは心臓といった生命維持に不可欠な部位を潰すしかない。

 

「この街もろとも焼き払ってやる!」

 

 翼を広げ、魔力光弾の発射体勢を整えるが、

 

「させませんわ!」

 

 ミリシャをはじめに、杖を主兵装とする適合者達が一斉に魔弾を叩きこんだ。

 

「くぅ・・・」

 

 さすがのティラトーレであっても、通常攻撃をこれだけ受ければただでは済まない。体のあちこちが穿たれ、鮮血が飛び散る。

 

「いけるぞ!このまま!」

 

 クリスの指示のもと更なる火力が集中し、大きな爆発が巻き起こった。もはや普通の魔物なら木っ端微塵になるほどの魔弾が炸裂し、皆が勝ちを確信したのだが・・・

 

「なんだ、このプレッシャーは・・・」

 

 シエラル達と合流した詩織は背中に悪寒が走る。ゾッとするほどの恐怖のような感覚が増大していく。

 

「あの敵、まだ生きている!」

 

 詩織の叫びと共に目の前で爆煙が吹き消され、そこから邪悪な黒いオーラを纏うドラゴ・ティラトーレが姿を現す。胸部の内側から淡い光が透けており、詩織はその光がダークオーブのものだと得心した。

 

「ダークオーブはこう使う」

 

 そのオーラがティラトーレの体に吸収されて肉体が変異していく。翼は四枚に増え、爪が尖る。更に四肢は太くなって頭部には鬼のような一本の巨大なツノが生えた。

 

「ふぅ・・・この力を制御できるから魔龍なのだ!」

 

 凶暴性の増した外見に威圧された者達は腰を抜かしそうになっているが、シエラルやクリスなどの歴戦の勇士は動じない。詩織は怖気つつも、隣に立つリリィの存在が支えとなっていた。

 

「ルーアルよ、我を援護するのだ」

 

「はい。死角に入りこんだ敵はお任せを」

 

 血走ったティラトーレの目には、人類など虫けら程度にしか映っていなかった。

 

            -続く-

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