KAMEN RIDER ERUPT / 仮面ライダーイレプト 作:YAMA_Tokusatsu
「侵入者確認。侵入者確認。現場へ急行せよ。繰り返す。侵入者確認。侵入者確認――」
甲高い警報音と共に、事件を知らせる放送が鳴り響く。
真白く長い通路を、アタッシュケースを抱えた若い女が走っていた。
「いたぞ! 捕らえろ!」
予想以上に早い追っ手に、彼女は焦りを感じていた。逃げ道はしっかり把握しているが、問題なく通過できるとは限らない。しかし、それでもこれだけはやり遂げなければならない。その一心でただひたすら走り続けていた。
「手加減は無しだ、殺して構わん。決して逃がすな!」
彼女を追ってきた警備員達は、胸のポケットから一斉に細長い小箱――ガイアメモリを取り出し、掌に挿した。
《マスカレイド!》
電子音声と共に怪人化した警備員達が、彼女に襲いかかる。女は強化拳銃で応戦しながら、出口へ向かって走り続けた。
「翔! もう追っ手が来てる! 急ぐよ!」
警備員達の追撃から逃れ、駐車場へとやってきた若い女、清佳は、仲間の翔の元へ走った。
「大丈夫、バイクは準備万端だ。例のメモリは?」
清佳はアタッシュケースから赤いガイアメモリを取り出し、翔に渡した。
「本当に使えるの? 失敗したら、私達もただじゃすまないよ」
「使えようが使えまいが、俺達が何としてでも逃げなきゃいけないのは変わらない。できる限りのことをするだけだ。乗れ、時間は無いぞ」
清佳は不安を感じながらも、翔の乗ったバイクの後ろに跨がる。翔はバイクを急発進させ、荒い運転で駐車場から走り出した。後方には既に追っ手のバイクが何台も迫っていた。
「清佳、しっかり掴まっていろ! 飛ぶぞ!」
清佳は翔の体にしがみつく。翔はガイアメモリを取り出し、バイクについているスロットに装填した。
《イラプション! マキシマムドライブ!》
翔がアクセルを勢いよく回すと、巨大なマフラーから炎が激しく噴き出し、轟音と共に機体を宙へ舞い上がらせた。翔はその衝撃に耐えながら、もう一度アクセルを強く回した。
《イラプション! マキシマムドライブ!》
機体はさらに上昇し、追っ手を遠く離して着地した。
「本当に上手くいったね・・・・・・」
「ああ。だがまだ油断はできん。飛ばすぞ!」
翔達の乗ったバイクはスピードを上げ、真っ暗な森の中へと消えていった。
=====
二〇二〇年八月一日。
普通二輪の免許を取るため教習所に通う高校生、檜山壮介は、教習所の休憩室でくつろいでいた小学生時代からの親友、根室仁の隣に座った。
「なあ仁、お前あれ、忘れてない?」
「あれって?」
「またまた、とぼけてんだろ。今日が何の日か、忘れたとは言わせねぇぞ」
「お前さ、もう少し謙虚になったほうがいいぞ。そりゃ今日がお前の誕生日なのは覚えてるけどさ、そんな言われ方じゃあ、プレゼント渡す気も失せちゃうなぁ」
仁は深くため息をついて答えた。
「悪い悪い。で、今年は何くれるんだよ」
壮介は悪びれる様子も無く、軽やかに笑って言った。
「今は持ってきてないんだ。まさかお前と時間が被ってると思わなかったからな。後で家に持っていくから、今日は出かけずに家に居てくれよ」
「了解了解。楽しみに待ってるよ」
「おうおう。ところで、お前そろそろ休憩終わりじゃないか?」
「んー、そろそろかな・・・・・・ってもう時間!」
壁に掛かった時計を見て、壮介は焦って椅子から立ち上がる。その拍子に、持っていた荷物を床に落としてしまった。
「来年の夏は、バイクでどこか出かけようぜ」
落とした荷物を拾いながら、壮介は言った。
「そうだな。頑張れよ、壮介」
仁はそう言って、持っていたペットボトル飲料を壮介に投げ渡す。荷物で塞がった手でなんとかキャッチした壮介は「お前もな」と言って休憩所を後にした。
=====
「暑ぃ・・・・・・この夏一番だな」
真昼の強い日差しに照らされ、絶えず流れてくる汗を拭いながら帰路につく壮介は、空を見上げて呟いた。眩しさに目を細めながらも、その目に映る夏らしい青に興奮を高めていた。
帰宅した壮介が家に入ろうとしたとき、玄関先にポツンと置かれたアタッシュケースが壮介の目にとまった。明らかに普通の荷物では無い。なんとも不気味な雰囲気のそれは、ほのぼのとした玄関先にはあまりに似合わないものだった。
「なんだろ・・・・・・これ」
なんとなく辺りを見渡してみるが、特に怪しい人はいない。誰かの置き間違いというわけでもなさそうだ。となると伯母さんの荷物だろうか。彼は玄関を開けて呼びかけた。
「伯母さーん、外の荷物、あれ伯母さんの?」
返事は無い。この時間なら、恐らく買い物にでも出かけているのだろう。そのまま外に置いておくのもいかがなものかと思い、一先ず彼は荷物を家に持って入ることにした。
リビングに入った彼は、テーブルの上に置き手紙を見つけた。
「『買い物に出ています、夜はカレーです』・・・・・・やっぱり買い物か」
伯母さんが帰ってくれば、この荷物の正体もきっと分かるだろう。これはこのままリビングに置いておくことにしよう。
――そう思っているはずなのに、彼はケースを手放すことが出来なかった。何だか分からないその荷物に、彼は強く惹きつけられていた。
(何だこれ・・・・・・ケースが、いや、その中身か? まるで俺を呼んでいるような・・・・・・)
その奇怪で経験したことのない感覚は、既に恐怖を通り越して強い興味へと変わっていた。
(この荷物には何かがある・・・・・・何かが俺を呼んでる・・・・・・)
正体の分からない感覚に流されるがまま、彼はそれを部屋へ持っていってしまった。