やはり俺の青春ラブコメはデートからしてまちがっている。 作:現役千葉市民
「スローロリス、動いてくれなかったからスローなのかなんなのかわからんかったな」
「休日のお兄ちゃんみたいな感じだったねー」
ゴリラ展示の後ろにある動物科学館の夜行生物展示を一巡した俺たちは感想を口にしながら、次は園内の反対側から回ってみようと、中央広場を通って鳥類・水系ゾーンへと移動していた。
「ヒッキーって、家の中だとあんな感じなの?」
「ああ、生きてるか死んでるかわからないレベルで動かないからな。この点ならスローロリスにもナマケモノにも生物の霊長たる人間として勝てる自信がある」
「その『れいちょう』がゼロ成長という意味なら圧勝でしょうね」
俺のペラッペラな自慢を、クスクスと笑いながら鋭利な刃物のようなツッコミで切り裂く雪ノ下さん。楽しそうでなによりです。
「まあでも、動いてもこの通りノロノロなんですよー。ホントに手のかかる兄でー」
そんな俺たちのやり取りに小町がニコニコ顔で横から出てくる。うん? 小町のこの顔はロクでもない企みを思いついたときにする小悪魔フェイス。こいつ、なにをぶっこんで来るつもり――、
「誰か代わりに面倒見てもらえませんか?」
ぶっこまれた雪ノ下と由比ヶ浜が二人揃ってたじろいだ。俺もたじろいだ。我が妹ながら、なにが目的だこの愉快犯。雪ノ下が俺を見る。
「それは……」
え、なにその上目遣い。新妻感パナいんですけど。
「結衣さんはどうですかー?」
畳みかけるように由比ヶ浜にもぶっこみ直す小町。
「あ、あたしは――」
由比ヶ浜の目が泳ぐ。ちょっ……どうすんの、この空気。なにを言っても地雷になるような気がして軽く思考がフリーズした俺の横から、救いの手が小町の首根っこを引っ掴んだ。
「お米ちゃん。ちょっとこっち」
一色が広場の脇の木陰に小町を引きずっていって約一分。萎れた小町を連れて一色が戻ってきた。
「なにしたの?」
「ああ、軽く早炊きに」
だから炊くってなんなの? ウチの妹、今ので炊かれちゃったの?
「先輩も情けないですね。このくらいいつもの軽口でパパッと処理して下さいよ」
「……すまん」
お小言を喰らって素直に謝ると、ボソッと一色がなにかを言った。
「まあ、そこがかわいくもあるんですけどね」
「え?」
「なんでもありませーん。ほら、次に行きますよー」
よく聞こえなかったので聞き直すと、ツンと一色は顔をそむけてそう声を出し、スタスタと小町を引っ張って次の目的地へと歩き出した。
「なんか小町が変なこと言って、すまんな」
一色に引きずられる形で歩き出した俺は、後ろに並ぶ雪ノ下と由比ヶ浜にとりあえず身内の不始末的な感じでそう謝る。
「別に構わないわ。よく考えたら、私たちいつもあなたの面倒を見ているし」
「そうだよね。ヒッキーってほっておくとすぐに人としてダメになっちゃってそうだから、目が離せないもんね」
フォローのように要介護者扱いされて傷つく俺のギザギザハートの子守唄。まあ事実お世話されている面があることは否めないので、俺はうんうんとうなずいてみた。
「その通りだ。これからもよろしくな」
ここでキリッとサムズアップを決めてみたら、ガハマさんに無言で肩をグーパンされ、ゆきのんさんに深々とため息を吐かれました。なんででしょう? 俺の青春ラブコメ難易度バグってない?