KAMEN RIDER ERUPT / 仮面ライダーイレプト   作:YAMA_Tokusatsu

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第1話 Eの幕開け/日常が終わった日①

「侵入者確認。侵入者確認。現場へ急行せよ。繰り返す。侵入者確認。侵入者確認――」

 甲高い警報音と共に、事件を知らせる放送が鳴り響く。

真白く長い通路を、アタッシュケースを抱えた若い女が走っていた。

「いたぞ! 捕らえろ!」

 予想以上に早い追っ手に、彼女は焦りを感じていた。逃げ道はしっかり把握しているが、問題なく通過できるとは限らない。しかし、それでもこれだけはやり遂げなければならない。その一心でただひたすら走り続けていた。

「手加減は無しだ、殺して構わん。決して逃がすな!」

 彼女を追ってきた警備員達は、胸のポケットから一斉に細長い小箱――ガイアメモリを取り出し、掌に挿した。

《マスカレイド!》

 電子音声と共に怪人化した警備員達が、彼女に襲いかかる。女は強化拳銃で応戦しながら、出口へ向かって走り続けた。

 

「翔! もう追っ手が来てる! 急ぐよ!」

 警備員達の追撃から逃れ、駐車場へとやってきた若い女、清佳は、仲間の翔の元へ走った。

「大丈夫、バイクは準備万端だ。例のメモリは?」

 清佳はアタッシュケースから赤いガイアメモリを取り出し、翔に渡した。

「本当に使えるの? 失敗したら、私達もただじゃすまないよ」

「使えようが使えまいが、俺達が何としてでも逃げなきゃいけないのは変わらない。できる限りのことをするだけだ。乗れ、時間は無いぞ」

 清佳は不安を感じながらも、翔の乗ったバイクの後ろに跨がる。翔はバイクを急発進させ、荒い運転で駐車場から走り出した。後方には既に追っ手のバイクが何台も迫っていた。

「清佳、しっかり掴まっていろ! 飛ぶぞ!」

 清佳は翔の体にしがみつく。翔はガイアメモリを取り出し、バイクについているスロットに装填した。

《イラプション! マキシマムドライブ!》

 翔がアクセルを勢いよく回すと、巨大なマフラーから炎が激しく噴き出し、轟音と共に機体を宙へ舞い上がらせた。翔はその衝撃に耐えながら、もう一度アクセルを強く回した。

《イラプション! マキシマムドライブ!》

機体はさらに上昇し、追っ手を遠く離して着地した。

「本当に上手くいったね・・・・・・」

「ああ。だがまだ油断はできん。飛ばすぞ!」

 翔達の乗ったバイクはスピードを上げ、真っ暗な森の中へと消えていった。

 

=====

 

 二〇二〇年八月一日。

 

 普通二輪の免許を取るため教習所に通う高校生、檜山壮介は、教習所の休憩室でくつろいでいた小学生時代からの親友、根室仁の隣に座った。

「なあ仁、お前あれ、忘れてない?」

「あれって?」

「またまた、とぼけてんだろ。今日が何の日か、忘れたとは言わせねぇぞ」

「お前さ、もう少し謙虚になったほうがいいぞ。そりゃ今日がお前の誕生日なのは覚えてるけどさ、そんな言われ方じゃあ、プレゼント渡す気も失せちゃうなぁ」

 仁は深くため息をついて答えた。

「悪い悪い。で、今年は何くれるんだよ」

 壮介は悪びれる様子も無く、軽やかに笑って言った。

「今は持ってきてないんだ。まさかお前と時間が被ってると思わなかったからな。後で家に持っていくから、今日は出かけずに家に居てくれよ」

「了解了解。楽しみに待ってるよ」

「おうおう。ところで、お前そろそろ休憩終わりじゃないか?」

「んー、そろそろかな・・・・・・ってもう時間!」

壁に掛かった時計を見て、壮介は焦って椅子から立ち上がる。その拍子に、持っていた荷物を床に落としてしまった。

「来年の夏は、バイクでどこか出かけようぜ」

落とした荷物を拾いながら、壮介は言った。

「そうだな。頑張れよ、壮介」

 仁はそう言って、持っていたペットボトル飲料を壮介に投げ渡す。荷物で塞がった手でなんとかキャッチした壮介は「お前もな」と言って休憩所を後にした。

 

=====

 

「暑ぃ・・・・・・この夏一番だな」

 真昼の強い日差しに照らされ、絶えず流れてくる汗を拭いながら帰路につく壮介は、空を見上げて呟いた。眩しさに目を細めながらも、その目に映る夏らしい青に興奮を高めていた。

 

 帰宅した壮介が家に入ろうとしたとき、玄関先にポツンと置かれたアタッシュケースが壮介の目にとまった。明らかに普通の荷物では無い。なんとも不気味な雰囲気のそれは、ほのぼのとした玄関先にはあまりに似合わないものだった。

「なんだろ・・・・・・これ」

 なんとなく辺りを見渡してみるが、特に怪しい人はいない。誰かの置き間違いというわけでもなさそうだ。となると伯母さんの荷物だろうか。彼は玄関を開けて呼びかけた。

「伯母さーん、外の荷物、あれ伯母さんの?」

 返事は無い。この時間なら、恐らく買い物にでも出かけているのだろう。そのまま外に置いておくのもいかがなものかと思い、一先ず彼は荷物を家に持って入ることにした。

 

 リビングに入った彼は、テーブルの上に置き手紙を見つけた。

「『買い物に出ています、夜はカレーです』・・・・・・やっぱり買い物か」

 伯母さんが帰ってくれば、この荷物の正体もきっと分かるだろう。これはこのままリビングに置いておくことにしよう。

――そう思っているはずなのに、彼はケースを手放すことが出来なかった。何だか分からないその荷物に、彼は強く惹きつけられていた。

(何だこれ・・・・・・ケースが、いや、その中身か? まるで俺を呼んでいるような・・・・・・)

 その奇怪で経験したことのない感覚は、既に恐怖を通り越して強い興味へと変わっていた。

(この荷物には何かがある・・・・・・何かが俺を呼んでる・・・・・・)

 正体の分からない感覚に流されるがまま、彼はそれを部屋へ持っていってしまった。

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